52 食べちゃった!?大騒ぎのオムライス!?
……やっと、h様とのお話で生まれたセリフ、爆誕です!
「まずはお腹すいてない?ごはんにしましょう!」
母さんが明るく声をかけてしばらくすると、キッチンからバターの香ばしい匂いがふわっと広がった。カチャカチャとフライパンの音。卵の焼ける音が心地よく響く。
「えええ!母さん、手際いいじゃん!」
僕が感嘆すると、母さんは笑いながら振り返った。
「ウッフフ、“お腹が満たされると心も元気になる”って、昔教わったのよ。巫女の教えでもあるの」
やがて、ふわふわの黄色いオムライスがテーブルに並べられた。トマトソースの赤が鮮やかで、まるで夕焼けみたいにきれいだ。
「さ、召し上がれ♪」
セリアンがフォークを手に取り、一口食べた瞬間――
「こっ、これはぁぁぁ!!!」
思わず椅子から立ち上がる勢いで叫んだ。
「ふわふわの卵に、トマトの甘酸っぱさ、そして……中のライスがまるで陽だまりみたいにやさしい!キュリシアでも食べたいよ、瀬音ー!!あ、沢海だった!」
その様子に母さんはくすっと笑った。
「気に入ってもらえてよかったわ。よかったらレシピ教えてあげる」
「レシピ集を作るホン!?転スイしても忘れないように、記録しておくからバッチリだホン!」
禁書ホンホンはウキウキしながらメモを取り始めた。
「これが“オムライス”だホン。異世界グルメはすごいホンね……!」
「マヨを足して、オーロラソースにしても子供に喜ばれるのよ」
ホンホンはぷるぷると震えながら呟いた。
「種類もあるホンか!?すごいホン!」
「ウッフフ、デミソースも定番なのよ~!」
「ひょえ~だホンー!」
母さんとホンホンは楽しそうにおしゃべりしている。
「沢海、私たちを連れてきてくれてありがとう」
セリアンが嬉しそうに笑った。その言葉に、僕は少し照れながら笑った。
「うん。……この流れに、また帰ってこられてよかったよ」
オムライスの香りがまだ部屋に残っているころ、ふと気になって僕は口を開いた。
「……ねぇ、母さん。どうして?いつも家にいなかった父さんと母さんが、今日はそろって家にいるの?」
母さんは、洗い物をしながらふわっと笑った。まるで春の風みたいに、何でもないことのように。
「だって――協会が壊れちゃったでしょ?」
「あっ……!」
母さんは振り返り、少し肩をすくめた。
「まあ、“壊れた”っていうか、“ハリボテだった”って感じかしらね。こうなったのも仕方ないわ。だから今は休暇中なの。せっかくだし、日本生活をゆっくり楽しもうって思って帰ってきたの」
テーブルの上には、父さんがいれたハーブティーの湯気がゆらゆらと立ちのぼっていた。
「沢海が転スイしたのも、ちょうどいいタイミングだったな」
父さんがカップを手に取りながら穏やかに言う。
「久しぶりに食卓を囲めるなんて、何年ぶりだろう」
その言葉に、胸の奥がじんわり温かくなった。ずっと遠いと思っていた家族の時間が、こんなにも自然に戻ってきている。
「そうだ、学校はどうなってるか知ってる?僕って、行方不明者になってるのかな?」
母はゆっくりと息をつき、優しい笑みを浮かべながら答える。
「ごめんね、タクちゃん。みんなの記憶から消えちゃってるの。転スイした時に……」
なるほど、と僕は小さく頷く。納得の瞬間だ。
(そっか……まあ、仕方ないよね)
胸の中で少し寂しさが広がるけれど、考えた。
(学校に行ったらパニックになりそうだし、みんなを困らせるよりは、まあいいか)
自分でも驚くほど、僕は流されることに平気だった。むしろ、こうして状況に身をまかせている方が、なんだか心地よいのだ。
「……そっか。みんな、それぞれの“流れ”の中にいたんだね」
僕がそう言うと、母さんがにこっと笑って答えた。
「そう。だからこそ、こうしてまた同じ流れに出会えたことが、いちばんの幸せなのよ」
オムライスを完食したセリアンが早口で叫んだ。
「――あの……お話し中すみません」
「いや……何だい?」
「私の師匠の居場所をご存じなら、教えてください!師匠に会いたいです!」
セリアンの声は、まっすぐに響いた。胸の奥に沈んでいた焦がれるような想いが、いま水泡のように弾け出す。
「師匠にまだ――“ありがとう”を言ってないんです。あの人がいなかったら、今の俺はいないから!」
セリアンは拳を握りしめる。
父は一瞬、驚いたように目を細めた。けれど、すぐに懐かしむような笑みを浮かべる。風がふっと吹いた。
「……わかった。案内するよ。ずっと昔に――ミラ・フェルドと共に、転スイしたことがある」
「そうです!ミラ・フェルド……!俺の師匠……!」
セリアンが隣で息を呑む。父は静かに頷いた。
「えっ、本当に!?セリアンよかったね!」
僕も意を決して決意を告げた。
「あのさ、聞いてほしい。青鮎の時からの相棒が記憶の穴に落ちちゃったんだ。僕たち、闇精霊のカゲミを探しにキュリシアから来たんだ。カゲミを必ず見つけるから!」
「いい!いいじゃないの!!」
母は、ふんす!と気合いのこもった目で僕たちを見た。
「セリちゃんもタクちゃんも、ワンットゥ!アタッック!しちゃいなさい!」
「ワンットゥ!アタッック?」
……どうやら母の決めセリフのようだ。じんわり元気がでる言葉だ|。
窓の外では、風鈴が鳴り、川のせせらぎがやさしく響いていた。僕はその音を聞きながら、ふと思った。
――この時間を、ちゃんと記録しておきたい。きっと、これも“流域”のひとつなんだ。
禁書ホンホンだホン!ここまで読んでくれてありがとうホン!
瀬音といっしょに転スイしちゃったホン!あ、瀬音は日本では沢海って名前だホン!
瀬音が青鮎になったり、オムライスに感動して大騒ぎしたりで……ああ、もう大忙しだったホンね~!
セリアンやスイタンと一緒に、異世界に来られて嬉しいホン!
キュリシアの世界とはまた違う、日本での冒険も面白いホンね。
もっと探検したくなっちゃったホンホン。
でも、なにより嬉しかったのは、瀬音と一緒に転スイできたことだホン。
青鮎の瀬音は可愛かったホン!
やっぱり仲間と一緒なら、どこにいてもワクワクするホン!
次は、カゲミを探す旅が本番ホンね!
ホンホンの転スイ日記はまだまだ続くホン!みんなも準備万端でついてきてほしいホン~。
それじゃあ、またねだホン!




