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おにポチャで転スイ(転生)しました!?  作者: (万寿)ぷりん
第2章

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70 恥ずかしすぎちゃった!?罰ゲームの巻物!?






「はぁ、静かでつまんない。ルーレット回すのも飽きちゃったから、タクミ君を覗きに行ってくるね」

 フレクシアはふっと姿を消した。ルミエはただ、そこに佇んでいる。


 草むらに埋もれたスイタンの足もとから、そっと草の芽が顔を出した。


 それは――禁書スイタンを助けようとしていた禁書ホンホンの仕業だった。


 そうか……全部、繋がっていたんだ。そのことに気づいたスイタンは、静かに息を吸い込んだ。

 このすごろくを終わらせるのは――自分だ、と。


 だったら、その時まで待てばいい。私は、待つのも待ちぼうけも得意さ。





 草の道を、生えるままに歩いていく。

 その先に――ミラさんと、父さんと、母さんがいた。


 三人とも、光をはじくような衣装に身を包んでいる。

「ど、どうしたの?その格好!?」

「あら、タクちゃんだって記録師の制服じゃない?」


 言われて初めて、自分の姿に気づく。白地のノートリア制服――袖口に淡い青の水の紋章。まるで、儀式の始まりを告げるようだった。


「ということは……?」


 ミラさんは吟遊詩人で“風のノートリア”、

 父さんは“森のノートリア”、

 母さんは“水巫女”の衣装に――。


 それぞれが、まるで違う時代の物語から抜け出してきたみたい。少し照れくさいけれど、どこか誇らしい。


「えっへへー。似合う?」

「うん! 母さんナイスバディだから、めっちゃ似合う!」


 ……あれ。父さんが、すごくこっち睨んでるんだけど。


「昔、着ていた服だね。こういうのも――コスプレっていうのかな?」

 ミラさんが、さりげなく空気を中和してくれる。

 その一言で、場の緊張が少しだけほどけた。



「ああ、いたいた」

 軽い口調でフレクシアが現れる。その笑みは、どこか退屈をまぎらわせるようだった。


「さて――罰ゲームの時間だよ」

 指をくるりと回しながら、彼女は宣言する。

「題して!”あっちむいてホン!”」


 空気が、ぴんと張りつめた。まるで、遊びの名を借りた裁きの儀式みたいに。



「じゃんけんぽん――あっちむいてホン!」

 フレクシアの掛け声が、水面に弾けた。


「ま、負けた……」


 安定の僕が最下位。母さんがトップだ。


 勝ち誇ったように両手を腰に当てる母さんと、なぜか本気で悔しがる父さん、横でケラケラ笑ってるミラさん。


 まるで家族旅行の延長みたいなのに――この盤上が“禁書の舞台”だと思うと、胸の奥がざわめいた。


 フレクシアが静かに掌を掲げる。

「はーい。最下位タクミ君、罰ゲーム決定~」


 手のひらの上に、くるくると巻物が現れた。

「このお題をここに書いてね」


「お題は――『僕、青木沢海は、“あっちむいてホン!”でドベになりました(碧貴瀬音)』……なにこれ!?なんか、めっちゃ恥ずかしいんだけど!」


 フレクシアは、にこりと笑う。

「うん。だって――それ、キュリシア中に広まるからね」


 その瞬間、場の空気が変わった。

 笑いがしん、と止まり、草の音すら消える。巻物の紙がかすかに光を帯びて――まるで、何かを“記録”し始めていた。




 ――その頃、大混乱のキュリシア。


 なんとか水紋亭まで避難したツバネとタリクたちは、突如、天井からふわりと舞い降りた巻物を見上げた。


「な、なんだこれ……?」

 ツバネが顔をしかめる。巻物は勝手にほどけ、声が響く。


『罰ゲーム。僕、青木沢海は、“あっちむいてホン!”で全敗しました!ドベです(碧貴瀬音)』


 ……沈黙。


「………………え?」

「………………誰の儀式だ?」

「儀式じゃなくて、恥さらしだろコレ!」


 ツバネが頭を抱える。タリクが外を覗くと――町中の空に、同じ巻物が浮かんでいた。


「……おい。あれ、全部……?」

「これは……全世界同時配信!」

 いつの間にか現れたゲルが、冷静に、しかしどこか震えながら言った。


 風が吹き抜ける。空を埋め尽くす巻物が、煌めきながら同じ言葉を繰り返している。

 ――「僕、青木沢海は、“あっちむいてホン!”でドベになりました!」




 反筆が、静かに口を開いた。

「……ここから消えたフレクシアの仕業だろうと推測する」


「だよな。この状況、理解不能すぎるもんな……納得」

 タリクは深く息をつき、こめかみに手を当てた。

 頭痛の予感がする。


 その時――。


「お~~いッ!セオトはまだ戻ってこないのかッパ!吾輩、キュウリの恋人マヨが恋しいのだぁぁぁッパ!」


 突如、水煙を上げて現れたのは――カッパ様だった。

 あまりのタイミングに、一同の思考が止まる。


「……誰か、今この混乱のタイミングで恋バナしてるヤツ止めてくれ」

 タリクの乾いたツッコミが、虚しく響いた。


「いや、待て。――カッパ様、その“マヨ”って……何だ?」

 ツバネが眉をひそめた。


 空気が、ぴたりと止まる。聞き慣れないその単語に、周囲の記録師たちが顔を見合わせた。


「そんなまさか……そうだ!ワイも……“マヨ”を知らない!?」

 タリクが半ば呆然とつぶやく。



 その瞬間、カッパ様の顔が青ざめた。

「ま、まさかッパ……“ツナマヨ”の記憶が――消えてるッパ!?」

「逆に、カッパ様はどうして”ツナマヨ”を知ってるんだ!?」


「吾輩はカッパである。神様の末裔だッパ!」

 水紋亭内では、カッパ様、最強説がささやかれた。


「神様の末裔って……それ、どういう意味だ?」

 ツバネが問うと、カッパ様は腕を組み、得意げに鼻を鳴らした。


「小賢しい策は吾輩には効かぬ!ということだ。そこの反筆とやら。吾輩のお皿に字を書いてくれぬか?」

「いいぞ、何と書けば?」


「”転”だッパ!」


 反筆が書き終えると、カッパ様のお皿が光りだして、反筆と、ツバネとタリク、リウラ、ゲルが光に包まれて消えた。


「早く瀬音を連れてこい!屁のカッパなのだ!」









 あっちむいてホン!

 ――大人げなかったが、息子には負けられなかった!

 しかもエイミの水巫女姿を見て「ナイスバディ」だと!?

 親子とはいえ、つい睨んじまった……。


 ……俺も、まだまだだな。

 でもまあ、負けたくないって気持ちは、きっと悪くない。


 次も勝つぞ、息子よ。誰にも見せ場は譲らん!



 ――父、守杜のひとりごと。






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