招待状
そうして二年生のいくつかのイベントでフィーユの名前を上位に連ね続けた結果、ついに学園運営部と王太子側から、年度末の行事納め『プレ晩餐会』への招待状が届いた。
本来は外部生クラスの三年間で成績優秀者だった者が、特別に顕彰されるために招待される。二年生で招待されるのは、無くはないが、珍しい。
それだけに、より名誉だ。
しかもフィーユは、入学当初にやらかしてる。それでも推して王家主催の晩餐会に招かれたのは、これはそういうメッセージだと受け取っていいんじゃないか?
「凄い!狙って頑張ってはきたけど、本当に招待されるなんて、やるじゃん!」
飾り気のあまり無い単色でシンプルな定型文の案内状。だが、紛れもなくプレ晩餐会の招待状だ。
「ついにキタね!もうフィーユはどこに出したって恥ずかしくない完璧淑女だから、今度こそ王太子殿下に真っ正面からアタックするよ!」
まぁホスタイル教諭が去ってから、学園内の雰囲気は随分と改善されている。もうそこまで、フィーユが堅物王太子を籠絡してラブラブ光線を学園内に振り撒く必要性は無くなってる。
学校終わりに道ち草食って買い食いしても、門限守るなら御咎め無しなくらいゆるくなってる。
けど、王太子と恋仲になるのはフィーユの数年来の憧れだ。友達だから応援したい。
プレ晩餐会、上手くいくといいな。
なんて思ってたら、フィーユが「不安だからシャペロンとしてついてきて欲しい」なんて言う。
招待状には、王都貴族の出席者のような同伴者は必要ない、と注意書きがある。外部生徒は貴族の出でない者もいるための配慮だ。
だけれど同伴者を連れてきてはいけないわけではなく、不慣れな社交界デビューの場には、付き添い人を頼むのは普通ではある。
特にフィーユは、成り上がりの貴族だ。
小規模なお茶会はまだしも、社交界デビューが王家主催のプレ晩餐会なら、ビビるのも分からなくはない。
「だからお願い、サリーは代々の伯爵様でしょ?粗相が無いように助けてくれない?」
正式なパーティーで王太子殿下にお目見えするというだけに、学内行事で優績者としてお声がけいただくのと違い、思いもよらず緊張しまくってるみたい。あたふたと「どうしよう、どうしよう!」なんて慌ててる。
う~ん、助けてあげたいけども……。
「いや、ゴメン。正直王太子殿下…、ってかロワイヨーム王家にはお近づきになりたくないから、付き添いは出来ないよ……」
こればっかは無理だ。断ってしまう。
生徒自治会委員の補佐役を断ったのも、同じ理由だ。
「皆んなには受け入れてもらってるけど、わたしんとこはラフネスだからねー。王家からの覚えが良くないんだよ。お近づきにはならない方が、お互いのためにも無難なんだ」
という建前で、フィーユには謝る。
フィーユ自身はあまりラフネスとフェアネス、及び王家との確執がピンときてないから釈然としてない感じだけど、アンバーとエルサが「それは仕方ないよね」とフィーユを説得してくれた。
(ホントは殿下を通じて、フェアネス侯爵家と王弟殿下に気づかれたくないってのが正直なとこなんだけど……)
自分の保身のために友達からのお願いを断っちゃうのは、少し胸が痛い。
お詫びに、フィーユにドレスか靴でも贈ろうかな?あぁ、ドレスは、ついにフィーユが王太子殿下と懇意になれると大喜びした御父君がご用意されるか。一世一代の大舞台だ。ロワイヨーム王家の晩餐会向けなネックレスでもプレゼントしちゃおうかな?
プレ晩餐会には、わたしの代わりにエルサとアンバーというふたりの子爵令嬢に、フィーユの付き添いをお願いした。
アンバーはフィーユと並ぶわたしたちの学年の顔だし、エルサは御淑やかな淑女の中の淑女って感じで、フィーユの付き添いに相応しい。
でもそれでも不安がるから、やむなく当日はわたしも晩餐会会場近くの部屋で待機して見守る約束をした。
(確か控え室の他に付き人待機室があったはず……)
わたしが居たところで気休めにもなんないだろうけどね。




