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交渉の席

 話を進める前に、スーフィフル・ホスタイルはルビー鉱山の信憑性を探った。どれほどのものが期待出来るのか、知っておきたい。




 商人たちは、まことしやかな噂話のように扱っていた。本当にあるのか?誰が入札するのか?のように、確定した情報が出てこない。

「それはまぁ、そうでございますよ」と、ホスタイル家出入りの商人は言った。商人たちがそう簡単に情報を漏らすわけがない。狙っていても知らぬ存ぜぬを貫ぬく。

 一方で貴族グループでは、議会派が全てを囲い込んでいるようだった。なんとかして山を手に入れ、自分たちの財政強化に利用しようと動いているらしい。奴らが資産でも力を付ければ厄介この上ない。


(王弟派閥に周知して、協力し合うべきか……?)

 なにせ王弟派中立派は、鉱山が売りに出ている事どころか、そんな話が市場で取り沙汰されている事すら把握していなかった。勢力争いのためにも、議会派から奪い取る必要がある。



 が、

(私が議会派を出し抜き山を手中に納めれば、大勝利なだけでなく手柄を独り占めできる)

 動きの鈍いあいつらを待っていては、得るものも得られない。なにせ私が指導してやらねば正しい判断すら出来ない連中なのだ。


 スーフィフル・ホスタイルは他の奴らより先んずるため、決断するなり日をおかず、お抱え商人を通して件の炭鉱主を邸宅まで呼び出した。




 なるほど鉱山主は、実にみすぼらしい老人だった。

 ボロを纏った貧乏神のような、廃坑山の負け犬という印象の老人だった。


 そりゃあこの人物がルビーを掘るなどと出資を募っても、金が集まるわけがない。



(その点、私なら心配は無いな)

 なにせ王国貴族として名の通った、ホスタイル子爵家の連枝だ。

 採掘やら何やら面倒くさいのは、子飼いの商人や出資者たちにやらせればいい。自分は山の権利だけ押さえるのだ。


 老人に、競売に出す前にホスタイル家に売らないか?と持ちかける。当然、老人は泥炭鉱山としての二束三文では売れないと、首を横に振る。

 スーフィフル・ホスタイルは、商人からルビー鉱山として見積もったおおよその予測価格を聞いている。個人ではとても払えないが、山のみの価格であれば、ルビー採掘が軌道に乗れば十年かからず元が取れる。その元手の当てはある。




「我々は安く買おうなどとは思っていない。正当な値で購入しようと思っている。私はホスタイルだ。この名にかけて、貴殿に不利益を与えないと誓おう。

 さぁ、いくらなら売っても構わないと考えているのかね?あくまで泥炭の廃坑山として扱われる競売でつく値段と、今ここで私が買ってもいいと思える値段を、よーく考えて答えてくださるかな?」

 泥炭廃坑山としての評価額を紙に書き、そこからペンを走らせて入札で競われる金額幅をグラフにして示す。上から下まで、高くてもこの程度の金にしかならないぞ、と暗に脅しているのだ。


 老人はぐぬぬっと悩み、いくつかスーフィフル・ホスタイルと言い合いをした後、商人がルビー鉱山である場合に想定した金額幅内の価格を口にした。




「この値であるなら、お譲りしましょう」

 競売でいくらつくか不安がつづくよりも、早く売却を確定したい、という気持ちがあったのだろう。


 提示した価格より高くなるかもしれないし、安くなるかもしれない。加えて、競売にかけたなら、仲介業者に手数料を支払わねばならぬ。

 なにより老人には、当座で急ぎの金が要った。競売で公示を待つ期間も、焦燥に駆られる。




 ━━━━なので、保証のためにも頭金を入れてくれないか、そうしたなら、鉱山の権利をあなた様にお譲りいたします。




(ふむ……、まぁ良いだろう)

 スーフィフル・ホスタイルは、それで手を打ってやろうとばかりにニヤリと笑った。

 他の奴らを出し抜いてやった。自分の卓越した交渉能力に、惚れ惚れする。学園の馬鹿どもには分からんのだ。








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