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っえ、金持ちじゃない?

「へぇ〜、そうかもしれないですね」


 スマホをひっくり返し、写真を見やすいように突きつけた画面。

 けれど、苺谷は嫉妬や落胆する表情を見せるわけでもなく、なぜか目を細めて嬉しそうに微笑を浮かべてきた。

 なぜ、せっかく媚びを売ってきた相手たちが別人に夢中なんだぞ?

 と考えていると、甘い香りが届き。


「先輩って、本当は金持ちだったりしますよね?」

 

 気がつけば耳元でボソッと告げられていた。

 金持ち?

 金どころか、住むところもない一文無しに近い状況だってのに、何を言ってんだろう。


「道中のホームレスと良い勝負をする資金力しかないぞ」

「またまたー、それなら先輩が馬鹿でぇ。私がただの馬鹿に引っかかった事になっちゃうじゃないですか⭐︎」


 ペロッと舌を出した苺谷に、冷たい視線を返す。

 

「っぇ…………そんな、そんなわけ」


 明るい表情は徐々に硬くなり、声のトーンも聞いたことないほど低くなっていく。


「それじゃ……あの、敷地内で馬鹿みたいに叫んでたのは、正体を知ったら女の子が群がるミステリアスな男が推し量ろうってわけじゃ………………て?」


 半笑いをしながら、所々肩を震わせ、何回も壊れた玩具のように息を吹き出す苺谷。

 あぁ、恥っずっ!

 あれで変な勘違いしたのか、思い出してみればその後、すぐ突進してきてたな!!


「多分、俺の正体を知ると距離を取る人の方が多いんじゃないか?」


 熱くなってくる頬を手で隠すため、鼻の下をこすりながら答え。

 そんな俺を彼女はしらけた目で見た後、無言でしゃがみ込み、顔を抱えて塞ぎ込んだ。


「ま、そんな事もあるよ。次からはよくよく調べてから媚を売る事だな」

「はあ、ッはぁ? なんなんですか、じゃわざわざ胸を押し付けた色仕掛けが全部パァ? 私はただの馬鹿に捕まったってこと?」


 打って変わって聞こえる声量でぶつぶつと悪口をこぼす。

 お前如きはもう聞こえてもいいから、鬱憤を晴らしているって感じか。

 心外だな、でも彼女は価値がないければ、注目しない人間とはっきりした。


「全部聞こえているぞ」


 一応、小言を言うとパッと彼女は顔を上げ。

 怖いぐらい、見慣れたニコニコした笑顔を向けてくる。

 けれど、話す内容が出なかったようで目を泳がせ……諦めたように「ハァ」とため息をつく。

 あの、なんかこっちまで罪悪感くるからヤメテ。


「さっき生徒会長がヒロインって冗談でしょう? 先輩じゃ無理ですよ、格が違います。高嶺の花は現実味がないからヒロインになんてならないし、自分に釣り合わないことぐらい分からないんですか。っあ、もしかしてVtuberと結婚できるとでも思っているガチ恋勢だったりするんですか? しそうですもんね。そんな感じが話しているだけで、どんどん伝わってきますもん。いや、あの、現実見た方がいいと思いますよ? 私はもう先輩に過剰レベルでサービスしたんですよ? 次の賭けの日は私の好きな人を調べますよね? 調べたくてたまらないですよね? 気になってますよね? 気になってないと正気を疑うレベルですよ?」


 そして吸い込まれそうなほど暗い瞳に、口角と眉をピクつかせ、全部吐き出してきた。

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