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さぁ、君たちの青春ラブコメを始めようか

 苺谷の目は至って真剣で、俺をからかっているとは思えない。


「ま、でも流石に先輩でも0.01なら見抜けますか。そんな異常な奴、気付けない方が馬鹿を通り越してますもん」


 いや、正確に言うなら両手の指を合わせながら「ねー」と真剣にからかってきている。

 真剣にからかっているからこその、問題。

 おい……なんだ、これ?

 再度、周りにカメラがないか、確認するけど監視カメラぐらいしか見当たらない。

 一体、俺が前世でなにをしたって言うんだっ、神様っ!!

 今日、たった今日出会ったばかりの女の子が、自分で自分の悪口を言っているぞ。

 叫びたくなる声を我慢し、イメージの中で頭を抱える。

 そ、そうだ!

 せ……せめてバレた時のダメージを少しでも下げよう、そうすれば「なーんだ、あなただったんですか〜」ぐらいになるはずだ。


「でもさ、見て分からないレベルかもしれないし、気付けなくても仕方ないと思うけど」


 丁寧に、丁寧に、甲子園のキャッチャーぐらい意思を隠してピッチャーに投げるべき球を伝える。

 

「じゃ、良かったじゃないですか。気をつけた方がいいですよ、先輩は私と違って節穴ですから」


 ダメだァッ……!

 方向を修正しようとするも、エグいカーブが一周してピッチャーを直撃するっ!!

 ふと……昔の記憶がよぎり、俺が低倍率だと知ると『私と仲良くなりたいから騙したのッ?! クソキモ』と罵られたことを思い出す。

 もう、どこか行ってくれ。

 そう願って横目で苺谷を見るも、手を当てて自慢げに胸を突き出していた。


「親切に教えてくれてありがとう、お前も後が大変だろうけど頑張れよ」

「ん? 言われなくても頑張りますけど……後が大変ってどういう意味ですか?」


 なんで偉そうに応援しているんだ、と頭に疑問符を浮かべてくる苺谷。


「後で分かる時が来るだろうからさ……それまで悪いけど、もうお前と話したくない。どっか行ってくれ」


 口が上手い方でもない、だから突き放すような言葉しか言えず。

 邪険に扱っていると悟った彼女の表情はスンっとお面を外したぐらい、急激に無となった。


「あぁ〜、そっすか。はい、じゃ、これでお別れですね」


 そして淡々と言葉を発したかと思えば、これまでのしつこさが嘘だったようにあっさりと消えてった。


「ふぅー、まっ、しゃーないな」


 あまりに拍子抜けするような別れ、でも俺は何度も知っているし、経験した。

 心底どうでもいい、冷めた人がする適当な返事で……もう2度と話しかけてくることもない。

 とりあえず…………席でも探すか。


『恋愛学園都市『恋王市』へ、ようこそ童貞、処女たちよっ!』

 

 そう思って階段を上がっていると放送が聞こえ。

 ドーム外周から「シューっ」と何本もの線が空を駆け上がって行くのが見えた。


『ここで生活して行く過程で恋愛に興味を抱き、モテるよう努力し、甘酸っぱい青春を送れるようサポートすると誓おう——』

 

 線の先端が破裂し、少し遅れて「バァーーーンッ!!」と振動が伝わり、先ほどまで雲一つなかった青空を。


『——それこそ、おとぎ話の魔法に負けないぐらいに』

「うぉーー、すっげぇな」

 

 泳ぐようにアルストロメリア、ユリ、菜の花、マリーゴールドなどの色鮮やかな花びらが彩った。


「「「「「おぉっ……」」」」」

 

 バンバンっ! と次々に花火の振動が伝わるたび『味気なかった青空を綺麗と感じていた価値観』が壊れるのを感じる。

 観客席にいた人たちもみんなが立ち止まり、見入り、その背中を押されていた。


『パラ……パラ』

 

 そんな中、何かが髪の毛に落ち、手のひらへ乗せる。

 それは焦げついたユリの花びらで、白い色も相まってえびせんみたいだった。

 試しに頭を振る。

 すると、髪の毛から焦げた花がどんどんどんどん落ちる。


「雰囲気に飲まれてたけど……よくよく見ると色がごちゃごちゃしてるし、髪も灰で汚れるし、花の命も勿体無い」


 気がつけば、手の花びらはもう冷め。

 灰になって焦げている場所を、俺は指ですりつぶした。

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