「克服と文化祭」
僕――坂口 蒼空には夢がある。
小説家。だけどその夢はもう諦めた。
だって、もうなれないと分かったから。
自分には無理だと身をもって知ったから。
だから……もう……
「でもさ、」
違う、僕は忘れてた。なんで小説家を目指したか。
目指そうと思えたか。
「花音ちゃんと約束したんでしょ?」
花音の言葉が、笑顔が、何かの役に立てたような気がしたから。
背中を押された。
その時に、僕は決めた。
「絶対に世界一の小説家になるって」
世界一の小説家になるって。
絶対に花音をがっかりさせない小説を作るって。
「お前ホントに何があったんだ?」
湊大のその心底不思議そうな顔を見て僕は「ふっ」と、鼻笑いで返した。
「いや、ふっ、じゃねぇよ。急にポジティブになるよな。お前の小説」
湊大が言うには、僕の小説がポジティブ、つまり明るくなったらしい。
まぁ、面白くなったようで何より。
帰ったらいち早く妹に見せないとな。
しかし、この前見せられた小説は美穂には珍しくファンタジー小説だったな。僕もファンタジー小説を書いてみようかな。
もっと、明るくて、ポジティブな。
ふと、そこで陽翔の顔が浮かんだ。
陽翔の小説は明るくて、ポジティブ、かつ優しい小説だった。
僕はあれを目指すか。
そして、琴羽のような表現の豊かさも学ばないと。
こう思うとやることはいっぱいだ。
休んでられないな。
……でも、こう思うと、参考に出来る人が沢山いる。
案外恵まれてるのかな。
それに、僕を支えてくれる人も……
『蒼空の書く小説、表現が可愛くて好きだよ!』
その言葉が、頭の中を離れることはなかった。
「また、陽翔と花音にも会いたいな」
と、帰り際に独り言をこぼした。
「あのさ、疑問なんだけど、なんで僕と花音の約束なんで知ってるの?僕話した覚えないけど」
ふと、頭の中で疑問に思ったことを美穂に聞くと、
「さーちゃんが教えてくれたー」
だそうだ。
いや「さーちゃん」って誰だよ。
僕に記憶によると、友達に「さーちゃん」なんて子はいなかったぞ。
「さーちゃんって誰?」
と聞いても、
「言わなぁい」
と返された。
謎が生まれた……。
「蒼空ー」
ある日の休み時間。
湊大に呼ばれた。
「文化祭での話なんだけど……」
と、そこから僕に頼む内容が続いた。
まとめると、僕に文化祭で発表するアニメの脚本を作れとのことだ。
「なんで僕?他にも人は……」
「いや、俺がそれのリーダーみたいな立場になって、俺が頼れるのって、ほら、お前と琴羽ぐらいしかいないだろ?」
湊大は僕を経由して、琴羽と仲良くなったらしい。
なら、琴羽で、なんなら琴羽の方がいいはずなのだが、
「ゲホッゲホッ……」
「大丈夫?お姉ちゃん」
「大丈夫、って言いたいところだけど、あんまり良くないかな。ほら、結月に移っちゃうかもだから、部屋に戻って」
「はぁい」
「あいつ、病気で休みらしくてな」
風邪と症状は似てるけど、長いこと治らないらしい。
だから僕に頼んだらしい。
「頼むっ!お前しかいないんだっ!」
脚本なんて僕には書ける気がしない。
言ったら小説みたいなものかもしれないが、そんな簡単なものでもない。
そもそも、小説も上手くかけてないんだ。
できる気がしない。
僕にはそんなことできると思えない……
それでもっ……!
『でもさ、花音ちゃんと約束したんでしょ?絶対に世界一の小説家になるって』
『じゃぁ、世界一の小説家になってよね。絶対だよ!』
2人は支えてくれたんだから。
それ以外にも僕を支えてくれて、信じてくれた人がいるから。
少しでも、みんなが笑顔になれるように、僕は小説を、脚本を書く。
小説家ってになるって、そういうことだよね、
お母さん。
ということで、第一部「高校入学と克服」完結ですっ!
主人公の蒼空が、ネガティブに陥ることをある程度克服しましたねぇ〜。
でも、ここから物語は始まるようなものですよ!
次は第二部「学園祭」!!
ネガティブを克服して蒼空はどう活躍するのか!
乞うご期待っ!!!