表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おにポチャで転スイ(転生)しました!?  作者: (万寿)ぷりん
第3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

124/143

124 元気でちゃった!?エマージェンシーのおかげ!?






泉萬介(いずみ よろずのすけ)くんから――エマージェンシー・テレパシーだホンホン!!」


 その叫び声に、部屋の空気が一気に跳ねた。声の主は、ここ最近やけに物静かだった禁書ホンホンだ。机の上でぴょこんと跳ね、紙束を揺らしながら騒いでいる。


「……え、どうしたの!?」

 思わず声を上げると、ホンホンは目をきらきらさせてうなずいた。


「泉萬介くん――ホンホンの友人の亀様からだホン!」

 胸を張るように言う。

「緊急連絡ホン!ツバネとリウラから、“大至急メリフル村に来てほしい”って伝えてほしいって言われたんだホン!」


「大至急……?」

 その一言で、場の空気がわずかに引き締まった。


「おお、メリフル村か!前から一度、行ってみたかったんだよなぁ」

 真っ先に反応したのはミラだった。


「遊びに行くんじゃないですよ」

 即座に、ぴしっとした声が飛ぶ。セリアンだ。苦笑しながらも、どこか本気の目をしている。


「ホンホンもね、正直言うと――」

 禁書ホンホンは、くるりと一回転してから続けた。

「ここ、ミラソムの空気が閉塞感ありすぎて、草生えそうだったホン!だから、外に出るのは楽しみだホン!」


「だからね……」

 思わず、ため息混じりに口を挟む。

 この面子が集まると、どうしても話が軽くなる。だが、今回の呼び出しは――そんな空気で片づけていいものじゃない。


「……でも」

 ふいに、セリアンが静かに言った。


「私は……みんなで楽しく歌える場所がいいな」

 一瞬、言葉を探すように視線を落とし、

「一方的に騒がれるのは……もう、いいや」

 その声音は、穏やかで、けれどどこか疲れていた。


 ――セリアン。そうだよね。あれは……大変だった。



「……行こう」

 ミラが、いつになく落ち着いた声で言う。

「ツバネが“大至急”って言うなら、理由は一つじゃないだろ」


「ホン!」

 禁書ホンホンが勢いよくうなずく。

「これはもう、冒険の予感しかしないホン!」


 不穏さを胸の奥に抱えたまま、けれどそれぞれ違う想いを抱いて、僕たちはメリフル村へ向かうことになった。



 ミラソムを出発してしばらくすると、驚くほど分かりやすく変化が現れた。

 本当に――禁書ホンホンが、元気になったのだ。


「ふんふんふ〜んホン♪」


 鼻歌が止まらない。歩いている間も、荷の上でも、ちょっとした休憩の合間でも、とにかくずっとご機嫌で歌っている。さっきまでの物静かさが嘘みたいだ。


「……ここまで違うと、逆に分かりやすいな」

 思わず苦笑する。


「多分ね」

 闇巫女カゲミが、ぽつりと言った。

「闇の力の影響だったんじゃないか?禁書が“喋りにくくなる空気”って、確かにあるんだよ」


「やっぱりか……」

 僕も思い当たる節は、ありすぎるほどあった。

 あんなに楽しそうに、好き勝手しゃべり倒していたホンホンが、あの場所では妙に静かだった。無理に黙っていたわけじゃない。ただ、声を出すこと自体が重そうだった。


「ふんふ〜ん、ふふふ〜ホン♪」

 その当人は、そんなこともう忘れたかのように、しっぽフリフリのように、本の角を揺らしながら歌っている。

 その様子を見ていると、自然とこちらの頬も緩んだ。元気なホンホンがいる。それだけで、旅の空気は明るくなる。


「なあ、ホンホン」

 声をかけると、ぴたりと鼻歌が止まる。


「なにホン?」


「メリフル村の事件が解決したらさ」

 少し先の話を、あえて口にする。

「亀様――萬介くんに、会いに行こうな」


 一瞬の間。そして次の瞬間。


「わーい!! 萬介くんに会えるの、すっごく楽しみだホーン!!」


 ホンホンが跳ねた。ぱたぱたと本が揺れ、その弾んだ声につられて、皆が思わず笑顔になる。


 ――まだ、事件は終わっていない。影は確かに動いているし、メリフル村には不穏な気配が残ったままだ。それでも、この一瞬だけは。


「タリクとゲルはね、水龍さまが連絡してくれたから、メリフル村で合流だホーン!」

 ホンホンは胸を張るように言った。


「水龍さままで協力してくれたのか!?」

 思わず声が弾んだ。

「すごいな……それなら、水龍さまにも会いに行こう!」

 危機の只中にいるはずなのに、不思議と胸の奥が軽くなる。


「もちろんだホンホーン!」


 禁書ホンホンの返事は、やけに頼もしく、力強かった。さっきまでの沈んだ気配が嘘みたいだ。ページを震わせる声には、迷いも、曇りもない。


 ――ミラソムから出てみて、正解だったな。


 そう思う。場所が変わるだけで、空気はこんなにも違う。言葉は軽くなり、笑顔は自然にこぼれる。闇に満ちた場所では、気づかないうちに心まで縮こまっていたのかもしれない。


 こうして笑える未来を、何の無理もなく思い描けること。それ自体が、きっと大切な“証”なのだ。


 闇があるからこそ、光を信じられる。影が動くからこそ、進む意味が生まれる。


 危険は、まだ終わっていない。

 メリフル村には不穏な気配が残り、裏で何かが蠢いている。それでも――。


 この旅は、きっと“闇”だけで終わらない。


 そんな確信を胸に、ミラソムを後にした道を、僕たちは一歩ずつ、確かに進んでいった。

 笑い声と、希望と、まだ見ぬ答えを連れて。











 読んでくださってありがとうございます。師走がじわじわ……。

 明日もおにポチャでお会いしましょう。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ