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プレ晩餐会

 ふわふわと、雪が美しく舞い降っている。




 年末、学園の最大級に華やかなイベントであるプレ晩餐会が、王宮の宮殿会場で開かれた。



 学園に通う王都貴族家の子女たちが鮮やかなドレスや礼服を纏い、大人の仲間入りのように高揚した気分を抑えながら、談笑に花を咲かせていた。


 和気藹々とした会場の雰囲気に、一瞬飲まれそうになる。けれど、入学当初からは見違えるようにレディとなったフィーユ・シャルマン男爵令嬢は、付き添うふたりの子爵令嬢とともに、堂々と招待された会場へと歩みを進めた。



 外部生の招待客は、端のテーブルに案内されるらしい。三人はそのまま指定の席に向かおうとしたが、家令の者に呼び止められ、会場真ん中あたりに促された。


(なんだろ……?)

 少し戸惑いながらもついて行くと、そこには王太子派の面々が待っていた。



 驚いたが、手招きをされ、畏れ多くも最上位の令嬢令息たちと席を共にする名誉を受ける。

 緊張が半端ない。特に、正式な招待客であるフィーユはまだしも、アンバーとエルサはただの付き添いだ。場違い感が凄い。


(こりゃあ、逃げたサリーが正解だったね…)

 こそっとアンバーがエルサに耳打ちしたら、エルサが「ぐふっ」と必死に笑いを噛み殺した。

(不敬になりそうな事、言わないで!)

 言いつつ、エルサもサリーに恨み言のひとつくらい言ってやりたい、なんて思った。



「そんなに緊張されなくてもよろしいですのよ?私どもは同じ学園の生徒同士なのですから」

 うふふっ、と麗しくお笑いになられたのは、ドリアーヌ・リヴァル侯爵令嬢だ。


 王太子殿下に最も近しい御方であり、王国でフェアネス侯爵家に並ぶ名門のご令嬢で、最もフィーユに厳しく当たりながらも最もフィーユに優しく言葉をかけ、成長を認めてくれた、この世代最高と称される淑女だ。


 そんなお方にお声掛けされたら、緊張するなと言われたって、余計に緊張してしまう。



 フィーユは、リヴァル侯爵令嬢やトゥオーゾ侯爵令息なんかとは、都度、面識がある。だからこの席に案内された時も、王太子殿下その人が居ないのもあって、最初こそは驚いてたけど、すぐに打ち解けていた。


 その点、アンバーもエルサも全く面識が無いし、免疫が無い。


 とんでもないところに来てしまったゾ、これを知ってて私らを生贄にしたな?と、ふたりは逃げたサリーを恨んだ。



 でも、朗らかに談笑しながら代わる代わる挨拶していくと、徐々に緊張も解れていける。

 なぜならフィーユだけじゃなく、アンバー、エルサも上流倶楽部の招待会員の扱いをしてもらえてるから、気後れしなくて済んでいるからだ。


 こんなとこで田舎外部生だと蔑まれたら、そのまま萎縮してしまいかねない。フィーユのおかげか、ふたりにも上位者たちからの敬意が払われているため、緊張しながらでも、三人はサリーの手解きで練習した淑女の挨拶を滞りなくやりぬいた。


 

 プレ晩餐会は、全学年の内部生たちがメインだ。中にはエルサのクラブでの先輩もいたりする。

 王太子派たちの席で歓談するエルサに笑顔で手を振ったりしてくれるのを見たら、それだけで嬉しくなって笑顔になる。


 プレ晩餐会の招待客には、王都の貴族夫人たちもいらっしゃる。中には、男装の麗人バーグリース=アンのパトロンもいる。


 そんな方々が、エルサやアンバーを見つけ、話しかけてくる。フィーユの付き添いながら、ふたりもいつしか、招待客の主役となっていった。



 よく冷えたジュースを手に、王太子派の面々や紹介された先輩方、奥様方と会話に花を咲かせ、三人ともが仕草や立ち居振る舞い、言葉選びなどを褒められ、身につけた装飾品のセンスの良さを讃えられ、あまりにも評判良くて、色々な誘いまで受けて、ついつい舞い上がりそうになる。



「サリーには逃げられたけど、サリーの言う通りに準備したら、ほとんどが上手くいけそうだね」

 アンバーが、内部生の先輩たちに請われて、フィーユと並んでポーズをとる。ふたりは外部生クラスの王子と姫なのだ。

「そうよ、サリーは凄いんだから!」

 誰よりも得意げに、フィーユが胸を張った。



 そして王太子殿下が国王陛下、王妃陛下と会場に現れ、一年の締めの言祝ぎを宣言した。





 その裏で、会場近くの部屋で待機していたサリー・ラフネスは包囲されていた━━━━。












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