外伝「初恋」
「わー!」
男の子――山口 湊大がはしゃぐ。
そして、
「あはは!」
もう一人の男の子――坂口 蒼空もはしゃぐ。
ここは水川幼稚園。
そして、今はしゃいでいる、湊大と蒼空は幼稚園児である。
普通に立って走れるぐらいにまで成長した湊大には悩みがあった。
「湊大に好きな人?」
蒼空は湊大に「好きな人ができた」と言われたのである。
湊大の初恋である。
告白だとか、話せないだとか、色々話していた。
だけど、蒼空は分からない。
恋心が。
「恋ってなぁに?」
と、蒼空は母親に聞く。
「ん〜とね、恋っていうのは、人を好きになることよ」
と、母親は優しい声で教える。
ただし、蒼空は『恋』という気持ちが分からなかった。
それから蒼空は、『恋』とは何かを知ろうと、周りを見ていった。
蒼空の幼稚園、水川幼稚園には『カップル』がいた。
蒼空は女の子の方は名前は知らないが、男の子の方なら話したことがある。
廊下でその『カップル』が仲良く手を繋いで一緒に歩いている。
長谷川 太一と、赤毛の少女。
2人はニコニコと笑ってて、何かを話していた。
でも、やっぱり、『恋』が何かは蒼空には分からなかった。
蒼空は周りを見るようになり、気付いたことがいくつもあった。
自分の知らない人がいること。
自分の友達にも友達がいること。
そして、なぜかいつも端っこにいる女の子がいること。
その女の子はいつも端で遊んでいた。
蒼空は、寂しくないのかな?と思って話しかけてみた。
「ねぇねぇ」
と、蒼空が声をかけた時、女の子はビクッと震えて、後退りした。
「う……」
蒼空は少しショックを受けた様だ。
ちょっと泣きそうになっている。
この頃から蒼空はメンタルが弱かった……。
閑話休題。
蒼空は諦めずあの女の子に話しかけようとした。
お話を試みたり、
遊びに誘ったり、
色々したが、変わらず。
流石に蒼空もちょっと諦めてきた。
ある休日、蒼空は湊大たちと遊びに出かけてた。
ワイワイと色んな遊びをしていると、蒼空はあの女の子を見つけた。
その女の子は、公園の端で、静かに、泣いていた。
「どうしたの!?」
蒼空はすかさず近寄って声をかけた。
いつものように後退り……はされなかった。
ちょっと間があってから返答がきた。
「……迷子」
と、か弱い声で。
「迷子……?」
話を聞いていると、どうやら女の子はお遣いをしてたらしいが、家の場所が分からなくなり、迷子らしい。
話を聞いていたら、遊んでいた湊大たちも蒼空たちのところへ来て、「どうした?」と声をかけた。
結局、蒼空たちでその女の子の家を探すことにした。
無事女の子は家に帰れた。
そして、それから蒼空とその女の子は少し仲良くなり、少しは話すようになった。
「ねぇねぇ、名前なんていうの?」
蒼空が女の子に聞いた。
「私……?」
その自信なさげな女の子こそ、
「私は……」
蒼空の大切な、
「花音っていうの」
あの人――花結 花音である。
蒼空は、幼稚園児の時には、花音と仲良くなっても『恋』というものを理解できなかった。
でも、幼稚園卒業し、小学校で蒼空と会えた時の花音の笑顔は守りたいな、と思っていた。
「そういえば、湊大の好きな人って誰?」
蒼空の素朴な質問。
「琴羽って人!」
元気な湊大の応答。
蒼空はこのやり取りを、高校生の時には忘れていた。




