71 母さんつい買っちゃった!?地域限定のグミ!?
「地味にイタイな、この罰ゲーム……」
僕は、得体のしれない不安に襲われそうになった。
「あら、タクちゃん。地味なんかじゃないわよ!とっても派手よ!」
母さん、それは――褒めてない気がするけど。
「ありがとう!変な有名人になりそうだけど……こんなの、ツバネたちが見たら呆れそうだな……」
「拙を呼んだか!?呆れてねぇよ、セオト!」
突然、光が弾けた。まぶしい閃光の中から、ツバネとタリク、リウラ、そしてゲルが姿を現した。
「……誰だ、お前ら!?」
父さんが低く唸るように声を上げた。圧がすごい。
「ど!どうしてここに!?父さん、この人たちは僕の仲間だよ!キュリシアにいるはずなのに――!?」
「セオトの父さん!あの行方不明の!?」
「行方不明といえば、もう一人。セリアンの師匠はこの方、ミラさんです」
「おおおー!師匠はご健在なのか!セリアンも喜ぶな!」
ツバネたちに説明すると、みんな本気で嬉しそうだった。
「君たち、キュリシアから来たんだ。おもしろいね」
ミラさんが口元に笑みを浮かべた。
「誰が呼んだのかは知らないけれど……いい流れじゃない」
ミラさん、やっぱり強い。どんな状況にもなじんでしまう――まるで水みたいに。
さっきまで上機嫌でうるさいくらいだったフレクシアを見ると、黙りこくって額にうっすら脂汗がにじんでいた。てっきり彼女が転スイさせたのかと思ったけど――どうやら、そんな能力はないらしい。
「お久しぶりです、フレクシア。やはり、くだらないゲームを操っていたのですね」
ゲルが冷静に告げる。その声は氷のように静かだった。
「な、なんのことかしら?あたしはただのプレイヤーの一人よ!」
早口でまくしたてる。……あやしい。あまりにも。
「よくわからんが――カッパ様がな、“キュウリの恋人のマヨ”を早く連れてこい!って言い出してな。そしたら、頭のお皿がピカーッと光って……気づいたらここにいたんだ」
「……えええええ!?カッパ様が!?」
カッパ様……やっぱりツナマヨの記憶は消されないのか。さすが、神様の末裔だ。
「罰ゲームは済んだから、すごろくに戻ろう。――フレクシア!」
「ヒッ……あ、ああ、すごろく。すごろくね。仕方ないね、続きをしようか」
声が上ずっている。目も泳いでるし、完全に挙動不審だ。
「その前に小休止しましょ!瀬音の母、詠水です。どうぞよろしくね!」
母さんはどこからかおやつのグミを出してきた。
「みんな!これ食べてー!私の好きなパイナップルグミと、地域限定のキュウリグミ!」
キュウリグミ……なんでキュウリ……冒険味すぎない?美味しいの!?スイカグミは美味しいけど。
モグモグ。 モグモグ。
「セオトのお母さん、パイナップルグミ!サイコーですわ!」
リウラが飛びはねて、パクパクつまんでいる。
「地域限定モノは、カッパ様が喜びそうだ」
タリクが不思議そうな顔でモグモグしている。どうやら微妙らしい。
「グミって食感が楽しい!エイミ、お菓子もっとないの?」
フレクシアまでモグモグ。すっかりご機嫌だ。
「雫さんのお店はお菓子をいっぱい売ってるんだよ!」
「えー!ルミエ!毎日つまんでるの!?サイコーじゃない!」
「いや、売り物だから食べないと思うよ」
お菓子パワーで、フレクシアの機嫌はすっかり回復した。
そして――ツバネたちも光に包まれ、一緒にすごろくの世界へ戻っていった。
「さて、次は……ミラの番だね!ルーレット回して!」
大きなルーレットにミラさんが向かうと、ゲルもついていった。
「スキャン、オン。ルーレットに念を送った形跡があります。審議をお願いします」
ゲルの分析力で、どうやらフレクシアの介入を発見したらしい。
「確認したよ。フレクシア、そこの水精霊には通用しないよ。よって、罰ゲーム対象だ」
なんと、形勢逆転しそうになってきた。
「フレクシア。ルーレット、回して」
ピカッ! ゲルが目を光らせる!
くるくるくる……カチ、カチ……ピタッ。
「――マイナス25!」
またマイナスが出た。これがフレクシアの手だったのか。
「なによ!あたしのこと目の敵にしすぎ!キィ~~!」
フレクシアが地団駄を踏いた。盤の光がぶわっと乱反射する。
「やめなさい!フレクシア、これ以上念を送ると――」
ゲルの叫びが届くよりも早く、ルーレットが高速回転を始めた。
くるくる、くるくる、光がねじれて、世界が歪む。
「ヒィ……なに、これ、止まらない……!」
「データの流れが反転している!このままだと盤が――!」
ゲルの声が機械的に歪み、すごろく盤全体にヒビが走る。
「みんな、離れて!……間に合わないかも……」
ルミエが手を伸ばし制御を試みた。
――ギュルルルルルルルル!
まばゆい光とともに、盤の表面が裏返るようにめくれ上がった。
音が消え、色が抜けていく。目の前に広がったのは、見たことのないモノクロの盤面だった。
「……これは……野菜だね」
「グミなのにサラダみたいです……」
「さわやかすぎて逆にこわいですわ!」
「いや、嫌いじゃないけど……お弁当の後味がする」
あらあら。どうやら評価は“微妙”の一点突破だったよう。
私のオススメ、パイナップルグミは圧勝ね。
限定モノって、当たり外れがあるのよね。
でも――初対面の相手に、ワンットゥ!アタッック! いいじゃない!
――エイミ。




