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おにポチャで転スイ(転生)しました!?  作者: (万寿)ぷりん
第3章

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105 確保し忘れちゃった!?初雪キュリスマス(?)の大混乱!?






 ラボチルへ向かう石畳を歩きながら、僕は胸を張って宣言した。

「よし!明日はノートリアとして、協会に久しぶりに顔を出そう!バリバリ働くぞー!」

「……そうだな。みんな、それはそれは驚くな」

 ツバネがふっと笑う。その笑みが少し複雑なのに気づきつつも――食べて、笑って、元気になってくれているなら、それでいいと思った。


「はりきりすぎだぞ!セオト!」

 カゲミに言われて肩の力が少しだけ抜けた。胸が少しだけそわそわしているのは、仕事復帰の緊張のせいだろう。


 ふと、薄曇りの夜空からふわりと白い粒が舞い落ちてきた。


「雪だ……!」

 差し出した手のひらに、ひとつ、またひとつ、結晶が触れては溶けていく。


「お、初雪ですねぇ」

「そういえばキュリスマスが近づいてくると、不思議と雪が降るんだよね。そんな気温低くないんだけど」

 ひと仕事終えて手ぶらになった店員さんが。肩の力を抜いた声で気軽に話している。


「ん?きゅりすます?」

 聞き慣れているようで、どこか異質な響き。胸の奥に小さな違和感が落ちる。問い返すと、店員たちは目を丸くし、それから不思議そうに笑った。――まるで、誰でも知っていて当然の行事だと言わんばかりに。


「ああ、ミラソムでは不思議なことがよく起こるんだ。”ミラソムの七不思議”って聞いたことない?」

「僕たちアユハにいたから初耳です!」


「キュリスマスは“きゅり”の精霊さんが祝福してくれる時期なんですよ!」


「…………」

 一同、しばし沈黙。


「……きゅりの精霊?」

 僕が確認すると、店員は元気よく頷いた。


「そうです!冷気を司る小さな精霊で、透明で、よく見ると頭にお皿みたいなのがあって……あっ、でも気温はそんなに下げないんですよね。不思議なんですよね!」


「へぇ……頭にお皿みたいな……精霊」

 うーん、それって……透明ミニミニカッパ様じゃないの?

 しかも精霊の大好物はキュウリで、各家庭では“モミの木にキュウリを結わえてつるす”のだという。飾った木のある部屋で家族や仲間とパーティをする伝統なのだという。


 カゲミがひそひそと近づく。

「なぁセオト……きゅりの精霊って、聞いたことある?」

「ない」

「だよな……」


 そんな僕たちを見て、ミラがふわっと微笑んだ。

「でも、そういう“この土地だけの行事”って好きだよ。季節が来たって感じがして」

「とても素敵な風習ですわ」

 リウラも穏やかに頷く。


「つーかさ」

 タリクが気楽な声で言った。

「プレゼント交換して、雪見て、なんか騒げるなら……呼び名なんて何でもよくねぇ?」

「行事の本質を理解してませんが、同感です」

 ゲルが鋭く突っ込みつつも苦笑している。


「キュリスマス、楽しみですね!」

「ええ!お店でもパーティをしますので、ぜひ来てください!」

 店員さんたちが嬉しそうに手を振った。


 夜空では、雪がやさしく舞い続けている。

 知らない行事、知らない精霊。

 だけど――こうして仲間と笑って歩く、この瞬間こそが、何よりの祝福なのかもしれない。




 ラボチルに戻り、あったかいデザートをつつきながらほっとひと息ついていたとき――僕は、ふと、とんでもない事実に気づいてしまった。


「っ……しまった!今夜どこに泊まる!?」


 スプーンを落としかける勢いで立ち上がる。

 記録師協会にはまだ正式に顔を出してないから、宿舎は使えないだろうし……。ホテルなんてこの町にあったっけ!?いや、あっても雪の中を探し回るのはつらたんすぎる……!

 みんなも一気に焦り出した。

「くっ……不覚だった!拙者としたことが……!」

「野宿だけは……!雪の野宿だけは……ッ!」

「私は雪の中で一晩過ごすのもやってみたいが」

 ミラのつわもの発言に、思わず机に突っ伏しそうになる。


 そんな騒ぎを聞きつけて、ラボチルの巫女さんがそっと声をかけてくれた。

「この町は冒険者や研究者が多いので……仮眠室でよければ、ここにもありますよ」


「おお!ありがたい!」

 天の声って本当にあったの?と思うくらいの救世主だった。


 巫女さんはまるで灯りがともったみたいに柔らかく微笑んで、カウンター奥を指さした。

「簡易ベッドと毛布だけの小さなお部屋ですが……雪の夜に外で眠るよりは安全ですよ」


「十分です!命が救われました!」

 僕は勢いよく頭を下げた。胸がじんわりあたたかい。

 雪の夜でも眠れる場所がある――それだけで、世界がぐっと優しくなる。ラボチルって、本当にありがたい場所だ。


 安心したせいか、ふと別の興味が湧いてくる。

「キュリスマスパーティは、毎年何をしてるんですか?」

 どうせなら僕も盛り上げてみたい。そんな気持ちが自然と湧いてきた。


 巫女さんは楽しそうに頷いた。

「まず、みんなで“きゅり精霊さん”に捧げる歌を歌います。静かで優しい歌なんですよ。空気がすっと透明になるような」


「へぇ……歌があるんだ。伴奏者はいるかな?」

 ミラが興味深そうに身を乗り出す。


「あとは、モミの木にキュウリを飾って……夜になると精霊劇をやります」

「精霊劇?」

 ツバネが眉を上げる。


「ええ。きゅり精霊さんが冬を運ぶお話です。透明の衣装をきらきらさせて、今年はゲルさんが主役なんですよね?」


「えっ」

 ゲルがスプーンを落とし、全員が振り向く。


「……聞いてませんが」

「毎年、誰かが強制的に選ばれるんです」

 巫女さんは悪びれずに言った。


「運悪かったな、ゲル」

 タリクが肩をぽん。

「いや、運よかったと言うべきかもな!」

「どちらでもありません!」

 ゲルが真っ赤になって抗議し、店内に笑いが弾けた。


 外では雪がしんしんと降り続けている。知らない土地の、似ているようでいて、どこか違う不思議な習わし。

 でも――こうしてみんなで笑っているなら、今年のキュリスマスもきっと温かい夜になる。










 ここまで読んでくださってありがとうございます。

 おかげさまで、毎日更新させていただいてます。

 キュリスマスイブにはキュリスマスパーティーを開催したいなと思いました!

 楽しい番外編になりそうです。


 それでは、また水の世界でお会いしましょう。



 ――(万寿)ぷりん。






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