「再開」
彼女は、記憶が朧げである。
「はぁはぁ」
走る。
「はぁはぁ……」
まだ、走る。
目的地は水川病院。
「405室……4階か」
部屋を見つけ、扉を開ける。
そこにいるのは、女性。
その女性は、ベッドに座って窓から外の景色を見ていた。
僕が部屋に入ってくると、ゆっくり、僕の方を向いた。
そして柔らかい声で聞いてきた。
「蒼空?」
少し、頭を傾げて、自信なさげに聞いてくる、その姿を見て、心が痛くなるのを感じた。
彼女は、記憶が曖昧である。
理由は交通事故。
車にはねられた。
相手の車が赤信号にも関わらず突っ込んできたらしい。
今までは意識がなく、これからも意識は戻らないだろう、と思ってた。
でも、急に意識が戻った、って花火が終わった時に知らされた。
「うん、蒼空だよ」
そう言って、僕は彼女の元へ寄る。
そして抱き着く。
彼女――坂口 永舞は、僕の、
「母さん」
「ごめんね。心配させちゃったね」
母さんが僕の頭を撫でながら言ってきた。
「母さんは悪くないよ。大丈夫」
涙を堪えて、言った。
「ごめんね」
そう言う母さんの頬には涙が流れていた。
その後から、美穂と父さんも来て、みんなで、再会を分かち合った。
その夜は、家族で静かに泣いた。
みんなでの花火は楽しかった。
今は、幸せだ。
家族全員での日常が、『再開』した。




