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おにポチャで転スイ(転生)しました!?  作者: (万寿)ぷりん
第3章

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119 【特別編】作っちゃった!?キュリスマスのお礼!?






 キュリスマスパーティーの翌朝。

 外はまだ薄暗く、日が昇るには少し早い時間だった。


 目を覚ました瞬間、空気の冷たさが、いつもと違うことに気づく。


「……寒っ」

 布団から顔だけ出して、思わず身をすくめる。昨日までこんなに冷え込んでたっけ。真冬に逆戻りしたみたいだ。

 気になって、宿舎の自分の部屋のカーテンを開ける。


「うわ……!」

 一面、真っ白だった。

 どう考えても、一晩で降りすぎな雪だ。屋根も道も、昨日まで残っていたキュリスマスの飾りも、きれいさっぱり雪に埋もれている。

 そして――中庭の中央。


「……え?」

 そこだけ、明らかに雪の積もり方が違った。いや、積もっているというより……立っている。


 雪だるま……ではない。


 丸い甲羅。ずんぐりした体。どこか神々しい、見覚えのありすぎるフォルム。


「雪カッパ様……?」

 いや、違う。見覚えがありすぎる。

「……これ、シヴァ・テンスイ様だ!」

 かなり精巧に作られた、シヴァ・テンスイ様の雪像だった。改めて見ると、カッパ様ってやっぱり神様に似てるんだな……。


「ちょっと待って。こんなの、自然にできるわけ……」


 そのとき。


「えへへ〜」

 背後から、聞き覚えのある、軽い声がした。

「朝イチのサプライズ、どう?」

 振り返ると、ふわふわと浮かぶ、きゅりの精霊。昨日とまったく同じ、無邪気な笑顔だった。


「まさか……きゅりが作ったのか?」

「うん!」

 きゅりは、胸を張る。


「キュリスマス、すっごく楽しかったでしょ? だからね、お礼!」

「お礼で雪像作ることある!?」

「え? そう?」

 首をこてんと傾げる。

「みんなが『神様すごかったね〜』って言ってたから、“じゃあ作ろう!”って思って!」


「神様に許可取ったの?……」

「とってないよ!会えないじゃん!」


「夜の雪、いっぱいいっぱい集めてね、“きれいにしよ〜”って言ったら、勝手に形になったの!」

 得意げに語るきゅり。……善意100%、自覚ゼロだ。


 その瞬間。


 東の空が、ゆっくりと白みはじめた。朝陽が昇る。


 きらり。


 雪像が一斉に光を反射し、まるで内側から輝いているかのようだった。

「わ……光ってる……神々しい!」


「でしょでしょ!」

 きゅりがぱちぱち手を叩く。

「朝のひかり、だいすきなんだよ〜!」


 すると――


「おまたせ、諸君!……やはり、きゅりか」

 低く、呆れたような声が降ってきた。

 屋根の上。霜をまとった気配とともに、腕を組んだシヴァ・テンスイ様が立っていた。


「え、すごい!本人来た!?」


「来るに決まっていよう。何があっても楽しもう♪諸君!」

 視線が、雪像へ向く。

「信仰が、夜のうちに固められておるのじゃ」


 きゅりが、ぴしっと姿勢を正す。

「えっと……よろ昆布(こんぶ)かな〜って……」

「……よろこんぶじゃと!?」


 しばし沈黙。やがて、シヴァ・テンスイ様は小さく息を吐いた。


「よく出来ておるぞ。形は悪くないのじゃ」

 しぶしぶ、といった調子で言う。

「ほんと!?」

 きゅりの目が、ぱっと輝く。


「ただし」

 シヴァ・テンスイ様は指を一本立てた。

「残しておくと、ややこしいのじゃ!」

「え〜」


「え〜、ではない」

 指先を鳴らす。

 ――ぱきん。


 雪像に細かな光の筋が走り、きらきらと雪へ還っていく。

 だが、最後に――頭のお皿の、雪帽子だけが、ぽとりと残った。


「それは、きゅりの責任で管理するのじゃ」

「はーい!」



 シヴァ・テンスイ様は背を向け、朝の光の中へ溶けていく。

「おぬしらのキュリスマス、楽しそうだったのじゃ!」

 振り返らずに、ひと言。

「来年はわっちも混ざろうかの」


 静寂が戻る。


「えええ!?」

 さっき、ややこしいって言ってたのに……!?


 白い庭。さらさらと光る雪。そして、雪のお皿を抱えてにこにこする精霊。


「……きゅり」

「なに?」


「来年のキュリスマスも、よろしくね」

「え? うん! たぶん!」


 ――たぶん、って。

 怖いもの知らずの精霊であった。










 雪像事件(?)の後、庭は元どおりの白に戻った。

 いや、正確には「元どおりより、ちょっとややこしく」なった気もするけれど。


 雪のお皿を抱えて満足そうに飛び回るきゅりを横目に、僕は小さく息を吐いた。


「……サプライズは、嫌いじゃないんだけどさ」


 楽しかったのは本当だ。

 朝陽にきらきら光る雪。無邪気な善意。精霊らしい、まっすぐすぎる発想。


 でも――。


「次があるなら……事前に相談、しような?」


 きゅりは聞いているのかいないのか、「はーい!」と元気な返事だけを残して、くるんと宙を回った。


 その返事に、少しだけ不安を覚えつつも、僕は苦笑する。


(……たぶん、また何か起きるな)


 それでも。

 “何も起きない”よりは、ずっといい。


 きゅりのサプライズは、少しお騒がせで、そしてちゃんと、僕たちの心をあたためていた。


 ――だからまあ、次は相談しような。求む、平穏!



 ――瀬音。






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