表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おにポチャで転スイ(転生)しました!?  作者: (万寿)ぷりん
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/148

41 再会しちゃった!まさかの面接官!






 ひんやりとした空気に包まれた、異様な喧騒だった。瓦礫の間から漂う埃と、微かに光る文字の残滓。

 そして、かすかに聞こえる囁き――僕とカゲミ、そしてセリアンを待っていたのは大混乱だった。

「落ち着け!何が起きているんだ!」

 記録師協会の廊下や階段では、文字の渦や倒れかけた書架により、幹部たちも慌ただしく駆け回っていた。


「うわぁ、あんなに外は静かだったのに……」

 僕は慄く。カゲミも小さく震えながら、僕の背を追った。

 セリアンが前に一歩踏み出す。「皆、気をつけて……!」


『……流れを止めるな……』

『汝らの行動次第で世界は変わる……』


 声は館全体に響き渡り、まるで僕たちを監視するかのようだった。

 水面のように揺れる床、ちらつく灯り、倒れかけた書架――

 そこに待ち受けていたのは、ただの書物ではない、禁書たちの異形な力と、それを操る影の存在だった。



 大講堂では、協会長オルグが威厳ある姿勢で立ち、緊急声明を出そうとしていた。

「記録師諸君、冷静に……状況を把握せよ……!」

 だが声は館内の混乱にかき消され、幹部たちの指示も思うように届かない。


 遠くからは、廊下で倒れた見習い記録師の悲鳴や、奔走する仲間たちの足音、書物の落下音が響く。

「上層部でもこの混乱だ……!」

 一人の幹部が顔をしかめる。

「これでは協会全体が統制を失いかねない……!」


 廊下の端から文字の渦や水の波紋が迫り、幹部たちも身をかわしながら指示を出す。

「ここを押さえろ!奥の禁書庫へ行くな!」

「全員、避難経路を確保せよ!」


 しかし大講堂の窓越しには、崩れゆく館の一部が見え、瓦礫と光の渦が幹部たちの視界を覆う。

 協会長オルグは深く息をつき、なおも声を張る。

「……我らは記録の守護者だ!混乱に飲まれるな!話を聞かんか!」


 協会内のざわめき、悲鳴、振動――すべてが重なり、協会全体が制御を失いつつあることが、誰の目にも明らかだった。




 僕たちは混乱を抜け、静かな廊下に出ると、そこにはかつて僕の採用試験の面接官が立っていた。

「あ!採用試験ではお世話になりました」


「……瀬音くんの水の祈りのおかげなのかな?」

 微笑みを浮かべながら、面接官は静かに言う。

「協会に従順であれ、と思っていた呪縛から、解放されたよ」

 軽く首をかしげ、ふっと笑う。

「君、覚えてるかな?前に言ったこと?」

「……前に?あ、『もし世界が枯れても協会の指示に従えるか?』でしたよね?」

「そうそう、それだよ」

 面接官の表情は穏やかで、どこか寂しげでもあった。

「多分、世界は枯れる。だから私はここを去って、故郷に帰る。屁のカッパだ、君も元気で」


 言葉の向こうには、協会という重圧からの解放と、新しい旅立ちの決意が感じられた。

 僕は頷き、面接官の道中が無事であるよう祈る。

「はい、ありがとうございます。どうかお気をつけて……」

 静かな廊下に、ふっと面接官の姿が溶け込む。崩壊と混乱の中で、ほのかな希望と別れの瞬間だった。


「なんで屁のカッパ?」不思議そうにカゲミがつぶやく。




 僕たちは大講堂の前で立ち止まった。講堂内の混乱が見てとれる。


 スイタンが重い口を開く。

「……来るのが遅かったようだな。ラグ・ノートリアの祖師に選ばれた古株が仕掛けたんだろう。

 ここはもうダメだ。逃げよう」

 その言葉に、僕の胸がざわつく。「……それって、どういうこと?」

 僕は少し声を震わせながら尋ねた。


 スイタンは、ぐるり見渡す。瓦礫や文字の渦、まだ渦巻く禁書の光。低く、静かに続ける。

「ここはもう、協会の秩序が効かない。禁書たちも暴走し、館の力も崩れている。……止められない。」

 カゲミが小さく震えながら、僕の袖を握る。

「え……どうなるんだ?」

 スイタンは僕たちを見据え、声を強める。

「今は逃げるしかない。だが、君たちにはまだやれることがある……この混乱の中で、生き延びろ。」


 その言葉は、警告であり、希望でもあった。僕はカゲミとセリアンの肩を軽く叩き、覚悟を決める。

「……分かった。逃げるよ。でも、何もせずにはいられない」

 スイタンは頷き、光を帯びた。必死で僕たちを守る策を探してくれていた。

 館内の崩壊は迫る――しかし、僕たちはまだ、前に進むしかなかった。



 スイタンの声を背に、僕はカゲミとセリアンを促す。

「急ごう!でも、気を抜くな!」


 文字の渦が再び床から立ち上がる。光の粒が僕たちに向かって飛び、瓦礫が崩れ落ちる。

 カゲミは小さく悲鳴を上げ、僕の袖を握る。

「うわっ……こっちくるなぁぁぁ!」

 セリアンが竪琴を構えると、文字の渦が襲いかかる。「くっ……幻影が!」

 触れた文字の光は、心に映像を映し出す。恐怖と疑念――だが、セリアンの力でかき消される。


 僕は咄嗟にリヴァー・プリスティンの力を呼び、足元の水面に流れを生む。

 文字の渦は流れに押され、飛び散った光が壁に反射して消えていく。


 瓦礫の間を駆け抜けながら、セリアンが声を上げる。

「右! 瓦礫が落ちる!」

 僕は素早くカゲミを抱え、反対方向へ跳ぶ。

「ひゃあっ!」

 間一髪、巨大な書架がカゲミに倒れかかるところだった。

 

 振り返ると、館全体が文字と光の渦に覆われ、瓦礫が跳ね回る。

「……これは、魔の世がやってくるぞ!早く逃げろ!」

(魔の世って何だよ)

 スイタンの言葉を胸に、僕たちは必死で奥へと進む。


 館の奥から、低く唸るような声が響く。

「――来るか……」影のような存在が、文字の渦に包まれて姿を現そうとしていた。


 息を整え、僕はカゲミの肩を軽く叩く。

「しっかり掴まってろ。これからだ、本番は――これからだ!」











 まさか、あの混乱の中で、再び彼に会うとは思わなかった。


 あの目を見た瞬間――


 なかなか消えずにいる胸の奥に張り付く“従順であれ”という言葉が、ふっと溶けていった気がする。



 ――もし世界が枯れても、従えるか?


 あの質問をした日の自分を思い出す。


 今なら分かる。答えは「いいえ」だ。


 世界が枯れるなら、私はその流れを見届け、祈りのひとしずくになりたい。



 さあ、帰ろう。懐かしい川のせせらぎと、まだ見ぬ春の花のもとへ。


 ――屁のカッパだ。軽やかに笑って、生きていこう。



 記録師エイラン(面接官)






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ