派閥抗争と
「ホスタイル家はフェアネス家の腹心だから、無派閥中立でしょ?」
腹心というか腰巾着、金魚のフンって感じか。
「いえ、フェアネス侯爵家はもうずいぶんと前から王弟派の重鎮です」
「え?ウソ」
あれだけ中立でいる事で権勢を保ってた侯爵家が、派閥色つけちゃったの?いつから?
公明正大、公平公正。誰からも頼りになる厳格な最上級貴族であるからこそ、フェアネスは他家に比するもの無いくらいの権威が、自他共に認められていたはずだ。
その伝統を捨てるなんて、一体何があったの??
「元々、現フェアネス侯爵は王弟殿下と近しい方でしたので、接近するのも時間の問題でした。しかしその影響は各方面に渡り、議会勢力が拮抗しだす一方、中立の立場を取っていた様々な部署がいずれかの派閥の庇護を求めるようになりました。
そうして王弟派は中立派だった諸侯を積極的に取り込んで、彼らの勤めるあちこちの省庁に影響力を残しはじめたのです。今では王統派を凌駕して幅を利かすようになり、おのずと国王陛下の意向が阻害されて王権の行使が困難になる事態に……」
「ちょっと待って!!」
わたしは慌てて、コーニーの状況説明を遮った。これ、漫然と聞いてちゃうとマズい事になるぞ。
知らぬ間に王弟派は力を蓄え、王権を圧迫しだしてるの?そしてそれを不愉快に思ってるって事は、
「コーニー・チージー嬢、あなた、王太子派なの……?」
「……」
答えない。大切なことだからハッキリさせて。
「このリストとかも、そっちから手に入れたやつなのかな?」
「……出どころはともかく、サリー様には有用なものだと思いましたが?」
「そんな簡単じゃないでしょ。これをわたしにもたらしたって事は、何らかの意志があったはずよ。わたしを利用して、自分たちの要求する事をやらそうとしてる?」
「……目的が同じならば協力しよう、というだけです」
「ハッ!」
冗談じゃないわ。いいように使われてなるもんか。
コーニーがわたしの懸念通り王太子派、つまりは王統派の人間だというなら、派閥色がついてる時点で、手渡されたこの資料に信憑性はない。敵対派閥と潰し合いさせるつもりで、内容を操作してる可能性が十分に考えられるからだ。
そんなものに、わたしは巻き込まれたくない。
「学園入学前から、王太子殿下と王弟派とのせめぎ合いは続いていました。殿下の勢力を削ごうとあの手この手で圧力をかけられ、殿下たちはそれをなんとか凌いでいたのですが、ここ最近、王弟殿下からのその手が緩んだのです。
……そう、サリー様たちの出現で。
学園における王弟派のトップはホスタイル教諭です。彼は今、王太子派の押さえ込みよりも、フェアネス侯爵家の評判を保つ事に注力を始めました。
学園内の王統派にとっては反撃のチャンスでもあり、私としては、手は結ばないまでも協力をしたいと考えております」
「それはあなたの個人的な見解?」
実家の身分からして、コーニー嬢が王太子派の有力者とは思えない。独断で勝手に動いてるのか、誰かからの命で動いているのか。
「……私より上の者からの意向です」
(王太子派に、外部生のわたしたちが認識されてるとはね……)
あぁ、フィーユの存在が利いたのかな?
でなきゃ内部生である王太子派の面々に、わたしたちの名前が知られる要素は無い。
で、邪魔な王弟派の掃討に、ラフネスのわたしをぶつけたら都合が良いわ、とか思われたのかもしれない。
「コーニー嬢、もしかしてあなたがフィーユに近づいた理由って……」
「……」
答えない。まぁ、表情が雄弁に語ってるわ。
「まさか紐付きの友情だったとはね……」
落胆。失望。軽蔑。
一気に目の前の女が、穢らわしいもののように思えてきた。




