表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢を叶えるもの +  作者: 山本 2k
第一部「高校入学と克服」
1/28

「新たな出会い」

※この物語は短編小説「夢を叶えるもの」の続編・外伝です。まだ読んでいない方は、以下からどうぞ。

https://ncode.syosetu.com/n9375in/

僕はよく周りと自分を比べてしまう。

特に自分より上手い人と。

だから自分の長所にも才能にも気付かなかった。

それは高校生になって更に酷くなったような気がする。


中学卒業後。

僕は無事第一志望校――水川県みずがわけん水川高等学校みずがわこうとうがっこうに入学した。

しかし、陽翔はると花音かのんは別の高校に行ってしまった。

当然周りは見知らぬ人たち。

けど、意外な出会いがあった。


「幼稚園以来だな。久しぶり、蒼空そら

山口やまぐち 湊大みなと

幼稚園児の頃の親友。

何故かそんな人と再会した。

元気よくやってたようで良かったけど。

何故か黒色の髪の毛が立っているのも健在のようで。


高校生活は順調に進んでいき……


「蒼空はどこ入ったんだ?」

仮入部が終わり、本入部の書類を提出した日。

僕は湊大にどの部活に入ったかを聞かれた。

文芸部ぶんげいぶ

毎年12月に冬の小説コンクールが県全体で開かれるというのがある。

それに文芸部は必ず応募する。

この高校の文芸部は、小説、中でもライトノベルに力を入れているらしい。

だから僕はこの部活に入った。

「蒼空らしいな」

湊大らしい笑い声だった。


「そう言えば、蒼空って小説作ってるんだろ?出来たら見せて欲しいんだけど」

僕の友達になった人は突然話しかけてくるらしい。

それは置いといて、僕の小説を読んでくれる人なんてなかなかいないんだから、頷くに決まってる。

コンクールがあると言っても、毎回読んでくれる訳じゃないんだ。

湊大にも感想を聞けるかもしれない。


こうして、僕は順調に小説を書いて、他の人に読んでもらっていった。



授業が終わり、部活動の時間になった。

いつものように僕は第二美術室に向かっていた。

その足は軽い。

「や。元気そうだね」

渡辺わたなべ 琴羽ことは

ボブヘヤの少女。

部活で出来た仲のいい友達である。

そこに異性の関係はない。

断じてない。

彼女と僕はいつも後ろの席に座る。

そこは黒板から遠く、みんなとは一つ離れたところにある。

だからこそ、よく付き合ってるとか勘違いされるのだろうけど。

彼女の対面の椅子に座る。

椅子と机が、横の人と対面になる配置なので、僕は対面に座ることにした。

筆箱から必要なものを出し、前の途中まで書いた作品を取ってくる。

この辺は何回も部活でやったから慣れている。

一方、琴羽は目をつぶっている。

別に瞑想している訳ではない。

物語の構成を考えているのだ。

「ん。出来た」

出来た、というのは頭の中での話。

彼女はこういう、変わったところがある。

だけど、彼女の作る物語はまた凄い。

陽翔のような面白い物語とはまた違う。

どちらかと言うと、ライトノベルではなく、表現力豊かな小説、文芸作品だ。

僕には真似できない。

出来たら今頃こんなに悩んでなんかないんだろうけど。

「蒼空。手、止まってるよ」

「あ」

これはいけない癖だ。

直していかないと。


早くも春のコンクールが始まろうとしている。

規模は小規模で、市での行事。

小規模と言っても、貰える賞は馬鹿に出来ない。

金賞二名

各学校銀賞三名

各学校優秀賞五名

市長賞一名

この中でも市長賞は特に優秀なものに送られるらしい。

市の中で、一名しか選ばれないのだから、当たり前だが。

「市長賞ねぇ。俺は銀賞どころか優秀賞も取れねぇな」

この春のコンクールはもちろん文芸部だけではない。

湊大によればコンピューター部もコンクールがあり、タイピング、プログラミングと二つの種目があるらしい。

「湊大は参加するの?」

コンクールは自主参加制で、参加しない人や、部活に入っていない人は休みになる。

「俺はプログラミングに参加かな。タイピングは出来る気がしねぇ」

湊大はタイピングが苦手らしい。


コンクール当日。

文芸部は基本的に自宅での参加だ。

今回は、ジャンルを問わないそうだ。

出来た小説は市役所のコンクール課とか言うところに提出するか、インターネットで提出するか、どちらかだ。

つまり、紙かデータかのどちらかを選べ、ということだろう。

もちろんわざわざ外に出て市役所に届けに行くなんて面倒臭いことはしない。

断じてしない。


「は?金賞?いや無理でしょ」

坂口さかぐち 美穂みほ

中学三年生の妹である。

彼女もまた、小説家を目指している。

その妹が「コンクールで金賞を取る」なんで言い出した。

いや、あなたコンクール初めてですよね?

って言いたい。

「ちょっとぐらい夢見てもいいじゃん」

いや、夢を見れるぐらいの余裕があるんですか?

って言いたい。

「はぁ。ほどほどにしとけよ。入試もあるんだから」

「分かってるって」

そう言って、美穂は去っていった。


「よし。完成」

コンクールに出す、小説が完成した。

ジャンルは得意なラブコメ。

読みやすさ重視で、対象にしている年齢層も広め。

僕にしては上出来だろう。

「さ。銀賞は取れるかなぁ」

別れてからあまり連絡と取れていない友人と、結局思いも伝えれなかった好きな人の事を考えながら、僕はベットに入った。


小説コンクール高校生の部、結果発表の日。

中学生の部の結果発表は数日後らしい。

その前に兄として、ちょっといい報告も持ち帰りたい。

そんな大袈裟なことでもないけど。

「続いて、春の小説コンクール、高校一年生の部。銀賞は……」

誰になるだろうか。

僕はここではあまり取りたくない。

当たり前だが金賞を狙っている。

渡辺わたなべ 琴羽ことは

拍手が鳴り響く。

当たり前のように琴羽は賞を取る。

心臓の鼓動が早くなるのを感じた。

気のせいじゃない。

心臓が踊っている。

そう思うぐらいに緊張している。

「次、坂口さかぐち 蒼空そら

何かががプチンと、切れたような気がした

拍手が鳴り響く。

さっきよりも小さかったような気がした。

これで七回目。

超えられない壁が、そこにあった。

「最後に、長谷川はせがわ 太一たいち

もう、何も聞こえなかった。

聞きたくなかった。

「残念ながらこの学校には金賞はなかったな」

なのに、なのに。

「けど」

どうして、

渡辺わたなべ 琴羽ことは、市長賞だ。市の中で一番だ」

これだけは、嫌に耳に残ったのだろう。

全く、琴羽にはそんな意思はなかったと分かっている。

分かっているが思わずにはいられなかった。

裏切られたと。

そんな気がしてしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ