「指導者:僕には向いていない」
リーダー。
みんなをまとめる存在。
そこには、周りを見たり、周りから信頼されたりする能力がいる。
その能力が自分にあるかと聞かれたら、僕――坂口 蒼空は否定する。
もっと簡単に言えば、僕はリーダーに向いていない。
っていう、ネガティブな考えは止めた。
向いてはいない。
でも、だからって、やらない理由にはならない。
貴重な経験になるかもしれない。
誰か、良い人に会えるかもしれない。
苦手を克服できるかもしれない。
色々な利点がある。
ただ、進んで立候補するつもりはなかった。
自分の苦手なことだし、正直、誰かに推薦されるとも思わなかった。
ある日の放課後。
僕はいつも通り、部活で小説を書く。
僕の対面には琴羽が、
右隣には、
「兄は今何書いてんの?」
妹の坂口 美穂がいる。
正直、妹と同じ学校で、同じ部活をするなんて思ってなかった。
家でのあのバタバタ加減は学校ではマシかなと思ってたけど、あんまり変わらなかった。
まぁ、元気なことは良いことだ。
「今はファンタジー小説。たまにはいつもと違うジャンルで挑戦してみようと思って」
先程の美穂に対する答え。
その場で求められるのが自分の得意なものとは限らない。
当たり前だけど、だからこそ、全部得意にする必要はないけど、出来るだけ良いものが作れるように、練習する。
それに、最近はファンタジー小説にもハマってきたし。
新しい世界が広がったとも思う。
「私もいつもと違うジャンルで書いてみようかなー」
美穂がつぶやく。
と、いつも通りのほのぼのとした時間だな、なんて思っていると、
「今日は、新しい部長を決めます」
顧問の先生が前に立って、そんなことを言った。
そして、顧問の先生は3年生のみんなが、夏休みの間に考えた次期部長の候補者を挙げた。
「坂口 蒼空。長谷川 太一。渡辺 琴羽」
僕の名前が入っていた。
そのことにもびっくりだし、それに僕にリーダーは……。
いや、そんなことは良い。
ただ、他の二人がどうかを聞かなきゃ。
その後、3人で話したが、誰もやりたいとは言わず、結局、部員全員で決めることになった。
推薦式。
誰が相応しいと思うかを、1人に絞って選ぶ。
「部員全員での推薦の結果、」
つまり、部員たちの信頼がある人物が選ばれる。
「次期部長は、」
僕は、それに選ばれたとしても、
リーダーという役職が苦手でも、
皆に選ばれたのだから、
「坂口 蒼空さんです」
やり切ると、決めている。




