「卒業」
胸がドクドクと鼓動をたてる。
あぁ……今僕――坂口 蒼空は緊張してるんだな。
なんて、緊張のあまり当たり前のことを考えてる。
「僕は、琴羽とは付き合えない」
そう言った時、琴羽は驚いた顔ではなく、「まぁ、そうだよね」っていう顔をしていた。
「そっか、ありがとうね、返してくれて」
彼女は最後まで優しいらしい。
ある2人による合作小説『夢』は文化祭にて人気を博した。
その作者は坂口 蒼空と渡辺 琴羽によるものだった。
その小説は儚くも美しい恋愛を描いている。
一部シーンが、ノンフィクションであることは言わなくても思い付くことかもしれない。
そして僕は本当の最終決戦に挑む。
胸がドクドクと鼓動をたてる。
あぁ……今僕は緊張してるんだな。
なんて、緊張のあまり当たり前のことを考えてる。
これが最後の冬の小説コンクールである。
3年生は勉学に忙しく、冬の小説コンクールはない。
なので、最終決戦である。
僕は体育館の前に座っており、みんなの方を向いている形だ。
その"みんな"の中には、
「蒼空ならいけるわよ」
僕の母――坂口 永舞もいる。
もちろん、今まで、お世話になった色んな人も……。
「ここは面白いが、少し複雑過ぎる」
そんなアドバイスをもらいながら、僕はノートに修正案を何度も書いてみる。
そして、そのアドバイスをくれた人――姉ちゃんこと、澤田 明莉に更にアドバイスをもらう。
そして修正しまくったその物語をみんなに読んでもらう。
その感想を元に、その話の続きの案もノートに書く。
いつも使っているキーボードから、カタカタと音が断続的に鳴る。
いつもならすぐ途切れるその音は、今回は止まらない。
まぁ、目が痛くなって休憩はするけどね。
うぅ……パソコンのし過ぎだ……。
それはともかく、作って、修正、感想を聞き、続きを書き、修正し……を繰り返し、出来た小説を提出した。
そして、その提出した小説の結果発表が行われるわけだ。
「……」
みんなシンとして待っている。
体育館の何かはわからない独特な匂いが充満する。
「それでは冬の小説コンクール、授与式を始めます」
ついに始まる授与式。
鼓動が速くなる。
いや、元から速いから変わらんか。
「銀賞の方々の名前をお呼びします」
銀賞。
例え、それでも、例え、それも取れなくても、頑張った。それだけで十分。
なんて言い聞かせてみる。
「〜〜高等学校、〇〇〇〇」
「△△高等学校、✕✕✕✕」
「水川高等学校、長谷川 太一」
「次は金賞の方の名前をお呼びします」
「水川高等学校、渡辺 琴羽」
わぁ!と歓声が起こる。
その元は、主に彼女の妹の渡辺 結月だろうなとは予想がつく。
「次は、」
僕は今回、選ばれなかったのかなと、そう思った時、司会がそう言った。
「特賞の方の名前をお呼びします」
会場が少しざわめく。
それはそうだ。
この前はその賞に誰も選ばれなかったのだから。
流石に、僕じゃないか、とそう思った。
いや。
もし、少しおこがましいかもしれないが、僕が、この物語の主人公なら、
「水川高等学校、」
諦めるのには早くないか?
「坂口 蒼空」
誰かが期待してるのなら、頑張る。
まだ、可能性があるのだから。
ネガティブの克服。
完全に卒業したのはこの時じゃないかなと、後になって思う。




