店主の言い分
何者かの投書によるエルサの論文への疑義に即決の予算の凍結までしておきながら、学園はその精査をするつもりがないらしい。
(いや、もしかしたら誰かが裏で手を回してるのかも。それこそエルサに罵声浴びせたホスタイルの手の奴が、嫌がらせとかに……?まぁどのみち、論文の正否は近々分かるでしょう)
いっても、あくまで学生の論文だ。そう日数はかからず、検証も終わるだろう。
金の力は偉大だ。問題なしとの判定が出次第、それを運営部に叩きつけてきてやる。
……問題有りとなったらなったで、別の手を考えるけれども。
フレンくんが商会ルートで調べてきてくれた情報からすると、薬科絡みの素材が値上がりしてるのは事実らしい。普通に商工業の発展で需要が高まり、価格への転嫁が進んでるんだってさ。
でもそうだとしても、学園指定の卸業者がいきなり三倍以上の価格を当ててきたのは、健全じゃない。
商組合としても見過ごせないという事で、件の業者を呼び出して会合で事情の聴取を行ったら、学園側の横暴さが浮き彫りになった。
「そもそもが、ウチは学園御用達の指定を受ける代わりに、たいして需要のない、儲けの少ない素材まで、余さず整える契約をしてるんだ。もちろん質も落とさず、価格も学生向けに保つのが前提だ。
そのため、ウチは学園から共済助成金を受け取っていた。仕入れ難いものも、ここからの金でなんとか取り揃えていた。
中には異国から荒波越えて仕入れなきゃならないものだってある。時には俺自身が採りに行かなきゃならないものもある。
━━━━ところが、だ!学園は一方的に、その金を削る、と言い出してきたのだ!
経費削減だか何だか知らんが、『適正な品を適正な値で売るのが適正な商いというものだろう?』などとぬかしやがった。なら、適正な価格をつけてやるのが商いの道というものだろう?特に、学園の生徒たち相手にはな!」
世間というものを思い知れ、と言わんばかりの店主の鬱憤をさんざんに浴びせられ、会合に参加してたドシップ商会の番頭は、組合から這々の体で戻ってきたそうだ。
確かに、本草薬学クラブの子達が、件の店以外で必要素材を集めようとして苦労したらしき話は、バヴァルダージュ嬢からも聞いてる。素材の品揃えを誇るのは、大変な努力を要するだろう。
(なのにさも助成金を不当取得してるような言い方されたら、そらまぁ怒るなって方が無茶だわねぇ……)
これに関しては、学園側が下手を打ったとしか思えない。事情も分からぬまま、その煽りをモロに喰らったエルサたち本草薬学クラブは、災難どころではないけど。
(助成金を切ったのも部費を凍結したのも、運営部の会計課か……)
少し探りを入れておきたいな、と思った。




