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おにポチャで転スイ(転生)しました!?  作者: (万寿)ぷりん
第3章

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101 近道しちゃった!?地下空洞の出口!?






 裏記録師を見送って、静かに流れ始めた時間の中で――僕は胸の奥からふつふつと湧き上がってきた言葉を、そのまま口にしてしまった。


「ツバネのお兄さんも、己を貫くってかんじだよね。僕の兄さんと似てる気がする」


 ぽつりとこぼれた声。ツバネは「ん?」と眉を上げ、横目でこちらを見る。ほんの一瞬、考えるように視線を宙にさまよわせて……そして、さらっと、とんでもない事実を口にした。


「そうだ、まだ言ってなかった気がするが――新しい協会長は、セオトの兄者だぞ」

「えっ……えええっ!?汐真兄さんが協会長なの!?」


 あまりの衝撃で、心臓が一拍抜けたみたいになった。そんな大事なこと、どうして誰も言ってくれなかったんだよ……!

「初耳だった」と思わず口にすると、ツバネは肩をすくめる。


「ああ。崩壊した協会を、あれよあれよと新天地に建て直したろう?あの手腕と決断力で、全会一致で決まったんだ」

 ツバネの声音には、珍しく素直な敬意がにじんでいた。


「へええ。兄さん……すごいなぁ……」

 ……汐真兄さんが協会長。胸の奥がじんわり熱くなる。誇らしくて、ちょっと心配で、それでも嬉しい。遠くへ行ってしまったような気持ちと、でも確かに繋がっている感覚が同時に押し寄せる。


 新しい協会、新しい責任。僕も、ちゃんと胸を張って会いに行けるように――進まなきゃ。




 しんみりした空気がまだ胸の奥に残っていたけれど、立ち止まってはいられない。気持ちを切り替え、ミラソムへ向かう準備を整える。


「じゃあ、出発しようか!」

 僕が声を上げると、皆の視線が集まった。


「ちょっと待って」

 セリアンが周囲を探るように目を細めた。

「取り込んでわかったんだけど、影の力がこの先に流れてるんだよね。この先を辿ってみたいんだけど、いいかな?」

 セリアンにしかわからない、淡くて鋭い“流れ”が、神殿の奥へと吸いこまれていくようだ。


「わかった。行ってみよう」

 ツバネがうなずき、皆もそれに続いた。



 しばらく歩くと、ふいに足元の感触が変わる。ぽっかりと口を開いたような地下空洞が広がり、青白い光が岩壁に反射していた。


「すごいな、ここ……」

 思わず息をのむ。

「ねえ、セリアン。まだこの先も行くの?」

「そうだね」

 セリアンは足元に漂う影の粒子を見つめた。


「この先へ流れてる。この空洞で増幅できるみたいで……かなり大きな力になるね」

 その声は落ち着いていたけれど、どこか緊張の色も混じっている。


 ……この先、何が待っているんだろう。胸の中に小さなざわめきが生まれ、足元が少しだけ冷たく感じた。


 それでも、退くわけにはいかない。一行は、影の流れの向こうへ歩みを進めた。



 ずいぶん歩いた気がする。……たぶん二十分くらい?息は上がっていないけれど、足の感覚でそれくらい経ったとわかる。

 ようやく、ほのかに明るい“出口らしき場所”が見えてきた。


「ここ、地上へ出られそうだね。行ってみるか!」


 ミラさんがぱっと前に出て、軽快に岩場をよじ登り始める。僕たちも後に続くと、上のほうから彼女の声が降ってきた。


「……あれ?ここって、ミラソムじゃないのかな? 昔と景色が変わってなければ、きっとそう」


 え……まさか。

 最後の段差を越えて外に出た瞬間、涼しく乾いた風が頬を撫でた。視界に広がるのは、まさしく僕が知っている――ミラソム近郊の景色。


 なんということでしょう。

 僕たちは、まるで秘密の通路のように、ミラソムへ地下から到着してしまったのだ。


「……え、近道すぎない?」


 思わずそんな感想が口から漏れてしまった。

 驚きというより、あまりのタイミングの良さに拍子抜けした感じだ。


 しかしミラさんは肩をすくめ、まったく別の方向から釘を刺してきた。


「セオトってば呑気だねぇ。ミラソムに影の力が流れてるってことだよ」


「ハッ!? それって大丈夫なの? セリアン、わかる!?」

 僕が慌てて振り返ると、セリアンは静かに目を閉じて気配を探っていた。けれど次に開かれた瞳には、不安な色が宿っていた。


「……よくわからないから、調査するね。協会でまた会おう」

 その声は落ち着いているけれど、判断は慎重だ。


「わかった。危なくなったら、一人で踏みこまずに僕たちを呼んでね」

「ああ。もちろんだよ」


 軽い笑みを交わした瞬間、風がひゅう、と街のほうへ流れた。その風はひどく冷たくて――まるで“影の気配”が僕たちを誘うように思えた。


 セリアンはもう一度だけ振り返り、静かにうなずく。

「……行くよ。みんなも気をつけて」


 その背中を見送り、胸の奥に小さな不安が宿る。でも、立ち止まるわけにはいかない。


「さ、行こうか。ミラソムの町へ」


 ツバネが前を向き、ミラさんも軽く手を振って歩き出す。いつもの仲間の足音が、さっきまでより少しだけ頼もしく感じられた。


 僕たちはセリアンと別れ、風に揺れる影の匂いを背に受けながら――ミラソムの町へ、新しく生まれ変わった記録師協会へと向かった。


 そこに何が待っているのかは、まだわからない。けれど、きっとまた新しい“記録”が始まるのだと思った。











 みんなと別れて、一人でミラソムの外れを歩く。

 影の流れを辿るためだけど……静かになると、いつも思考が深く沈む。


「……やれやれ。やっぱり一人になると、影がよく響くね」

 そんな独り言をこぼした時だった。

 通りの向こう、数人の町人がこちらを見て――ぴたりと動きを止めた。


「えっ……ちょ、ちょっと、あれ……見て……」

「黒髪に影まとってる……ミステリアス……!」

「吟遊詩人さん!?うそ、かっこよ……!」

「影属性なのに優しげって反則じゃない!?」


 ……ざわっ。

 セリアンの周囲に、妙な熱気が広がる。


「……うん? なんだい、この視線は」

 町人たちのきゃあきゃあが加速する。


「影をまとってる感じが最高……」

「竪琴持ってる……!絶対歌ってほしい……!」

「闇堕ちじゃなくて“闇優し系”って感じ……!!」


 セリアンは頬に手を当て、ほんの少しだけ眉を寄せた。

「……困ったなぁ。僕はただ、影を辿っているだけなんだけど」


 ふっと微笑んだ瞬間――


「笑ったぁぁぁぁ!!」

「えっ待って尊い……!!」


 黄色い悲鳴が爆発した。

 セリアンは肩をすくめ、まるでそれも風の一部であるかのように静かに歩き出す。


「まったく……影より騒がしいじゃないか。……みんなと合流する前に、調査を終わらせないとね」


 ひゅう、と影の風が街の奥へと流れる。

 その風に乗るように、ミステリアスダークな吟遊詩人――セリアンは音もなく消えていった。






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