に。
前回のあらすじ
初日は疲れてねちゃったの。
それから五日ほど小屋に泊まり込み、海岸を利用していろいろと試してみた。砂浜をダッシュしてみたり、海に潜ったりして身体能力を確認することから始めて、各種魔法(といっても極一部らしいが)を試用して、使い勝手を確認したりした。
体の方はすぐに慣れることができたが、魔法は元居た世界にはなかっただけに、発動自体はすぐにできたが、制御に苦労した。何分、神様仕様の体だけに能力が半端ない。初級の火属性魔法──まぁ定番だね。《ファイヤーボール》というらしい。もっとも、魔力によりイメージを具現化しているだけなので、初級とか属性とか全く関係ないんだが──を軽く海に放ったら、水蒸気爆発で高さ三六〇メートルの水柱が盛大に上がっていた。その状態から、一般の魔法師が放つ《ファイヤーボール》になるまで威力を制御するのに、三日ほどかかった。ドラム缶に満杯に入った水をお猪口に注ぐようなものなので、威力の制御が一番大変だったかも、、、。
体感でいうと、体力も魔力も無尽蔵とまではいかないが、それに近いぐらいのようだ。魔力に関して言うと、魔法を使うと体内にプールされている魔力が消費されるが、急速に周囲から補充されるため全く減らない。補充速度が異様に速いため、常に魔力満タンになっている。どうやら出力が入力に追いついていないらしい。バランスから言って、出力側の能力が不足しているということなのだろう。もっとも、最大出力を確認したわけではないので正確なところまでは把握できていないが、そもそも最大出力で《ファイヤーボール》を放ったらどうなることか、あまりにも物騒過ぎるため、どうしたらよいかダ最高神に尋ねたら、
『最大出力の魔法をバンバン打てば、徐々に最大出力も拡大していくて。続けていけば、いずれ入出力もバランスするわい。努力が肝心じゃよ』
ということだった。話が通じねぇ。
──だから、その最大出力の魔法をバンバン打ちまくったら辺り一面崩壊確定なので、どうしたらいいか尋ねてるんだが
『お前さん、そりゃ攻撃魔法を使おうとするからいかんのじゃ。この星を壊すつもりか、いかんぞい。破壊ではなく、物質生成でもすればよかろう。分子量の大きい物質とか、構造を把握していない曖昧なものを生成しようとするとより多くの魔力を使用することとなるから、試してみるがよいぞい』
と教えてくれた。
『それからのう、そのダ最高神っていうのは、やめてくれんかのう。ちょっと悲しくなるもんでな』
ということなんで、早速、いろいろと生成してみた。
まずは、水。たぶん、最も原子量の小さい水素を生成するのが一番簡単なような気がするが、如何せん水素は生成できたかどうか確認できないが難点だ。水素は見えないからね。ということで、確認しやすさも考慮して水から始めることとした。
水、水、水、、、、。右手を肩ぐらいの高さまで上げて、人差し指で海原を指すと、水が人差し指から放出される様子をイメージして、
──ふんっ!
どどどどどど~~~~~~っ!
毎分十万リットルぐらいの勢いで大量の水が海面に向かって放射されていく。
いかんいかん。制御、制御と。
制御後は、洗車時にホースから水道水を撒くぐらいに抑えることができた。
『ふぉふぉふぉふぉ、、、。相変わらず愉快なことをする奴じゃの』
くっそ~~。
水程度では全く最大出力は達成できそうでないため(水災害になりそうなので)、もっと重い物質を生成してみることとした。
塩……これも割と簡単に生成できてしまい、小山のような塩の山が生成されたが、体感的にまだまだ余裕があるし、体内の魔力量も然程減っていない。
もっと重い元素とすると、、、金属がよいだろうか。
鉄……おや?百トン程の純鉄を生成したが、体内魔力量の数%しか消費しなかったため、瞬時に回復してしまった。考えてみれば、鉄よりは塩化ナトリウムの分子量の方が大きかったな。そりゃそうか。ならば、
金……なんだろう。これまで、分子量に比例して魔力量を消費している感じがしていたが、金は、それ以上の魔力を必要としている。鉄と同じように純金百トン程生成してみたところ、漸く頑張って魔力を放出した感じがして、体内魔力の三割近くを消費することができた。生成終了と同時に体内魔力はグングンと回復してきており、全回復までに三分程度かかったようだ。
純金百トン、、、、どうしよう。取り合えず、純鉄とともに【保存領域】に収納しておく。
塩? 一部は【保存領域】に収納しておく。残りは、海が浚ってくれるだろうさ。
これまでは、分子構造の分かりやすい無機物を生成してきたが、生成は無機物に限る必要もないし、むしろ、構造が俺にはよくわからにものの方がより魔力を使用するといっていたのであるから、もっと複雑な、有機化合物などを生成してもよいのだろう。
と、いうことで【保存領域】からスキレットを取り出すと、ある物体を強くイメージしてみた。
──ふんっ!
見事にスキレットの上にA5和牛三百グラムが生成されるとともに、体内魔力の四割余りが消費された。感覚的にいって、ほぼほぼ最大出力だったような気がする。
そうすると、毎日、A5和牛のサイズを増やしながら生成を繰り返せば、徐々に最大出力も上げていくことができそうだということが確認できた。グッジョブ俺。
勿論、生成したお肉は完全に制御された火加減でミディアムレアに調理され、胃袋に収めたのは言うまでもない。味付けは、さっき生成した塩山の塩のみだけど、A5和牛神だな。
『ほほう、、、下級神にでも認定してくれてやろうか、、、、』
──いやいや、物の例えだから、そういうところで反応するんじゃないっ!
しっかりと突っ込んでおかないとA5和牛が付喪神にでもされそうだからコワイわ。
◇
更に五日程小屋に泊まり込んで魔法の制御訓練を繰り返し、漸く人並程度に抑えた魔法が使うことに慣れてきたことから、小屋を捨て、人里を探しに赴くこととした。
食料?最初の食料は初めの五日程でなくなっているので、その後は、訓練方々魔法でA5和牛やパンなどその時に食べたいものを生成して食べていた。うん、実に有意義な訓練であった。
小屋内の物資は余すところなく【保存領域】に収容し、小屋そのものはそのままでもよかったのだが、もともと存在しないものであったので、廃棄することとした。
「マハリク・マハ、、、」
『おいおい、そいつはイカンなぁ。怖い人が出てくるかも知れんからのぉ』
ちっ。雰囲気だしたかっただけなのに、、、。
俺は無言で小屋を分か、、、消し去った。
小屋を消し去ると、進むべき方角を確認するため【地図】を改めて開いてみた。
初日に開いたときと同じように視界の右側に【地図】が表示され、今回はバンツ岬と地名が表示されていた。もっとも、今いる岬周辺を除くと【地図】はグレーアウトしているので、その先に何があるかはわからない。
バンツ岬は、海岸線から南に突き出す形をしているので、進むべき方角としては、北一択だな。
俺は【保存領域】から木のカップを取り出すと、魔法で水を注ぐと──自慢じゃないが、俺の制御力も大したものになったもんだ──、ぐっと水を飲み干すと、北に向かって歩き出した(カップはしまったよ)。
岬を抜けるとそこには疎らに草の生えた大地が広がっていた。再度【地図】を開くと、それまでグレーアウトしていた箇所に地形が表示されており、ノンネヴィッツ平野と表示されていたが、周囲に人の住む集落は表示されていなかった。
【地図】をよ~~~く眺めてみると、今いるところから暫く東に行ったところに、細い道らしきものが走っているらしい。道があるということは、距離はわからないが、どこか人里に通じているのだろう。行けばわかるさ、多分ね。
結局、井戸は一度も使われなかった件w