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おにポチャで転スイ(転生)しました!?  作者: (万寿)ぷりん
第1章

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23 伝え聞いちゃった!?真実の物語!?






(主人公視点)


「カゲミ……キミを闇精霊にしたのは、旧き記録師(ラグ・ノートリア)の祖師かもしれないホン。


 本来なら、(おとり)鮎として水に還るはずの命を、記録から消さないために……」



「その話もっとくわしく!聞かせろよ!」


 僕たちは|水底の記憶図書館の中庭で、《アクア・レコルタ》ツバネとリウラを待っていた。

 すると、カゲミが禁書ホンホンに食ってかかるように声を張り上げた。


「なに?どうした、カゲミ?」

「瀬音……!」

「ラグ・ノートリアの祖師について知りたいかホン?」

「ああ、そうだ!」

「へぇ面白そうだね、良い歌になりそうだ」セリアンが小さく笑う。


「――記憶とは何か?記録とは何か?真実の本には書かれてないが、ホンホンの中の記憶に旧き記録師の祖師はいるホン。……カゲミは覚えてないのかホンホン?」

「……っ覚えてねえよ!」


 禁書ホンホンの羽ばたきがふっと止まる。


「ふむ……たった今、ツバネが“影狩り一族”を継いだと記録に刻まれたホン。

 門を守るは墓守ゾル。……懐かしい名だホン。

 一族の墓前にはカナメもいたらしい――じきにここへ来るホン」


 ツバネの無事を知り、僕たちは胸を撫でおろした。


「祖師の話は、ツバネが来てからにするホン」


 焦らされた形のカゲミは、悔しさに震えていた。


 やがて――ひやりと涼やかな風が中庭を吹き抜ける。


「……待たせたな」


 水面を渡るような声とともに、青い羽衣のような光がひらりと舞い落ちた。

 姿を現したのは、影狩り一族の長となったツバネだった。


「ツバネっ!」


 駆け寄るカゲミの声は、怒りとも喜びともつかない響きを帯びていた。


「ワタシもおりますわ!カゲミ!」

 リウラが飛びでて、カゲミを遮り、わちゃわちゃしながら押し合う。


「ちょうどいい、祖師の話ならば、拙も聞かせてもらおう」

 ――すでにそこにいたのだろう。ツバネの兄、カナメが腕組みしたまま立っていた。

 無表情の視線の先には、じっと偵察を続ける精霊ゲルの姿。


「役者は揃ったな」タリクが得意げに言えば、

「それは私のセリフなのに……」とセリアンが悔しげに返す。


 僕たちは胸を高鳴らせながら、その場に揃った仲間を見渡した。

 ――この瞬間こそ、「祖師の記録」が開かれる予感がした。




 禁書ホンホンがふわりと宙に浮かび、羽根を揺らす。瞳の奥に、古い水の記憶がきらめいている。


「よろしいホン……まずは、ツバネ。”乗り越えるべき宿命”を成し遂げたホン。おめでとホンホン。

 これより語るは、旧き記録師の祖師についての断片。真実そのものではないホン。

 残滓であり、揺らめきであり、記憶に刻まれた影にすぎぬホン」


 一同が息をのむ。自然と、その声に耳を傾けていた。


「祖師は、人と水とのあわいを往き来し、記録を紡いだホン。

 雨を呼び、流れを整え、ときにそれを封じた。

 だが――人の心は移ろいやすい。感謝も畏れも、やがては忘却へと変わるホンホン」


 その声は、まるで遠い時代をそのまま運んでくるかのようだった。


「……ついさっき、そんな話を読んだ気がするぞ……?」

 カゲミがぽつりとつぶやく。そう言われると、僕も読んだ気がしてきた。


「だからこそ祖師は、ただ“記す者”ではなく――“記録そのもの”になろうとしたホン。

 人の言葉は嘘を帯びる。ならば水そのものに、命そのものに記録を宿せばよい、と考えたのだホンホン」


 リウラが小声で「……記録そのもの……?」と呟く。

 ツバネの眉がわずかに動き、カナメの腕組みが強くなる。


 ホンホンはそこで一拍置き、カゲミを見据えた。


「カゲミ……キミを闇精霊にしたのは、祖師の企みの名残かもしれぬホン。

 本来なら囮鮎として流れに呑まれ、命を終えるはずだった。

 だが祖師は――その記録を消さぬために、形を変えて残した。

 消える命を『囮』としてではなく、『記録』として留めようとしたホン」


「……ッ!」

 カゲミが震え、悔しげに唇を噛む。


「囮鮎は何度も流れに呑まれる。その痛みも悲しみも、誰にも覚えられぬまま消えていった。

 だが祖師はそれを惜しみ、転スイの道を残した。囮の命を記録に繋げるためにな」


 カゲミは拳を握りしめ、怒りとも安堵ともつかぬ声を絞り出す。


「ふざけんな……!そんな勝手な理由で、オレは……!」


 その声は、中庭に響き渡り、祖師の記録の重みをいっそう際立たせた。



 沈黙を破ったのは、タリクだった。


「じゃあ――ワイやツバネの祖先は誰なんや!?

 祖師が記録そのものになったなら……ワイらは何から生まれたんや!?」


 ツバネも身を乗り出す。

 カゲミは涙をこらえるように顔を背け、リウラは息をひそめて見守った。


 禁書ホンホンは羽根を震わせ、静かに答えた。


「……血は血を呼ぶ。だが、その始まりをひとつに定めることはできぬホン。

 ツバネの一族も、タリクの一族も――流れの枝分かれのように、祖師の記録から滴り落ちた流れのひとつにすぎないホン」


「枝分かれ……?」タリクが眉をひそめる。


「そう。誰が最初かを問うのは、川の源を探すようなものホン。

 祖師が残したのは血ではなく、“記録”の契り。

 だからこそ、ツバネもタリクも――祖師の影を継ぐ者なのだホンホン」


 タリクは言葉を詰まらせ、ツバネは胸の奥でその言葉を噛みしめていた。



「ヒントをくれ」カナメが目を細める。


「う、うむ。ヒントというか、祖師が出てくるお話があるホン。

 キュリシア童話 第10巻『水龍の願いの物語』だホンホン」


「えええええ――!?!」


 ホンホンは頭上に童話を掲げ、水鏡に影を浮かべた。

 揺らめく影が形を変え――“祖師”の姿を映し出そうとしていた。



 キュリシア童話 第10巻『水龍の願いの物語』


 昔々、遥か川の奥深くに、水龍が眠っていました。

 その龍は、水の流れを聴き、命の行方を知る力を持っていました。


 ある日、川の小魚たちが苦しむのを見て、水龍は願いました。

「私の流れを守る者よ。どうか、水の記録を忘れさせず、命を守り続けてほしい」


 水龍は大きな鱗をひとつ川底に沈めました。

「この鱗を見つける者には、流れの秘密を授けよう」と、龍は静かに囁きます。


 やがて、川を旅する者たちが現れました。

 小さな鮎、人間の子ども、そして目に見えぬ精霊たちも――それぞれが、水の流れに導かれていきます。


 しかし水龍は告げました。

「命は時に囮となり、犠牲もある。しかし忘れるな。記録こそ、未来を選ぶ力なのだ」


 そして水龍は、再び深い眠りに沈みました。

 川の底に沈む鱗と、静かに流れる水の記録だけを残して――。





 ホンホンが羽根を広げ、声を低めた。

「キミたちも気づいているホン?“祖師”とは――」


 困惑してざわめく一同。

 ツバネが険しい表情で前へ一歩踏み出す。



「答えろ、ホンホン。祖師とは……拙者たちの始まりとは、何だ?」









みなさま、今回も読んでくださってありがとうございます!


キュリシア童話には夢も真実も隠されています。


今回はその「真実」のほうに、少し触れることができました。


けれど、まだまだ謎は深まるばかり。


次回もまた、誰かの小さな冒険や、ちょっとした発見を一緒に覗きにいきましょう。


それでは、また水面のきらめきの向こうで――。









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