「妹」
以前、言っていた通り、坂口 蒼空には妹がいる。
その名も坂口 美穂。
彼女は控えめに言っても、変人である。
あのバカ兄に目にもの見せてやる。
と、私――坂口 美穂は決意した。
というのも、私があの兄に
「金賞を取る!」
って言ったら、
「は?金賞?いや無理でしょ」
って言われた。
なんていうことがあって、私の小説家魂に火が付いた。
まぁ、兄は兄なりに受験生の私を心配してくれてんだろうけど。
こんなことを言ってるから、私はブラコンだなんて勘違いされるのか。
え?十分ブラコンです?いやいや、ありえないありえない。
絶対ない。
断じてない。
そんなことは置いといて、私は金賞を取るための策を作った。
別に考えなしではないのだ。しっかり作ってある。
このコンクールは小説の面白さだけじゃなくて、分かりやすくまとめた展開になっているかを重視している。
そこを突いていこうということ。
当たり前っちゃ当たり前なんだけどね。
自信を付けるのも重要。
という訳で、頑張ろう!
ということを授業中に考えていた美穂であった。
「ねぇねぇなに書いてんの?」
と昼休み時間に聞いてきたのは私の友達――渡辺 結月。
彼女はあまり小説には興味がないらしいが、姉が小説家を目指しているらしく、ちょっとした話ならする。
「小説の構成」
「ふーん。どんな小説なの?」
「ラブコメ小説かな」
「へぇー。どんな感じ?ちょっと話してよ」
食いついてきた。
どうやら結月はラブコメが好きらしい。
丁度ひと段落したし、振り返りもかねて話すか。
「……いい物語」
なんか結月が物語に吸い込まれてる。
まだ構成だけなんだけど。
っていうか、ホントに結月は恋愛が好きだね。
主に他人の恋愛を傍から眺めるという点で。
「けど、恋愛のライバルがいてもいいかも」
あ、確かに。
完全に忘れていた。
結月はこうやって、私の物語にアドバイスをしてくれる。
もしかしたら難癖をつけられているのかもしれないけど。
……考えすぎか。
ともかく、こんな風に、出来上がった小説を読んでもらうだけじゃなくて、物語の簡単な構成を見てもらうのもいいかもしれない。
小説を書き始めてから約6年目にしての発見である。
目指すは金賞!打倒、兄!
なんか壮大だけど、とりあえず、
「頑張るぞー!」
と、美穂は拳を上げた。
教室にいた全員の視線が美穂に刺さる。
冒頭で言った通りだが、もう一度言っておこう。
美穂は変人である。