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おにポチャで転スイ(転生)しました!?  作者: (万寿)ぷりん
第1章

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22 影水、共鳴しちゃった!?ツバネとリウラの必殺タッグ!?





 ゾルの体がゆらりと揺れる。

 水底の紙片や埃がふわりと舞い、戦いの幕を告げる狼煙のように散った。


 呼吸が詰まり、鼓動が早まる。張り詰めた空気が、これから訪れる衝突を否応なく知らせていた。


「一族が眠る墓場へ花を手向けに参ったのか?それとも手折られたいのか?」


 低く湿った声。門の影から滲み出るように現れたゾルの瞳は氷のように冷たく、だがその奥にかすかな哀しみが灯っていた。


「拙者は……記録を受け継ぐ者――」

 言葉の刹那、ゾルが片手を振る。

 闇の粒子が水面に散り、ひとすじの波紋が足元を撫でた。


「甘いな、若造。記録は一族の魂だ。軽々しく触れる者に、通る権利などない」


 ――はいどうぞって、言ってくれりゃあ楽なのにな。

 胸の奥で炎が灯る。これは力の試練であると同時に、心の試金石。


 ゾルの言葉の底にある痛みと諦めが、胸を刺す。

 それは兄の影と重なる――(リ・)ノートリアとして協会に仕え、泥をかぶり続けた男の覚悟。

 ゾルはそれを知っているのだ。

 

 刃先に決意の光が宿る。

 水路を伝う振動が背筋を撫でた。


「覚悟は……できてる!」


 ゾルの手が振り下ろされる。黒い影が波紋のように広がり、視界を飲み込む。

 脳裏に過去の声があふれた。笑い声、泣き声、兄の叫び――


 だが、胸の奥で別の声が重なる。


「ツバネ、前を向いて!ワタシも一緒に戦いますわ!」


「あぁ、行くぞリウラ……一緒にな!」


 水精霊が光を放ち、影と水が渦を巻く。二人の心が一つに重なった瞬間――


「――《影水の共鳴》!」


 蒼黒の渦が水底を裂き、ゾルを呑み込む。


「わ、わぁ!ツバネの影と私の水が――ひとつに!」


 心と力が完全に融合する。


「これでどうだーーーっ!」


 黒と青の奔流が炸裂し、影を薙ぎ払った。


「最高にカッコよかったよ、ツバネ!」

 リウラの声と共に光が消えていく。



「ふおぉ必殺技だ!」

「ふたりともキラキラしてる」

「お熱いね~」


 みるん・きくん・はなすんの声が遠くで響いた。



 静かに崩れ落ちたゾルの影。重苦しい沈黙の後、門が軋んで開く。


 その奥に広がるのは、青黒い光に包まれた石碑の群れ。

 鎮魂の地――影狩り一族の墓所。


「……これが……墓……」


 胸の奥に、ざらりとした痛みが広がる。膝を折りかけた瞬間、低い声が響いた。


「……待ったぞ。よく、来たな」


 振り返れば、黒衣の男。頬は痩せ、影を刻んでいたが、その瞳は忘れようのない――


「……兄者……!」


 声が震えた。胸の奥に言葉にならない熱がこみあげる。

 だがその瞳は、懐かしき温もりではなく、鋭い氷のような冷たさを帯びていた。


「墓守を越えたか……ゾルも、お前を選んだのだな」


「兄者……!どうしてここに……!協会に仕えたはずじゃ……!」


「一族を守るためだ。そして……お前を生かすために。

 この墓は拙が築いた。水草で隠し、墓守を置いたのも拙だ」


「生きてたなら――! どうして黙ってたんだよッ!」


 胸に積もった孤独と渇きが、爆発するように吐き出される。


「ツバネ……お前に真実を告げれば、お前まで俺と同じ泥に沈む。

 拙は裏ノートリアとなり、協会に縛られ、穢れ役を背負った。

 一族を守るために。……そして、お前を生かすために」


「守るため……? そんなの勝手だッ!

 オレだって兄者と並んで戦いたかった! 一緒に背負いたかったんだ!」


 兄はふっと笑みを浮かべた。だがその笑みは深い影を落としていた。


「言うようになったな……。だが今日、お前がここに立ったことこそ、拙の選んだ道が正しかった証だ。

 ゾルも、お前に未来を託した。影狩り一族は――お前が導け」


「兄者……!」


「拙はもう光には戻れん。協会に縛られたこの身は、闇に沈むしかない。

 だが――お前なら違う。影を背負いながら、なお光を抱ける。

 ……それが弟であるお前に残す、最後の願いだ」


 その声は哀しみと誇りで震えていた。


「なら……拙者が引き受ける!一族の影も、哀しみも……全部背負って、必ず再興させる!

 兄者、あんたの想いごと――この胸に抱えていく!」


「……そうか。それでいい」


 黒衣の男はゆるやかに頷き、墓に眠る名を見つめた。


 誓いは、深い静寂の中で果たされた。カナメは思った――「生き抜いてきて……よかった」と。




「さて、門を閉じるぞ」

 静かに告げる声とともに、古びた水門が重々しく軋んだ。

 くぐった瞬間、背後で門は音もなく閉じ、たちまち繁る水草が覆い隠してしまう。

 外界との道は完全に断たれ、そこは別の時間が流れる結界となった。


 拙者とリウラは言葉を失い、ただ耳を澄ませていた。


 沈黙の底で、かすかに水が揺れる。

 気を失っていたゾルが、ゆっくりと身を起こした。目に宿る光は、以前よりも深く、澄んでいる。

「……ここは……」


 記憶の欠片が戻り、己の役目を悟ったように立ち上がる。

 重く低い声が、静かな水域に響いた。


「――ゾルは墓を守る」


 その言葉は誓いとなり、水に溶け、門を閉じた者の耳にも届く。

 新たな守人が目覚め、静かな眠りの場は再び守られた。


 カナメは慎重に一歩踏み出し、眠りから覚めたゾルに声を投げた。


「ゾル……旧き記録師の祖師を知っているか?」


 ゾルは、青く光る瞳をゆるりと開き、長い間封じられていた記憶を探るように低く唸った。

「……祖師か。忘れようにも、忘れられぬ。あの者は、最初に“記すこと”を選んだ。

 偽りに流されぬため、真をとどめるため……。我らが影に記録を託したのも、祖師の手だった」


 低く響く声には、どこか寂しげな温もりが混じっていた。


 リウラが小さく息をのむ。

「祖師って……やっぱり実在してたんですわね……」


 ゾルはゆるやかに頷き、拙者と兄者に眼光を投げた。


「伝承だけではない。確かに、墓にその痕跡が眠っている。

 祖師の筆跡は影の帳面に生き、我ら影狩り一族がそれを守り継いだ」


 瞳がふと遠くを見やる。

「……祖師は、ただ記しただけではない。“造り、残した”ものがある。

 精霊だけではない。ゾルもまた、そのひとつだ」


 その言葉は深く沈み、重く空気を満たした。


 拙者もリウラも声を失う。けれど、確かに胸に刻まれる。

 ――祖師は、記録するだけの存在ではなかった。何かを創り、残した。


 だがそれ以上を語ろうとはせず、ゾルは静かに門へ吸い込まれるように姿を消した。

「名を問うな。ただ、祖師と覚えておけ。それで足りる」



 静寂が戻り、水音だけが響いた。

 ゾルの言葉の重さに、ただ黙って息を呑んだ。










「はじめまして、水精霊リウラですわ。裏記録師カナメさん」


「……挨拶できるほどの仲ではない。拙は水精霊の任務を知らぬフリはできぬ」


「ごっ、ご存じでしたの!?ワタシはカナメさんにはこれっぽっちも欲しい感情が動きませんので、お気になさらないでくださいませっ」(やべっ)


「……」



 ――二人の初顔合わせは、こんなにギクシャクしていたのですわ。


 でも、二人の距離も、いつかふわりと近づくことでしょう。(リウラの相性予想)






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