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海上国家を作ろう

作者: らいらい

変わらない日常


変わらない日々


変わらない生活


夢や希望をもって社会人になったはずなのに


鬱屈とした日々


政治は何をやっているんだろう?


僕も何をやっているんだろう?


世界は争いばかり


また今日もどこかで戦争が始まったらしい



何かしなきゃと思いながら


何も変わらない


だってそうじゃないか


生活があるんだ


働かなきゃ・・・



そんな日々を過ごしていたある日


とあるCMが流れてきた


「ドラム缶2個を用意して、海に飛び出そう!!」


は?


とか、思うじゃないか


だからどうした?とか思ったけども、少し調べてみることにした


どうやら海洋国家を作るらしい


国連では承認されたけれども・・・


簡単に言うと、作れるものなら作ってみろ 出来上がったら認めてやるよ せめて国民は10万人集めろ


そんな内容だった、発起人はどこかのお金持ちらしいが、個人ではそこまで巨額になりそうなプロジェクトに全財産投入しても足りないらしく、参加者を海の真ん中まで連れて行くのもバカにならない費用が掛かるそうだ。


ならいっそ、勝手に来てくれって事らしい。手ぶらで来られても困るから少しの水と少量の土と食糧持参で 行先は・・・まぁ、緯度と経度だけ記載されてはいるが 誰が行くんだろう・・・


写真には海の真ん中で、ヨットが2艘とドラム缶が20個位浮かんで、3人くらいで釣りをしている風景が写っているが、そんなところに小魚がいるとは思えない


ま、まぁあれだ、お金持ちの考えることは・・・って感じだな


それからも代り映えのしない毎日を過ごし


明日は選挙があるらしいが、代り映えしない議員の看板を見ながら


どうしてこの政党が勝つのかわからない・・・とか思いつつ


選挙行かないから関係ないかーて、こんな感じだから社会も変わらないんだろうな


そんな事を考えながら、いつもの居酒屋で夕ご飯代わりに一杯引っかけてると、斜め前の席のお兄ちゃんが「お前ドラム缶ってどこで買えるんだ?」とか友人に聞いている。友人曰く「俺に聞いてわかると思うか?」だそうだ。そりゃーな、普通の人はドラム缶買わないし・・・


そこでふと先日のキャッチーを思い出した。あぁ彼は行く気なのか・・・少し気になって会話をこっそり聞いてみることにした僕は、いつもなら帰る時間なんだけど、「生おかわりー!」と叫んでいた。


何やら壮大なロマンが詰まってるらしい


海上国家の名前は「OCEANES」 海に集まるものって所か、各移民の文化はそのまま受け入れてくれるらしい 強制するのは、とりあえず出来る事は自分ですること、他人と争わない事だそうだ


彼はそこで、配信サイトを使い有名になりたいと考えているようだ、そうしてお友達ににも「一緒にいこうぜ!」とか誘っているけど、1日2日ならいいけど、ずっとは無理と断られている。「それでも俺は有名人になってやるぜ!!」とか騒いでいるけど、若いっていいな


しばらく二人の会話に聞き耳を立てていたけど、もういいかって所で切り上げて安アパートに帰ってきた。


何時もより2杯多めに飲んじゃったけど、これくらいじゃ酔っぱらいはしない。


真っ暗な部屋に灯りをつけて、明日はゴミの日だっけかと思いつつシャワーを浴び、ゴミをすぐ出せるように纏めてから、布団に入る


電気を消して「やりがいかぁ・・・」と呟いたのにも気づかず、そのまま就寝


その日、嵐に巻き込まれる夢を見た


何を思ったか、小さな小舟にドラム缶をロープで引っ張って海上国家に向かっているところに嵐に巻き込まれているようだ


その少し先に、有名人になりたい彼が持っていた機材が海に落ちて「あぁ・・・」とか言いながら落ち込んでいる


波は3F建ての建物よりも大きなもので、僕は何度も垂直落下からひっくり返ってを繰り返している。


まぁ、夢なので死ぬ事は無い


それでも、嵐が去った後の穏やかになった海原に登る朝日には、何かこうグッとくるものがある。


そんな朝日を見ながら、目が覚めた。


少し寝足りない気持ちのまま、いつもの通勤電車に乗り、いつもの会社に向かう。


いつもの席に座り、コーヒー一杯をさぁ飲もうって所で「君そんな顔して、夜遊びも程ほどにね」なんて上司が言ってくる。周りの人も「○○さん夜遊びするんだー」だの「彼まだ独り身だからねー」とか、僕は一体何を言われているんだろう。


いつもより多めに残業をし、いつもの居酒屋でいつもより2杯多めのビールと食事、これが夜遊びなのか?


その日は少しイライラしていたからなのか、取引先からも「どこか具合でも?」はまだいい「聞きましたよー、夜遊びも程ほどにしないと、社会人なんだから」とか・・・


次の日上司に「ふざけんじゃない!」と辞表を叩きつけて帰ってきた。


これはこれでスッキリしたけど、こんな辞め方はいけないとは思う。


さぁどうしようか・・・なんて考えてると人事部長から電話が掛かってきた。


辞める理由が知りたいとか言われたけれど、濁しておいた。だってチョットしたことでカチンときただけなんて言えないし・・・なんか理由を考えてたら、あぁあれがあったな「僕、海上国家に参加するんで、国が出来たら最初に営業のチャンスを御社に・・・」なんて言ってたら、電話の向こうからは盛大な溜め息と「君ももう立派な大人なんだから・・・云々」少し呆れたような声に変わった気がするけども、一応は退社も認めてもらい、少しの退職金がでるようだ。


電話を切った後、とりあえず飯でも食いに行こうと近くのファミレスに入った所、見覚えのある青年がウェイターをしていた。


食事が終わって、会計をしている時に彼が「あの良かったら、ご覧ください」と海上国家のパンフレットを渡してきた。時間はまだ朝の10時過ぎで他のお客さんもいなかったので、ついつい「君は行くのかい?」と声をかけてみた。


「はい!夢が詰まってますからね!新しい国造りの一員ですよ!信長や家康にも出来なかった、男のロマンじゃないっすか!そこで国が出来れば、100年後200年後には、俺は神になれるかも知れない!」


なんて、熱く語り始めた彼の後ろから「ん、んー」って店長らしき人の声が聞こえて「あ、すいません、またお越し下さい」て、綺麗なお辞儀を見せてもらった。


しばらく散歩をしながら、近くの公園のベンチに腰を掛け、一人考える。


なるほど、神になるか・・・ この先何年後かわからないけど、海面上昇がとんでもない規模で起こったりすると、今ある国の大半は沈んでしまう。残る国も山岳民とかになると・・・それから100年200年経てば・・・なるほど


確かに最初の建国者たちは神のように崇めらるだろうな・・・ふむ


スマホの画面をポチポチ叩く、ドラム缶2万~6万かステンレスが高いんだな・・・でも、買えない金額じゃない。


一応防錆塗料やボートも買って・・・アパート引き払えば少し敷金も戻ってくるし、退職金も出るようだし行けるな


駄目だったら、また就職すればいいし。向かって戻ってこれるかどうかは・・・まぁ、なるようになるか


その日からは、あっという間だった。海岸近くの民宿に泊まり、海岸近くの駐車場を1月だけ借り、ドラム缶やボート、食料なんかも購入していく。


さすがにボートと言ってもゴムボートじゃなく、貯金が許す限りの中古で小型のクルーザーを350万


そう言えば、船舶免許は必用ないみたいで、海上国家の登録証を申請して、持っていれば資格なしで船に乗れるみたいだ。


どうせ出来ないだろうと国連が承認した後に、本当にドラム缶にまたがって海に出て数百人単位で行方不明者がでて、海上国家の国民になりたい人が他国の船舶免許が必要なのか?の議論になり、簡単な講習を3日程受ければ、登録証だけで大丈夫になったらしい。ただし登録証を持ったまま3年以上自国に居続けると、不法滞在として捕まるらしい・・・


そんなわけで、3日の講習も終え準備が出来たところで、さぁ!って所で、スマホの画面に親父の名前・・・もしかしたら、これが最後かもと思うと出るしかなく「何を考えているんだ!」から始まった説教はもう・・・日が暮れるまで続いた。そして最後に「俺がもう30年若かったら、お前は海上国家の住人だったな!」ガハハハッって笑っていたけど、一応認めてはくれたんだろうな


そんなわけでようやく真っ暗な海上に出航しようかって所で「いざ出発!!」って向こうから聞こえてきた。


ん?と思ったら、件の青年だった。彼も準備が出来たのだろう、ちらほらと海に向かう船が見えるけど、まさかね・・・


まぁ、出発だ。とりあえず南に向かう。少し沖まで出て潮に流されながら南方経由で海上国家に向かうのが良いらしい。とパンフレットに書いてあった。なんでも手漕ぎで向かう人達もいるらしく、途中で困ってる人がいたら助けてあげて欲しいそうだ。まぁ、同じ国民になるんだ、「あの時見棄てたのはあの人よ」なんて後々問題が起こるのが目に見えているから、出来る範囲で助けていこうとは思う。



あれから、どれくらい経っただろうか、何度か漁港によって不足した食料や燃料を買い足しつつフィリピン辺りまで来たところで、木造の小型の船が漂っているのが見えてきた。


もしや?と思いつつ覗いてみると、木造船の中で5人の子供と多分両親が、死んでる?と思いつつ一応声をかけると反応は有るみたいだが、動けないらしい。ざっと中を見渡しても空き缶が10個ほど・・・まさかこれで?とは思ったが、一応水と食料をもって小舟にわたり、小さい子から少しづつ飲ませていく。


少しして元気になってきたようなので、レトルトのご飯やシチュウ、果物の缶詰なんかをそのまま食べてもらった。


言葉は通じそうもなかったので、持っていたパンフレットを見せると、キラキラ輝いた目をしていたので行先は同じなのだろう。このまま捨てていくのもアレなので、繋げてあるドラム缶の後ろにロープでさらに木造船を縛り、牽引することにした。


子供たちは、こっちのクルーザーにキラキラと輝いた目をしていたので、こっちに乗せるか?と何とか身振り手振りで説明し、子供たちをクルーザーに乗せ、そういや釣り竿一杯持ってたなと、その日はしばらくみんなで釣りをして、その釣果をその日の夕飯にした。


それから、しばらくしてパプアニューギニア辺りから、いろんな船が同じ方に向かって進んでいる。


たまに顔が合えば、手を振って振り返して。大きめのクルーザーに乗ってる人が巡回しながら食料は足りるか、困ったことは無いか、あちこちの船を回ってるようだ。こちに来た時に先の両親と子供たちは大きめのクルザーの人達が乗せていってくれるそうで、遠慮なく行為に甘えた。さすがに言葉の通じない子供5人との生活は、楽しかったけど、うるさかった。


そんなこんなを過ごしていたら、日本語が聞こえてきた。


あの日の青年がカメラ片手に何やら、話しているみたいだ。配信サイトで有名になれたかどうかわからないけど、若者が頑張っている姿に少しウルウルしながら、あぁこれが齢を取ったって事なんだろうとしみじみしながらも、彼は大丈夫なのか?と思いつつ、親父の気持ちが少しだけわかった気がした。


そうしてようやく目的の場所に・・・・


もうそれは、すごい!の一言だった。


海上を埋め尽くさんと集まった船の数。


僕の乗ってきたサイズのクルーザーが一番多くみられるが、もっと大きいのや、途中で見かけた木造船に、自分で作ったでしょ?って感じの屋形船っぽいのも、カヌーまで・・・


でも、これだけの人達がここに国を作ろうと集まっている事の方が、すごかった。


本当にできるんじゃないだろうか


ただ、ここからどうして良いかがわからない。周りを見渡してもどうして良いか困っているようだ。


しばらくして、案内の人が各船を回りながら、何処の国から来たかで場所が決まっているらしく、日本から来た人は中央寄りに船を進めるように伝えられた。なんでも最初に来た日本人は5番目に到着したらしい。行動力ってある処には、あるんだなーと感動した。


とりあえず到着してから一週間位は、旅の疲れを癒すためにのんびりしていても良いらしい。その後、本格的な作業が始まるらしい。


これから僕の新しい人生が始まるのかと思うと少し不安もあるがワクワクもする。


残っていた最後の缶ビールを片手に、これからの未来に乾杯した。

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