32 ポロリしちゃった!?水龍さまの鱗!?
「これで……ラグ・ノートリアの力が、キュリシアの記録に刻まれる!」
仲間たちの声、希望、誓い――すべてが水鏡に重なり、光の輪となってキュリシアの大地を包み込む。
波紋はひとつひとつが胸を打ち、未来への道を照らしていった。
水鏡に映る鱗の光は、暗闇に埋もれた歴史や記録を呼び覚ます。
古き文書に眠る先人の声が風となって囁いた。
「若きラグ・ノートリアよ……我らの想いを、未来へ――」
ツバネは剣を握り直し、闇を切り裂く覚悟を胸に刻む。
セリアンの歌声は光に共鳴し、人々の心を温める。
僕も……守りたい者への想いがより強くなる。
光は街道を越え、山を越え、森や川の隅々にまで届く。
港町の子供たちは泉を叩いて笑い、隠れ里の人々は長く閉ざしていた心をそっと開いた。
「これが……ワイらの力や!」
タリクの声に仲間たちが頷くと、鏡水の間に轟音が走った。
空間全体が水のうねりに満ち、蒼光が弾ける。
「我は思念、水龍は滝におる!来い、タリクよ!」
頭の奥に響く声。タリクの胸を焼くような熱。
――呼ばれている。あの滝へ。
水面が強く光り、滝つぼの映像を浮かび上がらせる。
「……行く!」
タリクは叫び、水の道へ飛び込んだ。
瞬きの間に、轟々と落ちる瀑布の音。息を呑むほどの水の奔流。
その只中で、巨大な影がうねりをもって立ち上がった。
――水龍。
滝そのものが命を宿したような姿。蒼く輝く鱗がきらめき、深い瞳がタリクを見透かす。
「来たな、我が選びし者よ。お前の決意、確かに我に届いておる」
水龍の咆哮と共に、滝つぼから光の波が放たれ、川を上り空へ広がる。
「すごい……滝つぼから水龍の力が……!」
「この光……僕たちの決意が繋がってる……!」
ツバネは目を細め、セリアンは竪琴を抱きしめる。僕もさっきから胸熱だ!
カゲミは「すげぇ……!」しか呟いてない。
「みんなの未来のために!」
「キラキラしててかっこいい~!」
「みんなの心に届く!」
みるん・きくん・はなすんも飛び跳ねながら歓声を上げる。
水龍のうねりは強まり、声が響く。
「タリクよ……我が力を受けよ。全てを正しく導くために」
光の波は空へ舞い上がり、タリクと水龍の姿が重なってひとつの魂のように輝く。
「眠りから目覚めた我が力よ、この世界を照らせ!」
水龍の尾が水を巻き上げ、蒼い竜巻が天を裂いた。
「ふぉふぉ、永く笑わぬ喉から声がもれたゆえ、鱗が一枚剥がれた。タリク、これを使え」
「水龍さまの鱗……!」
タリクは右手を掲げ、蒼い鱗を受け取る。
こうして継承の光はキュリシアを照らした。
「ナゾナゾだホン!水の中でも泣かない、でも見つめられると光るもの、なーんだホン?」
ホンホンがはしゃぐ声に、タリクも仲間たちも思わず笑う。
「防水スマホかな?」僕の冗談はスルーされる。
「ああ、水鏡ですね」
ゲルが答えると、ホンホンは羽をぱたぱたさせながらニヤリ。
「正解ホン!水龍さまも光ってるホン!」
光の波が水鏡から滝つぼを超え、空へ舞う。
タリクは拳を握り、水龍に呼応して声を上げた。
「ラグ・ノートリアとして、皆の未来を守る!水龍さま、共に!」
蒼い光が滝つぼから天へと昇り、星々を引き寄せるかのように全空間を照らす。
水鏡に映る四人の姿は、より鮮やかに輝き、希望の光が満ち溢れる。
「さあ、これでキュリシア全土に希望のナゾナゾも届いたホン!」
この圧倒的な光景に、長く隠れ里に身を潜めていた民たちが、次々と滝のほとりに駆け寄ってきた。
恐れと憧れを胸に、彼らは光の中に立つ若き影を見つめる。
群衆の中から、震える声が響いた。
「……タリク兄ーっ!」
黒髪をなびかせ、涙で頬を濡らした少女――それは、幼き日に生き別れた妹、ミレイだった。
タリクはその声に心を揺さぶられ、光の熱が胸の奥まで染み渡る。
「ミレイ……!」
思わず手を伸ばすタリク。滝つぼの光に反射する蒼い鱗の輝きが、二人の間を優しく包む。
駆け寄るミレイの足取りはおぼつかないが、その瞳には恐れよりも強い決意と希望が宿っていた。
タリクは光の波の中で、妹の存在を確かめるように胸を打つ。
「お兄っ……ずっと、ずっと会いたかったんや……!」涙声で叫ぶミレイ。
「ワイもや!ずっとミレイに会いたかった!絶対に生きとるって信じてたんや!」
タリクは駆け寄り、妹を抱きしめた。
しばらく沈黙のまま抱き合ったまま、二人の胸には互いの温もりが染み渡る。
長い時を隔てても、心は決して離れなかったことを確かに感じた。
「これが……守りたいもんの力や」
タリクの胸の中で、ラグ・ノートリアの力と民への希望が一つに結ばれ、未来への道を照らす光となる。
ミレイの小さな手が、タリクの手を握りしめる。
そのぬくもりが、二人の心に新たな勇気と絆を刻む。
滝つぼの蒼い光に包まれ、タリクとミレイが抱き合う瞬間、仲間たちの胸にも熱いものが込み上げた。
「兄妹の絆……こんなに尊いんだな……」僕の涙腺が崩壊していた。
「うぅ……二人とも生きててよかった……!」後ろ姿のカゲミの背中が震えている。
「なんて素晴らしい日ですの!」リウラは感涙していた。(ツバネの胸元が濡れてる)
光は、遠く離れた人々の胸にも届く。
闇に怯えていた者も、迷いを抱えていた者も、光に導かれ、互いに手を取り合いながら歩き出す。
滝つぼの轟音、光の波紋、そして新たに芽吹いた絆――
すべてが一つになり、キュリシアに新しい息吹をもたらしたのであった。
ドクン!
――嫌な予感がする。
「……なんだろ。鳥肌たってきた」
世界が、ざわざわしはじめたのかもしれない。
久方ぶりに目を覚ました我だが……うむ、やはり世界とは面白いものよ。
過去もこれからも、すべてがうまくいくわけではあるまい。
波は寄せては返し、時に荒れ、時に澄む。人の心もまた、水に似ておる。
だがな、タリクと共に眺めるならば、その揺らぎすら愛おしい。
我が鱗を託したのも、共にこの流れを楽しみたいと思ったからだ。
さあ、我も、そなたらも――この世界の水音を共に聞こうぞ。
未来へと注ぐ流れの中で、再び会える日を楽しみにしておる。
――水龍




