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おにポチャで転スイ(転生)しました!?  作者: (万寿)ぷりん
第3章

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134 占っちゃった!?セオトの行方!?






「……なんで消えたんだよ!」


 メリフル村の水路の前で、カゲミは立ち尽くしていた。あの黒魔法陣がセオトを――。思い出すだけで、胸の奥がざらつく。

 影の感覚が、掴めない。いつもなら、すぐそばにあるはずの“記録の揺れ”が、どこにもない。

「オレのこと心配するより……」

 唇を噛みしめ、吐き捨てる。

「さらわれるなら、自分だろっつーの……!」


 カゲミは、深く息を吸い、静かに目を閉じた。身体が水の揺らぎとは別の“影”へと沈んでいく。水路に差し込む淡い光が、足元で歪み、重なり、やがて一つの濃い影を結んだ。

「……セオト」

 呼ぶ声は小さい。けれど、確かに“影”へ届く声だった。


 闇巫女にしかできない占い。人を視るのではない。存在の痕跡そのものを辿る術。

「オレは闇巫女なんだ!……できるに決まってるでしょ!」

 震えを押し殺し、言い切る。カゲミは、セオトの影を占った。

 水底に沈んだような影が、ゆっくりと揺れ動く。そこに映るのは、場所でも未来でもない。

 ――“今、どこに繋がっているか”という流れ。


「……生きてる」

 きっぱりと、カゲミは言った。

「消されてない。封じられてるだけ……しかも、ここじゃない。……どこ、行っちゃったんだよ」


 その時。

 足元の影が、異様に歪んだ。


『――干渉確認』

 低く、感情のない声。

「……来たな」

 カゲミは、歯を食いしばる。

「試練ってやつ?」


 影が、刃のように伸びる。これは、戦いじゃない。選別だ。


『同行者。観測対象外』


「……っ!」

 影が、絡め取られる。引き裂かれるような痛みが走る――それでも、カゲミは笑った。


「はは……甘いんだよ」

 影は、刃でもあるが――逃げ道でもある。

「セオトを一人にするわけ、ないだろ」


 影が、裂ける。


 引き裂かれるような痛みと引き換えに、カゲミは拘束を抜けた。地面へと転がり、肩で息をする。視界が一瞬白く弾け、それから、ゆっくりと世界が戻ってきた。


「……っ、はぁ……はぁ……」


 荒い呼吸を整えながら、カゲミは空を見上げる。揺れる水面の光が、木々の間からちらちらと差し込んでいた。


 ――そのとき。

 視界の端で、何かが揺れた。

 枝に、引っかかっている。見覚えのある、分厚い一冊。


「……え?」


 カゲミは立ち上がり、ふらつく足で近づいた。それは、セオトがいつも胸元に入れていた禁書――ホンホンだった。


「……こんなとこに……」


 そっと手に取る。水を含んでもいない。破れてもいない。まるで、「ここにいる」と知らせるために残されたみたいだった。

 胸の奥が、きゅっと締めつけられる。


「なぁ、ホンホン」

 カゲミは、静かに問いかける。

「セオトが……どこにいるか、わかるか……?」


 一瞬の間。


 次の瞬間、禁書が小さく震えた。

「ホンホンに、まかせるホーン!」

 思わず、カゲミは息を呑んだ。


「……ほんとだな」

 口元が、わずかに緩む。

「頼むぞ」


 ホンホンをぎゅっと抱え、空を仰ぐ。まだ見えない流れの向こうに、確かに繋がりを感じた。


「……待ってろよ。絶対、見つけるから」

 影が、足元で静かに伸びる。

「じゃ今すぐ出発するホンホーン!」

 禁書ホンホンが、ぴょこんと跳ねる。


 その声は、水路に吸われることなく、まっすぐ前へと飛んでいった。




 ――そして。


「……って、どこ行けばいいんだ?」

 勢いよく村を飛び出したはいいものの、肝心の行き先を聞いていなかったことに気づき、カゲミは立ち止まる。 影だけが、先へ先へと伸びたがっている。


「劇場にいるクロム支配人に聞くホン!」

 ホンホンが即答する。

「水底水族館のアクア・プリズンのこと、あいつなら知ってるホン!」


「……は?」

 カゲミは目を見開いた。

「アクア・プリズン……?」

 一拍置いて、眉をひそめる。


「たしか、廃墟だって話じゃなかったか?」

「廃墟だからこそ、使われてるホン」

 ホンホンは、どこか含みを持たせた声で続ける。

「魔法陣で人間を攫うなら、人目につかなくて都合がいいホンからね」


 カゲミは、ぎゅっと拳を握った。

「……なるほどな」

 足元で、影が再び動き出す。迷いを捨てた意思をなぞるように、地面を這った。

「だったら行くしかないだろ」


「……あ!」

 ホンホンが思い出したように声を上げる。

「萬介くんが、セリアンかツバネに伝えたほうがいいって言ってるホン」

 一瞬だけ間を置き、

「でも急いでるから、萬介くんに任せとくホン!」


「いいぞ、ホンホン!」

 カゲミは即座に応じた。

「今は、止まらねえ!」


 行き先は決まった。理由も、迷いも、もう背後に置いてきた。


 ――劇場へ。セオトへと続く流れを、必ず掴むために。










 あのときのことは、ホンホン、よーく覚えてるホン。


 水路の歪み。

 黒くて、イヤ〜な魔法陣。

 記録がギリギリ削られる、あの感じ。


「これはダメなやつホン!」


 セオトの胸元で、ホンホンはビリビリしたホン。

 このままじゃ、セオトごと、ぜんぶ持ってかれるホン!


 だから――

 考えるより先に、飛び出したホン。


「とりあえず離れるホン!!」


 ……でも。


 風が強かったホン。

 魔法陣も、ぐわーってしてたホン。

 思ったより、世界は回ってたホン。


「うわぁぁぁホン!?」


 びょーん、って飛んで、

 ばさっ、って落ちて、

 ぐにっ、って――


「……あ」


 木の枝に、ひっかかってたホン。


 セオトは、いなくなってたホン。

 黒い光も、もうなかったホン。


「……やっちゃったホン?」






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