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始動

 とは言ったものの、コーニー嬢からもたらされた情報は知ってしまった。

 そうである以上、対処しなきゃなんない。



 スーフィフル・ホスタイル……。


 エルサの名誉回復のためにも、あの男を放置なんてしとけないわ。




(派閥争いみたいな政治向きの話にはなるべく近づきたくないんだけどなぁ……)

 ホスタイル氏と事を構えるとなると、どうしたって派閥問題が関わってきてしまいそうだ。ホント、厄介だね。



 だいたいが、中立穏健派が壊滅して大部分が王弟派に取り込まれてたなんて、田舎貴族のわたしゃ全然知らなかったよ。

 今まで気にしたこと無かったけど、聞いてみたらユージーンくんちは生粋の議会派で、アミーくんちは中立派からの離脱議会派なんだってさ。


「はー、みんなちゃんと考えてるんだねぇ」

 そりゃ舞踏会での立ち回りなんかのためにも、日々更新する派閥の基本知識は仕入れとかなきゃなんないか。

 夢の時は王太子妃候補、現世では嫌われ者のラフネス家だから、完全に失念してた。




「そう言うサリーんとこのラフネス家は、何派になるんだ?」

 ユージーンくんが、何の気無しに聞き返してきた。

 なんだろ?一応フェアネス麾下だから、元は中立派だったのかな?ぶっちゃけ知らないわ。


「え?そうなのか?!」

 アミーくんが、心底驚いたように目を丸くする。

 そらそうだろうね。フェアネスとラフネスは誰もが知ってる仇敵同士なんだし。でも国の軍制上だからね。同じ地方だから、当然同じ軍閥扱いになるのだよ。



「ラフネス嬢、苦労してきたんだな…」

 ふたりにめちゃくちゃ同情された。





「銀行口座、開けてきたぞ」

 戻ってきたフレンくんが、教室のドアを開けるなり証書をバラっと見せてくれた。


「ありがとう!さすが王都商店の息子!信用度が違うわね!」

 これで計画が進められる。思わずグフフッとほくそ笑んでしまう。



「で、どうする気なんだ?」

 わたしの前の椅子にドカッと座る。鼻息荒いなぁ。

 まぁフレンくんは色々と思うとこあるらしく、気合い入ってるからね……。


「簡単よ。ホスタイル氏には、やった事の責任を取ってもらう。案外とね、人を嵌めようとする輩って、自分たちが罠にかけられるかもとか思わないものなのよ」

「その王太子殿下たちの告発?を待つって事か?」


「ううん。いつになるか分からないし、やるかどうかも不確定な連中を頼る気なんてないさ」

 あくまで自分の手で、確実に事を進める。

 わたしが信じれるのは確定した事実だけだ。希望的観測は考慮に入れたくない。


(ましてや『敵か味方か』どころか、どの程度の規模かも分っかんない王太子支持層の動きなんて、参考にしてたら痛い目見るだけでしょ)

 コーニー嬢がもたらしたもののように、王族や特級貴族だからこそ得られる情報もあるだろう。けど学園での王権行使を躊躇ってるようじゃ、頼りにするのは難しい。

 ましてやわたしらは、住む世界の違う外部生だしね。




「上手くいくかなぁ?サリーのことだからちゃんとしてるよって言ったって、やっぱり私たちまだ学生で子供だし……」

 不安気につぶやくアンバー。その心配はごもっとも。わたしらは世間なんて何にも知らない若造だもんね。


 正直、今わたしが企んでる事は、成功するかどうかはやってみないと分からないモノだ。人の心の機微なんてものが読めないモノである以上、期待する結果に導くには周到な準備が必要になってくる。


 でもこれが、経済において有効なのは知ってる。



(とある亜人国さんに、さんざんやられた手を使わせてもらうからね)


 痛い目を見さされた経験を、存分に活用させてもらうわ。








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