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おにポチャで転スイ(転生)しました!?  作者: (万寿)ぷりん
第3章

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120 有名人になっちゃった!?僕の仲間たち!?



 クリスマス特別編はおわりまして、本編です。









 劇場デビュー以来、大人気となったセリアンは、もうおちおち街を歩けなくなっていた。


「セリアン様よね!?」

「やっぱり本人だ!」

「昨日の高音……今も耳に残ってて……!」


 ――きゃあ、と小さな悲鳴のような歓声。気づけば通りのあちこちから視線が突き刺さり、足を止めた人々が次々に集まってくる。


「……これは、まずいですね」

 セリアンは困ったように笑い、そっとフードを深くかぶった。

 だが、遅かった。


「フード姿も素敵です!」

「その歩き方、もう歌ってるみたい!」

「アンコールのときの目線、私、確かに見ました!」


「……全部、見られてましたか」

 小さくため息をついた、その瞬間――背後から、ぐいっと腕を引かれた。


「はいはいはい!ここまで!」

 割って入ってきたのはミラだった。

「見世物じゃないよ〜?推しは遠くから拝むもの!」


「師匠……」

「大丈夫、大丈夫。慣れるまでが一番大変だから」

 そう言いながら、ミラは流れるような動きで人の流れをさばいていく。さすがは年の功――いや、場数の違いだ。



「……すごいなあ」


 少し離れたところからその様子を眺めながら、僕はふと自分の腰元を見る。

 下げているのは、いつものノート。何度も書き込まれ、角の丸くなった相棒だ。


 けれど、肩書きはまだ「新米ノートリア」。

 誰かを導くわけでもない。町を動かすわけでもない。歌で人の心を掴むわけでもない。ただ、書いて、記して、追いかけているだけだ。


 ツバネとタリクは、もう立派な町長だ。ノートリアとの両立は大変だろうけれど、それでも前に立っている。


 セリアンは――言うまでもない。街を歩けば人だかり。笑顔ひとつで悲鳴が上がる。もはや歌い手というより、完全にアイドルだった。


「……うん」


 それでも、歩いてはいる。昨日より一歩。今日より、半歩。


 町長も、アイドルも、最初からそうだったわけじゃない。ツバネも、タリクも、セリアンも――みんな、積み重ねてきたんだ。


 なら。


「……が、がんばろう」


 小さく呟いた、その直後だった。


「なに弱気になってんだ。セオトはセオトだろ」


 すぐ横から、つんとした声。振り向くと、そこにいたのは――美少女の闇巫女カゲミだった。


 腰に手を当て、少しだけ頬をふくらませている。でも、その目はちゃんと、まっすぐこっちを見ていた。


「……カゲミ」

 名前を呼ぶと、ふいっと視線を逸らす。


「べ、別に。励ましてるわけじゃない。事実を言ってるだけ」

 そう言いながら、そっとノートの上に手を置く。


「この町の“今”を残してるの、セオトなんだから」

「誰かが前に立つなら、誰かが書かなきゃいけないでしょ」


 胸の奥が、じん、と熱くなる。

「……ありがとう」


「ふん」

 小さく鼻を鳴らして、でも――

「ほら、行くぞ!立ち止まってる暇はないぜ!」

 差し出された手は、少しだけ照れくさそうだった。


 その手を取って、僕はもう一度前を向く。町長、アイドル、新米記録者。それぞれの役割を胸に、世界は動いていく。




 ――劇場の奥。

 観客の熱も、拍手の残響も、すべてが引いたあと。

 舞台の中央には、紫のモチーフだけが残され、かすかに明滅していた。


 そこから伸びる、細い光の線。それは、地下――アクア・スパイラルの動力装置へと繋がっている。


「……あーあ」

 どこか間の抜けた声が響く。

「おじさん、おかげで助かったけどさ」


 その声は、装置の奥。水と闇に絡め取られ、半ば溶けるように存在する――フレクシアだった。


「……消えちゃいそうだね」

 紫のモチーフが、ぴくりと震える。


『……』

 しばしの沈黙のあと、かすれた声が返る。

『……おじさんと呼ぶな』

 弱々しいが、やけにきっぱりと。

『支配人と呼べ』


「はいはい、支配人さん」

 フレクシアは、くすくすと笑った。

「でもさ、今の立場的に、どう見ても“おじさん”じゃない?」


『……芸術に年齢は関係ない』


「その芸術、今にも砕けそうだけど?」


 紫の光が、わずかに強くなる。


『誰が消えるか!』

 クロムの声が、少しだけ張りを取り戻した。

『私は……私はだな……!』


 言葉が続かない。魔力はほとんど残っていない。動けない。舞台にも立てない。


 ただ、“存在している”だけだ。


「……まあ」


 フレクシアの声が、少し柔らぐ。


「正直に言うとさ」

「君があそこで踏ん張ってくれなかったら、私、もう原型なかったんだよね」


『……』


「だから――助かったのは、事実」

 紫のモチーフが、わずかに静まる。


『結果的に、巻き込まれただけだ……礼を言われる筋合いはない』


「それでもさ」

 フレクシアは、渦の中で体勢を変えた。もう、自由に動けるほどの力はない。

「消えそうな同士って、案外、話しやすいよ?」


『……縁起でもない』


「くすっ」

 笑い声。

「じゃあ、早く消えなよ」


『誰が消えるか!!』


 紫の光が、ぷん、と明るくなる。

 その様子が、どこか拗ねた照明のようで。


 フレクシアは、思わず吹き出した。


「はは……笑える。ポンコツ消えかけ、似たもの同士になっちゃったんだね」


 今は、風前の灯。それでも、まだ――舞台の灯は消えていなかった。











 ここまで読んでくださってありがとうございます。

 年末でバタバタしてますが、おにポチャは通常運転で駆け抜けたいと思います。






 

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