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よん。

前回のあらすじ

兎と戦った。

 暫く小道を歩いていると、日が傾いてきた。


 周りを見渡しても、相変わらず人里など全く目に入らない。これは、野営確定だな。


 俺は、立ち止まり、辺りを見渡した。


 これまでは、小屋で寝泊まりしていたが、もう利用できない。小屋から持ち出したものの中に寝具はあるが、テントはない。段ボールとタープかブルーシートでもあれば何とかなったかもしれないが、それすらない。まさか草むらに布団を敷いて寝るというわけにもいくまい。


 俺は、暫し腕組みして考えた。


 うん。これは、あれだな。以前読んでいたネット小説によくあったやつだ。


 身に覚えのない知識を探してみると、あるよね。役立つ魔法が。


 術式はわかった。


 しかし、あれだ。”鉱山の作業”とか、”大きな船”とかいう名前のゲームでもそうだったが、俺には建築系の才能は全くない。所詮、豆腐ハウスしか作れない男だ。


 だが、それがどうした。この何もない野っ原で雨風を凌ぎ安全に一夜を過ごせるのであれば、建物の外観など気にすることなど何もない。あっはっはっはっはぁ……。



 気を取り直して、製作に取りかかることとする。


 まずは、十メートル四方程度を地盤強度を出すために魔法で圧縮を掛けながら整地する。そうすると、整地した十メートル四方の土地が六メートル四方に圧縮された。圧縮された分地盤も下がってしまったので、盛り土して更に圧縮をかけていき、六メートル四方の基礎を準備する。基礎とその周囲の間には幅二メートル程の溝ができてしまったので、ここも周囲の土を使って埋めておく(落ちたら危ないからね)。


 次に、ベースとした土地の内側四メートル四方に、土を魔力でこれでもかと圧縮して固めた高さ三〇センチメートル程度のブロックを並べ、ベース部分と結合する。ブロックを並べた内側にも補強のため、十字になるように同様にブロックを並べて、これもベース部分と結合する。これで田の字をしたベタ基礎モドキが出来上がりだ。


 ベタ基礎の上に、土で作った板で床を貼り、外周に壁を巡らせ陸屋根を載せれば完成だ。


 おっと、入り口がない。壁の一部を作り変えて、九〇センチ×一八〇センチ程の開口部を開け、土を固めて作った引き戸を設置する。今度こそ完成だね。



 引き戸を開けて屋内に入る(靴は入ってすぐのところで脱いでおくのを忘れない)。


 屋内は、おおむね十畳弱ぐらいの広さになるか。


 扉以外に開口部のない簡易設計なので、戸を閉めると屋内は真っ暗になってしまうし、床はタイルのように固いものだが、所詮は仮住まい。そう思えばこれで十分だ。


 とりあえず、豆腐ハウスしか作れない俺にとっては、まぁまぁ満足したので、使用した魔法をパッケージ化しておいた。《メイク・ヒュッテ》と名付けた。英語とドイツ語が混交している辺りが中二チックで蠱惑的だ。


 『……』


 ──いいから、寝てなさいな。


 『……』



 今回はひとつひとつ手順を確認しながら術式を組み上げていったので、完成までに一時間以上かかったが、次回以降は、パッケージを使用すれば、数舜で完成できる。出来上がるのは、今回と全く同じ豆腐ハウスだがなw。



 そうこうしているうちに、いよいよ日も暮れかかってきたので、扉を閉めて休むこととした。その前に《ライトボール》を浮かべて灯りを用意しないとね。


 そういえば、昼飯も食べずに歩いたり仮住まいを立てたりしていたので、さすがにお腹が空いた。今日は、早めに夕食を摂ることとしよう。食べるものは、いつも通りのものだけどね。


 まず、スキレットを取り出して、そこにA5和牛を召喚する。両面を焼き、塩、コショウする。


 次に、木皿を取り出し、パンを召喚。今回は、気分に応じてバゲットにしてみた。


 最後に、カップを取り出して、魔法でお湯を注ぐ。


 コショウも、A5和牛やパンなどと同様、物質としての構成など全くわからないので、生成する度に魔力をゴッソリ持っていかれるが、塩味だけでは寂しすぎるため、どうしても欠すことができない。実際、塩コショウのA5和牛を食べれば、頑張って生成した甲斐があると実感できる。銀地に青の缶のヤツをイメージしたのが成功の秘訣かもしれない。


 一方、飲んでる白湯については、茶葉なり何なり用意すればよいのだろうが、そのあたりはあまり気にならないので、相変わらず白湯を飲んでいる。時折コーヒーが飲みたいと思うこともないではないが、生成にかかる魔力を考えるとまぁいいかと思えてしまう程度の欲求ということだ。なら白湯でもよいということだ。


 準備したA5和牛ステーキとバゲットを腹に収めると、もうすることもなくなってしまったので、早寝することとした。


 布団を敷くと、全身と衣類の汚れを除去する魔法、《クリンナップ》を起動してスッキリ。おやすみ。




 ◇




 ドンドンと壁を叩く音で目が覚めた。現在、この世界に知り合いはいないので、間違いなく野獣か魔獣だろう。


 屋内は真っ暗なので、今が何時なのかはわからないが、ドンドンうるさくて寝ていられない。仕方がない、排除するか。


 俺は、《魔力警戒レーダー》を起動して、壁ドンするヤツの正体を確かめることとした。


 『壁ドンって、言葉の使い方が違いやせんか、、、』


 ──細かいことは気にしないのが、長生きの秘訣さ



 返ってきた反応を分析すると、魔獣が三匹? 三頭? 三体? 単位がよくわからんが、それであることが確認できた。残念ながら、これまでに出会った魔獣──っていってもホーンラビットぐらいだけどな──とは合致しなかったが、反応強度からいってホーンラビットよりは強力な魔獣であるようだ。


 今は、ちょうど扉の反対側の壁を三匹(でいいか)でドカドカ殴っているところなので、扉から出て静かにしてもらうのがいいだろう。


 早速、靴を履き、《光サーベル》を準備すると、引き戸を開いて外に飛び出した。勿論、《魔力警戒レーダー》は、先ほどから一秒間隔で魔力を発しているので、扉の前に敵性生物がいないことは確認済みだ。


 やや、大回りで小屋の裏手に回ると、身長二メートル程でガチムチマッチョボディに豚顔の魔獣が三体(が正解だった)で腕をグルグル回しながら盛んに壁を叩いていた。


 俺が魔力を込めて固めた壁がそんなに易々と崩れるわけもなく、どれだけ叩かれてもびくともしていない。我ながら大したものだと悦に入ってしまった、、、、が、そんな気分に浸っていると、そのうちの一体と目が合った。


 ──おっと、気づかれたか。情緒のない奴だ。


 『お前さん、やっぱり阿呆じゃのう……。気づかれんうちに先手を取れたものを』


 実際のところ、先手を取るか取らないかなど大差ないだけの実力差がありそうなので、単に余裕をかましているだけだったのだが、一応《鑑定》しておく。



  種族    オーク

  クラス   Ⅾ

  体力    九七

  魔力    三六

  攻撃力   一〇一

  防御力   六五

  魔力耐性  二三

  スキル   ぶちかまし

  備考    イメージと異なり意外と筋肉質。

        重量を生かした体当たりを得意技とする。



 こいつらがオークか。スキル=ぶちかまし。お相撲さんかな? 確かに、見た目は、往年の名関脇の寺〇をすこし大きくして豚顔乗せたって感じだな。


 見た目よりも俊敏だ。


 豚さんをボーっとみていたら、ではなく、《鑑定》していたら先ほど目が合った一体が結構な勢いでこちらに突っ込んできた。


 多分、ぶちかましを狙っているのだろう。ホーンラビットに比べれば、攻撃力がありそうだ。


 だがしかし、当たらなければどうということもないのだよ。がははは。


 俺は、右足をすっと引くと、オークA(仮)(今、命名)のぶちかましを躱しながら、《光サーベル》を一閃させた。


 ブボボボボボ


 今度はちゃんと効果音付きだからね。


 ぶちかましを躱されたオークA(仮)は、その勢いのまま五、六歩進むと、つんのめるようにドドゥと倒れこんだ。一瞥すると、首がしっかりと落ちていた。


 オークA(仮)に遅れること数秒して、残りの二体もこちらに気づき、一体はそのまま、最後の一体は足元に置いていた棍棒を手に持って向かってきた。


 この程度、ニ対一だって恐わくなんかないんだからねっ。


 遅速の差を捉えて、オークA(仮)と同様にスパッ、スパッと首をはねておく。


 終了。


 結局、残る二体にはコード名を振るまでもなく倒してしまった。振ったところで、直後に討伐済みとなるので意味はないな。振らずに正解。



 《魔力警戒レーダー》に映る敵性生物の反応がなくなったので、お片付けをした。どうやら、日が昇ってからそれほど時間がたっていないようであるので、目覚まし時計代わりにはなってくれた。感謝して素材を刈り取ることとする。


 いつもの身に覚えのない知識によると、オークは魔核と肉しか素材価値がない。みるからに表皮を革製品にはできそうもない。そういった意味では、皮を剥ぐ必要がない分、手間がかからないので親切設計だ。


 昨日と同様、《サイコキネシス》と《魔刃》を使って、サクサクと解体し、【保存領域】に収容。


 さて、それでは朝飯だな。




 ◇





 小屋に戻って朝飯を済ますと、一晩お世話になった小屋を消し去って、またぞろ北に向かって歩くこととした。


 ほどなく、三百メートル西側に複数の敵対生物の反応をみた。未知の──ホーンラビットとオークしか遭遇していないので、大概は未知だな──魔物だ。二十数匹はいそうだな。数も多いし、ちょっと距離もあるので、態々三百メート先までこちらから出向くのも面倒だ。


 大体いる場所はわかるが、魔法を当てるには情報がやや心もとない。効果範囲を拡大すれば勿論倒せそうだが、その分オーバーキルになってしまうのは、やはり美学に反する。


 『……。プッ』


 ──この星ごと破壊すればさっぱりするよな~~


 『ゴメン』



 最近、このジジィはこれでOJTになっていると本気で考えているのかと疑いの念を強めているところだ。大抵は寝てるし、偶に起きたかと思えば、人を小馬鹿にするか揶揄うか、〇木さんかっ!


 それよりは、見つけちゃった魔物をどうするかだが、魔法で解決するのが一番だね、職業、魔法師だし。


 ということで、どうやって魔法を当てるか構築すべき術式について考えてみる。《魔力警戒レーダー》では、指向性がないのと、魔力放出が一秒間隔とやや長いので、対象をピンポイントで特定できないのが難点。それを補うことができればよいので、、、。ふむふむ。


 俺は術式を組み上げると、《魔力標定レーダー》と命名した術式を早速起動してみた。


 《魔力標定レーダー》は、《魔力警戒レーダー》とデータリンクしており、《魔力警戒レーダー》からの反応を受けて、指向性の極めて高い魔力をミリ秒間隔で照射、追尾する仕様となっている。


 《魔力標定レーダー》の反応を受けて、センチメートル単位で対象の位置を特定できるので、特定した対象に対して攻撃術式を発揮することが可能となる。


 因みに、感覚的なものだが、現在、《魔力警戒レーダー》の有効範囲を半径一キロメートルとしているが、有効範囲ギリギリの位置にいる対象物に対して照射した魔力が戻ってくるまで、凡そ十五万分の一秒なので、魔力の速さがほぼ光速であることがわかった。


 目標に対する攻撃方法を二種類用意した。


 一つ目は、目標が存在する地点にピンポイントで術式を発揮する方法。


 二つ目は、目標に照射している魔力標定レーダーの反射波を利用して、岩、強力に圧縮した土塊、氷などを高速度で飛ばし、誘導して物理破壊する方法。


 一つ目の方法は、燃焼といった化学反応により対象物を破壊する術式に適していると思う。


 例えば、《ファイヤーボール》がこれに該当するが、《ファイヤーボール》には核となる物質が存在しないため、燃焼という事象を具現化する際に込めた魔力量にも依るが、《ファイヤーボール》を限界速度を超えて移動させようとすると、大気との摩擦で事象が雲散霧消してしまう。


 俺の魔力を以てしても、距離二キロメートルを千メートル毎秒の速さで移動させるのが精々だ。秒速千メートルでは、魔力自体の速度には遥かに及ばない。一方、燃焼という事象自体には質量はないので、運動速度を与えても意味がない。せいぜい、具現化した事象を目で追える分、当てるというイメージに結びつきやすいだけだ(あと、虚仮威しぐらいにはなるか)。その点、専用術式を組んで対象物を直接燃やすことに比べれば、《ファイヤーボール》を離れた目標に当てる行為はどれだけ迂遠かしれないというものだ。せいぜい、解体した後始末をするのにちょうどよいというぐらいだろう。


 二つ目の方法は、岩などをぶつけて物理エネルギーにより対象物を破壊する術式に適していると思う。


 一つ目の方法のように、対象物の存在する場所に岩を生成しても、然したるダメージは期待できない。その点、生成した岩などを高速度で移動させるのりしろ必要だ。従って、ある程度の距離を持って生成した岩などを術式で加速して、十分な速度に達した状態で対象物に命中させるのが合理的だ。


 どちらが楽かといえば、一つ目の術式が圧倒的に楽ちんなのは、言うまでもない。



 というわけで、俺は、一つ目の方法で攻撃することとした。


 まずは、《魔力標定レーダー》により捕捉した目標を《鑑定》してみる。




  種族    ゴブリン

  クラス   E

  体力    六四

  魔力    一九

  攻撃力   四八

  防御力   一二

  魔力耐性  九

  スキル   ─

  備考    異様に繁殖力が強い

        弓矢などの武器を使用する個体がいる



 早速、組み上げた術式を使用してみる。


 やってみてわかったのは、現在、《魔力標定レーダー》により同時補足・追尾可能な目標数は十なので、一度に十体の魔物までしか攻撃ができないということだ。たぶん、使い慣れて行けば、同時攻撃可能な目標数は増えていくように思う。


 また、攻撃用術式についても、①燃やす、②凍らす、③感電させるといった方法が適しており、それぞれ強度も選択できるので、発動する都度、術式選択、強度指定などと細かな設定を行うのでは、発動までに時間がかかってしまうということ。



 いつものように、身に覚えのない知識で確認すると、特に素材価値のある部位はなさそうなので、マルっと焼却するのがあとあと手間がかからないと判断し、燃焼系、高火力で対処することとした。


 《魔力標定レーダー》で最初の十体を補足し、すかさず高火力の燃焼術式を発動。


 十か所で白い炎が同時瞬間的に立ち上ると、こちらに全く気付きもしない十体が、声もなく瞬時に灰と化した。


 残ったゴブリン達がギョッとして仲間を見るが、その瞬間にはそのうちの十体も瞬く間もなく灰となった。最後に残った三体もオロオロしているうちに間もなく灰となる。


 魔核も灰になってしまって回収できなかったが、往復六百メートルかけて取りに行くまでもないと割り切る。


 延焼はしていないようなので、俺はそのまま先を進むこととした。

イージスシステムかな?

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