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おにポチャで転スイ(転生)しました!?  作者: (万寿)ぷりん
第3章

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111 強すぎちゃった!?兄さんとの契約!?






 僕は、兄さんの何を知っていたんだろう。


 ――僕に危害を加えた人間を許さない。それは「守る」ということなんだと、ずっと思っていた。

 でも、実際は違う。許さないんじゃない。排除するか、配下に置くか――管理している。

 (闇の神殿と、この中央塔が……繋がってる)


 視線が、アクア・スパイラルの動力核へと流れる。この装置は、記録師協会だけのものじゃない。もっと古く、もっと深い。しかも――闇の力を吸っている。地下空洞。増幅されていた影。あれは、偶然じゃなかった。

 (……もっと調べるべきだったのかな)



 思考が、そこまで辿り着いた瞬間。


「軽蔑するのか?セオト――」

 鋭い声に、はっと顔を上げる。


 兄さんの目が、きらりと光っていた。責めるでも、怒るでもない。――値踏みするような、冷たい光。しまった。考え事が、顔に出てた。

「ごめん……よく、わかんない……」

 正直な言葉が、ぽつりと落ちる。

「ただ……間違ってると思う……」


 兄さんは、しばらく黙って僕を見ていた。逃げ場を塞ぐような沈黙のあと、低く告げる。


「お前の“今”と、“過去生”を知る奴らは危険だ」


 空気が、ぴんと張りつめる。水音さえ、遠のいた気がした。


「青鮎のお前はな――魔を引きつける」

 その言葉に、胸がざわつく。兄さんの声が、わずかに強まった。


「生かしておけない」

 淡々と、結論のように。

「……わかるだろ?」


 胸が、ぎゅっと縮んだ。そそれは脅しでも、怒りでもなかった。

 ――“当然の判断”として告げられた言葉だった。


 喉が、ひりつく。

「……わかんない」

 自分でも驚くほど、かすれた声が出た。


「兄さん、それ……」

 息を吸う。だめだ、声が震える。

「僕を守る話じゃない」


 兄さんの視線が、ほんの一瞬だけ揺れた。


「世界を、管理する話だ……」


 言葉にした瞬間、はっきりと分かってしまう。兄さんは、“敵”を見ていない。“危険物”を見ている。


 そして――その基準の中に、僕自身とカゲミも含まれていることを。

 胸の奥で、何かが静かに、音を立てて崩れた。



「お前たちに見せるのは、早かったようだな」

 兄さんは、もう僕を見ていなかった。


「いずれ理解できるさ……」

 肩をぽん、と軽く叩かれる。それは慰めの仕草のはずなのに、僕には――決別の合図みたいに感じられた。

 兄さんはそのまま背を向け、何事もなかったかのように執務室へ戻っていく。


 扉が閉まる音が、やけに大きく響いた。


 残されたのは、冷えきった空気と、立ち尽くす僕とカゲミだけだった。


「っはぁぁぁーーーー!?」

 沈黙をぶち破るように、カゲミが叫ぶ。

「何なんだよ、お前の兄貴!」


 次の瞬間、アクア・スパイラルの核部が小さく脈打った。青白い光が波紋のように広がり、その中心から、聞き覚えのある声が弾む。


「逆らえないんだよねぇ。魂ごと握られちゃってるみたいでさ」

 軽い調子。けれど、その奥に、どこか乾いた響きが混じっている。

「おイタがすぎるって、サクッとやられちゃってー。怖かったよ、きみのお兄ちゃん」

 能天気にすら聞こえる声。――あんなに傲慢で、圧倒的だったフレクシアが。


 (クロムも、フレクシアも……自我は、ちゃんとあるんだよな)


 僕は、ぎゅっと拳を握った。

 怖かった。その一言が、時間差で胸の奥に沈み込み、ずしりと重くなる。

 兄さんは、守っているつもりで――いったい、どこまで壊しているんだろう。



「フレクシア。兄さんと契約したんだよね?」

 僕は核部の光を見つめたまま、静かに言った。

「……内容、話せる?」

 次の瞬間、光の中に浮かぶフレクシアが、ぶんぶんっと大きく首を振る。両手で自分の口をぎゅっと塞ぎ、必死な様子だった。


「そっか……」

 無理に聞くのは、やめる。

「じゃあ、この塔の中なら、フレクシアはどこにでも行けたりするの?」


「え、探検ってこと?」

 声が少し跳ねる。

「行ったことないよ。シオマにばれたらヤバイじゃん!」

「……それもそうだね」

 苦笑して、僕は視線を落とす。


「じゃあさ。ここで、何をしてるの?」


 その瞬間だった。青白い光が、わずかに揺らぎ――フレクシアの“顔色”が、はっきりと分かるほどに青ざめていく。言葉が、詰まった。


「……タクミ君」

 さっきまでの軽さは、もうない。声は低く、切迫していた。


「……帰りな」


 短く、強い声だった。次の瞬間、アクア・スパイラルの核が、どくん、と重く脈打つ。水と魔力の循環音が一瞬乱れ、その鼓動が、警告のように僕の胸を打った。


「バイバイ」

 軽い別れの言葉。けれど、そこに込められた切迫は、はっきりと伝わってくる。


「もう……ここへは来ないほうがいい――」


 最後の言葉は、青白い光の中に溶けるように消えた。核部の明滅がゆっくりと落ち着き、まるで“何もなかった”かのように、塔は静寂を取り戻す。


 それでも。


 僕の胸の奥では、あの重い鼓動だけが、いつまでも消えずに残っていた。











 ねえねえタクミ君。

 ほんとはさ、言いたいこと、いーっぱいあるんだよ?


 でもさぁ。

 言えないんだよね。契約って、そういうものだから。


 喋った瞬間に、

 ――ぱちん、って。

 消えちゃうかもしれないじゃん。

 それはいやだっ!

 いつか……ルミアに会いたいんだもん。


 だからさ……バイバイ。



 ――フレクシア






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