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おにポチャで転スイ(転生)しました!?  作者: (万寿)ぷりん
第3章

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110/145

110 繋がっちゃった!?闇の神殿と中央塔!?






「どういうこと!?劇場の支配人がクロム・リーフで、しかも――ファントムになってたんだけど!」


 勢いよく扉を開け放ち、僕とカゲミは記録師協会の執務室へ飛び込んだ。積み上げられた書類と、静かな水音の魔導器。その奥で、協会長――シオマ兄さんがペンを止める。


「……随分と慌ただしい帰還だな」


 その落ち着いた声に、かえって胸の奥がざわついた。

「慌ただしくもなるよ!クロム・リーフだよ?劇場を牛耳ってたあの支配人が、もう“生きても死んでもいない存在”になってて……!」


 言葉を探す僕の袖を、カゲミがきゅっと掴む。


「なあ、兄さん。あれは偶然じゃないだろ」

 低く、鋭い声。

「劇場の淀み、紫のモニュメント、ファントムの発生……全部、繋がってる」


 兄さんはしばらく黙ったまま、机の上の記録晶を指でなぞっていた。やがて、ひとつ息をついて顔を上げた。


「……隠すつもりはなかった」

 静かな声。

「ただ、お前に危害を加える者を許さない。それだけだ」


「……どういうこと?」

 兄さんの視線が、まっすぐ僕を射抜く。


「クロム・リーフは、お前を執拗に狙っていた。命が消えた時、奴は消えなかった。芸術には深い洞察力をもっている。だからあの劇場を任せた。それだけだ」

 一瞬、言葉を切る。

「……まさか、あそこまで強い意思を保ったファントムになるとは思わなかったがな」


 背筋が、ひやりと冷える。


「もうお前たちに危害を加えることはない。それは契約に反するからな」


 淡々とした言葉だった。けれど、その静けさが逆に、胸の奥をざらつかせる。


「……契約、って」


 兄さんは答えなかった。記録晶から手を離し、ゆっくりと椅子にもたれる。


「お前を守る。それだけだ――」


「……何言ってるの!?それだけじゃわかんないよ!」

 兄さんは目を伏せ、短く言った。

「……ついてこい」


 それだけ告げて、踵を返す。僕とカゲミは顔を見合わせ、無言で後に続く。

 向かった先は、記録師協会の中枢――アクア・スパイラルの動力部を抱える中央塔だった。


 重厚な扉を抜けた瞬間、空気が変わる。水と魔力が渦を巻くように循環し、低い共鳴音が骨の奥まで響いてきた。


 ――この動力は、ただの装置じゃない。


 その中心に存在するプログラムは、意識を持っている。いや、かつて“持ってしまった”。


 そいつの名は――フレクシア。


 日本の「しずく堂」で閉じこめられ、“キュリシアの世界”というゲームを与えられ、現実のキュリシアにまで干渉し、壊しかけ、怒った雫さん――ルミアによって、この世界へ追放された存在。


 青白い光が脈打つ核部で、懐かしさを含んだ声が響いた。


『……タクミ君じゃないか!』

『遊びにきてくれたのかい?嬉しいな……』


 喉が、ひりついた。

 その声は、あまりにも無邪気で。けれど――どこか、決定的に危うい。


「兄さん!どういうこと!?」

 思わず叫んでいた。

「フレクシアを……こんなところに閉じこめて!」


 兄さんは振り返り、ほんのわずかに笑った。それは協会長の顔じゃない。弟を案じる、兄の顔だった。

 だけど――だからこそ、胸が痛む。


「言っただろ」

 静かな声。

「お前に危害を加える者を、俺は許しはしない」


 言葉が、塔の中で反響する。


「どうして……!」

 声が震える。

「どうして兄さんが、フレクシアが僕をターゲットにしてたこと、知ってるの!?」


 兄さんは、答えなかった。



「……それでも!」

 カゲミが、一歩前に出た。その声は低く、かすかに震えている。

「それが、“閉じこめる”理由になるのかよ……!」


 そこにあったのは、怒りだけじゃない。失望と、理解してしまった痛み。


 中央塔の最奥。

 アクア・スパイラルの核部で、青白い光が強く明滅する。

 水流制御の魔導式、その中心――意思を宿した存在、フレクシア。


 その瞬間だった。

 胸の奥で、何かが繋がる。


 ――ぞくり。


 僕は、はっとしてカゲミを見る。カゲミもまた、目を見開いて僕を見返していた。


 ああ。

 同じ結論に辿り着いたんだ。


(あの闇の神殿の地下空洞……)

(あそこで増幅されていた“影の力”……)


 視線を、再び動力核へ向ける。


(……繋がってる)

(あの力は、このアクア・スパイラルへ流れ込んでいたんだ)


 青白い光の奥で、フレクシアが楽しげに揺れる。


 偶然なんかじゃない。ここは、すべての“起点”だった。


 静かに、しかし確かに。

 僕たちは――触れてはいけない核心に、足を踏み入れてしまったのだ。






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