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おにポチャで転スイ(転生)しました!?  作者: (万寿)ぷりん
第1章

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6 逆流しちゃった!?南のフルーメン(支流)





 南の支流へ向かう道は、あちらから逃げてくる人や動物たちでざわついていた。


 木々の葉が揺れるたび、水音が不自然に逆巻いて聞こえる。


「このあたりから“フルーメン”と呼ばれている」


 タリクが渋い声でつぶやいた。



「お主たち、気を引きしめYO!これはただのルンパッパ散歩ではないぞ」


 カッパ様は歌ったり説教したり、相変わらず口の中はキュウリでいっぱいだ。


「ルンパッパ?……説得力ゼロだな」ツバネが半眼で突っ込む横で――



「セオト~、ワタシを見て!」リウラが袖をぐいぐい引っぱる。


「ちょっ、精霊(リウラ)!歩きにくいってば!」


「ダメ、ワタシのことだけ見てて!」


隣を死守しようとするリウラと、肩にしがみつくカゲミがプチバトルを繰り広げる。



「おいリウラ!オレ様の肩に乗るな!……妬むと水が淀むっつーの!」


「……あはは、にぎやかだなぁ」僕は苦笑しながら歩調を合わせた。


 (たしかに、リウラから少し淀みを感じる――。僕の“リヴァー・プリスティン”の称号でなら整えられるけど、サポートが要るな)



 その横で三人衆――みるん、きくん、はなすん――が弁当を広げはじめる。


「おにぎりターイム!」


「きゅうり漬けうまっ」


「魚の唐揚げもあるよ!」



「いや今!?なんで今弁当広げてんだよ!」ツバネのツッコミが飛ぶ。



 ――支流にたどり着いた瞬間、僕らは息をのんだ。川が、逆に流れている。


 轟音を立てて水がさかのぼり、光の泡が天に舞い上がる。

 

 まるで「命の記憶」が散っていくようだった。


 ドゴゴゴゴと逆流する水音に苦しさを感じ、僕らは立ち尽くしていた。誰も、言葉を発せなかった。



「よし、腹が減っては戦はできぬ。まずは栄養だ」


 タリクが背負った大鍋を“ドン”と地面に置く。


「ちょっ、お前もこの状況で飯!?」ツバネが目をむく。


「違う違う。戦闘用の料理だ。滋養強壮、即効性あり!」


 タリクの目が料理人のそれに変わり、野草を刻み、魚の干物を煮込み始める。


 香りが支流のざわめきを押しのけるほど強く広がった。



「うわっ、いい匂い……」


「セオト~!ワタシにも!」


 リウラが騒ぐ、その瞬間――



 黒い魚影が群れを引きつれ、川を割って現れた。



「リヴァースフィッシュ……!」カッパ様が顔をしかめる。


「流れを呑みこみ、記憶を喰らう魔性の魚じゃ。油断するでない!」



「行くしかねーな!」カゲミが囮役を買って飛びこむ。


「ガードは任せて!」リウラが光の盾を張るが――尾の一撃で叩き割られた。




「きゃっ!」


 リウラが吹き飛ぶ。



「リウラ!」


 僕が駆けよろうとした瞬間、さらに群れが押しよせる。


「うおおおっ!」


 カゲミが斬りこむも、数は増える一方。岩を砕く尾の衝撃に、全員が後退を余儀なくされた。



「……強すぎる」思わず息が詰まる。



「私たち!みるん、きくん、はなすん!」


「合唱だー!」


「いっせーのーで!」


 三人衆の妙な合唱が響き、水の流れがリズムを帯びて整っていく。(不思議だな)



「ふん、やるじゃねぇか」ツバネが印章を掲げ、水の紋路を描く。


「ルーンパス、起動!」


 光のラインが川底に走り、リヴァースフィッシュの動きを鈍らせる。



「お主ら、ようやった!ここは吾輩が――くらえ、皿フル放水!」


 カッパ様が頭皿から水を撃ち放つ――が数秒後、


「……水が、ない。補給じゃ!」


「いやもう役立たんのかい!」一斉ツッコミ。



 それでも敵の勢いは止まらない。


 川底が吸い上げられ、逆流の轟音は唸りを増す。



「こんな激流じゃ記せない――」


 僕は水筆を握りしめた。

 

 敵の勢いは想像以上で、またもや巨大な尾が一撃で岩を砕き、前方から黒い流れが向かってきた。



「ちょ、押し流されるっ!」


 僕が叫んだ瞬間――



「……やれやれ、仕方ねぇな」


 タリクが鍋の柄杓をぐっと握った。


「食って力を出せ!タリク特製《爆流シチュー》!」


 香ばしい匂いが戦場に広がる。


「戦闘中にシチューってお前……!」


 ツバネが呆れるが、タリクは容赦なく椀を押しつける。口にすると体の奥が熱を帯び、力が漲ってくる。


「カゲミ!お前も食え!」


「戦闘中に!?……うおおおおおっ!!」


 光に包まれたカゲミが速度を倍増させ、水を切り裂く。



 タリクは鍋を振り回し、大槌のようにリヴァースフィッシュの頭を叩きつける。


「料理は力だぁぁぁっ!!」


 鈍い音と共に敵が怯み、その隙を僕が封じ、ツバネがルーンパスを完成させた。


 光が弾け、黒い群れは静かに溶け消えていく。




「ふぅ……助かったぜ。お前の飯、マジで効くな」


 カゲミが疲れた顔で笑う。


「だろ?食って戦って、また食う。これが俺の流儀だ」


 タリクは無愛想ながらも笑みを浮かべ、空になった鍋を肩に担ぎあげた。



 混乱の中で、僕が記録師日誌に記していた水文字と川底で拾った銀の印章が強く輝きはじめた。


 それが共鳴するように熱を帯び、背後に青白い光が走った。


 そこに、幻のような群れが現れる。


 かつての仲間たち――セセラギ(アオアユ)時代に共に泳いだ鮎たちだ。



「僕は……流れをつなぐ者!」


 心の奥からの、熱い想いが言葉になった。


「生きた証は消えない! みんなの命の泳いだ軌跡を、僕が未来へつなぐんだ!」


 光の流れが、小さな群れとリヴァースフィッシュを包み、静かに消し去った。


 逆流していた水は穏やかに戻り、支流は再び清らかに澄みわたっていく。




「やった……終わったんだな」


 僕は川面に浮かぶ星を見あげた。



「ふん、オレ様がいたからだろ」カゲミが鼻を鳴らす。


「ちがう!ワタシもみんなを守ったの!」リウラがプンと横を向く、耳が赤い。


 記録しながらそんなリウラをジッと見ている、ツバネ。


 タリクも手早く先ほどの光景を観察者日誌に書いている。



青春(アオハル)だねぇ」


「うんうん」


「キラッ☆タリクシチュー伝説!」


 みるん・きくん・はなすん三人衆は無責任に盛りあがる。



「お主ら、悪くないチームじゃ」カッパ様が満足げにうなずいた。




 ……その時。僕の懐で銀の印章が熱を帯びる。青白い光がひとすじ、川面を南の村へと指した。



「どうした、セオト?」カゲミが心配そうに見あげる。


「……うん。村の水源が、危ないかもしれない」



 星々が瞬く夜空の下、新たな冒険の予兆が流れを照らしていた。










ここまで読んでくださってありがとうございます。


よろしければ評価いただけると、タリクが「俺の鍋もひと味変わるかもしれない」と喜んでます。



それでは、また水の世界で会いましょう!







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