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かしましお茶会

 ここ数ヶ月、悪どく違法スレスレ(でもギリ合法)な事をやりまくって荒稼ぎしたわたしとラフネス商会別働隊は、動かした額面の派手さとは違い、儲けのほとんどを吹っ飛ばした資金スッカラカンの残骸と化していた。


 工作用でフィーユん家から下取りした廃鉱山の転売金も、ホスタイルの失脚で焦げ付いてるしね。作ったペーパーカンパニー全部、口座を消滅させるために潰しちゃったから、保険での補償も貰えない。



 元々市場を混乱させるためだけの目的で動かしたお金なんで無くなって当然だけど、かかった経費を考えると真っ赤になる。半分共犯だった商人ギルドが大儲けしてただけに、領地のおばあさまからは手紙でこってりとお叱りを受けた。


 は、販路は一応増やしたから……。




 その損失よりも大打撃を受けたのは、ロワイヨーム王都公共銀行だろう。



 取り付け騒ぎの信用毀損と、ウチが大量に出してた空手形の不渡り、それに商人ギルドの告訴による差押えで、資産のかなりを消失させた形になる。

 そのため今回のホスタイル家の没落時には、オーナーのフェアネス侯爵家の身内であってもキッパリと切り捨てる厳しい姿勢で臨まれた。


 厳格なフェアネス侯爵家らしい判断といえるが、一部でその決断には、前侯爵夫妻の意向が大きかったんじゃないか、と噂された。

 清廉なるフェアネス家に下世話な陰口なんて、今までは考えられなかった。しかし、これまであまりにも出来過ぎていた侯爵家が麾下のホスタイル家を見捨て、どうやら前侯爵側と現侯爵夫人の間には確執がありそうだ、という醜聞は、対立派閥などで面白おかしく流布された。





「あ、ははは…っ」

 と、わたしとアンバーは男装姿で顔を引き攣らせた愛想笑いをする。



 今回招かれたのは、中流貴族の奥様方の小規模なお茶会。

 ロジャーとティボーの演技を気に入ってくださった方々に、今までもこうして何度か招待されてて、わたしたちの後ろ盾になってもらっていた。



 皆さん直参の王都貴族で、わたしたちの学祭一回だけの公演の評判を聞き、クラス全体を支援していただいているのだ。


 わたしたちには劇団があるわけじゃないのでパトロンにはなれないと残念がられたものの、クラスメイト全員が順番に呼んでもらってた。わたしやアンバーなんかの演者は勿論、凝った衣装を縫い上げた子たちも、将来の就職先に、と声をかけられてる。


 特に、脚本を書いたエルサたちは人気で、別々のお茶会に数度招かれたりもしていた。



 わたしたちの外部生クラスはほとんどが地方貴族で、中央の王都貴族にツテを作れるのは大きい。

 それも、通常は学園内でクラブ活動や委員会などを通じて内部生に接触を試みるのに、今回は一足飛びに親世代へアプローチ出来る。学祭の思わぬ成果だった。




 で、噂話を聞かされるのだ。



 奥様方の口に、戸は立てられない。


 あっちの派閥のこと、こっちの派閥のこと、どこの家門がどうなってお金がこうなって、と口さがない評価を聞かされては同意を求められ、わたしは笑顔を貼り付けて誤魔化してた。

 実は今回のあれやこれやにも、この奥様パワーのご助力を願ってたりする。その効力は、身をもって体験済みだ。



 そしてその皆さんの今一番熱い話題は、フェアネス侯爵家をめぐるあれこれだ。返答に困るので、ラフネスのわたしに感想などは訊いてこないで欲しい。




(恐っわ~…)


 と、わたしとアンバーは身を弁えて聴くに徹してるんだけど、フェアネス侯爵家の内情を勘繰った話や物価高の商人ギルドの怪しい動き、王統派と我関せずを決め込んでいる王弟殿下のなにやら不穏な確執など、奥様連中の穿った見方が、時に真相を捉えてたりする。


 市場を荒らした謎の商団の正体なんかもかなりのとこまで見抜かれていて、動きの意味をいくつか言い当てられていた。



 あくまで陰謀論みたいな荒唐無稽さを楽しんでるだけではあるのに、あちこちから少しずつ情報を引っ張ってきて一個のストーリーをでっち上げられると、意外なほど妙な説得力がついてビックリする。

 奥様方にかかれば、余裕で火のないところにも煙が充満していっちゃうね。



 まぁ謎の商団は王太子殿下の手下じゃないか?みたいな結論に着地してたから、噂話は所詮噂話だな、と一安心したけど。




(近い将来、バヴァルダージュ嬢もこうなるんだろうなぁ……)


 ━━━━絶対に敵に回さないようにしよう。

 そう心に誓った。














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