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舞台裏

 わたしたちのクラスは、大講堂ステージ二日目の、一番早い時間に割り振られた。



「絶対嫌がらせだ!」なんて言う子もいたけど、外部クラスの一年生なんてこんなもんだ。確かにお昼からの方がお客さんは多いし、盛り上がるのもそれくらいからだけどね。


 でも講堂前に貼られた呼び込み用のポスターを見て、謎の劇団初公演にも関わらず、既に何人かのお客さんが入ってくれてる。それだけ『ロジャジュリ』が人気演目だって事か。


 フィーユなんか真っ先に、ど真ん中の良い席に座ってた。コーニー嬢といっしょに、このためにわざわざクラスの店番をお昼からにしてもらったんだってさ。



 ならわたしたちは、用意してきたのを全部披露するだけだ。





 ━━━━ティボール・ラフネスの朝は遅い。



 ……というナレーションで、舞台に登場したわたし。

 いきなりのティボールの登場に、まだあたたまってもない会場がざわつく。「そこから?」っていう斬新な展開で、あちこちで戸惑ってるのが見える。


 ティボールことわたしは、クラスの服飾組が腕に縒りをかけた豪奢な男装に身を包み、酔っ払った姿で艶めかしく品を作った。

 壁に寄りかかり、観客席へと視線を流す。目を細め、付け髭の口元の端をニヤリと歪ませた。


 エルサとその共同執筆者たちが全力でプロデュースした、悪役ティボールの危険な魅力の演出。放蕩の伯爵、遊び人ティボール・ラフネスのイメージそのものだ。


 朗々とセリフを吟じ、スポットライトは次に移った。



 照らされたジュリー役のジェム・パンドルデ・シネくんの姿に、会場で笑いが起きた。


 あ、今は芸名ドルシネ・パンジェム嬢か(笑)


 男女逆転劇って事で、わたしたちは全員逆の性の名前を名乗ってた。わたしはフネス・サリーラで、アンバーはバーグリース=アンという具合に、ちょっとしたお遊びだ。



 その出だしで、ツカミはOK!

 だってジェムくん、肩を出した若い女性向けの豪華ドレスを、見事に着こなしてポーズ決めてるんだもん。


 細マッチョの逆三角形な男子の肉体で、このために仕立て直した華やかなレースに飾られた裾を、やけくそで開き直って翻えらしてる。

 さすが子爵家ご令息。お姉さまが何人もいるというだけあって、お化粧もドレス姿もバッチリ決まってるね!



 この初っ端男女逆転配役で、おそらくコメディなんだろうと勘違いした観客席は、その後は男装のアンバーに情緒を乱され、マーメイドラインのドレスを着たコルティジャーナ夫人役の男子の艶やかさにも見惚れ、わたしとアンバーの掛け合いにもハラハラと引き込まれてくれてるのが、感じられた。


 共に声をあげ、共に嘆き、共にクスッと笑って共に泣く。



 惹き込まれるように舞台上と観客席が一体化したラスト、わたしのティボールの独白と、宙空に伸ばし、届かないものを掴みたいと願って叶わなかった手が、虚空で力を失い闇に消えるのを、声もなく見送られ、幕が降りた。





「おつかれ~っ!」


 無事公演を終えたわたしたちはお互いを労い合い、舞台裏まで会いにきてくれたフィーユに大絶賛の感想をいただいた。

 身内からの評価だから、ちょっとだけくすぐったい。


 舞台では、次の組の合唱が美しいハーモニーを聴かせてる。それをBGMに、使った道具の片付けなんかを皆んなでやり、教室へと引き上げる。

 途中、劇を観てくれた何人かから、声をかけられた。良かったよ、とか感激したよ、とか、ナマの感想を頂けた。演技云々より、やっぱり男女逆転の設定とフレンくんが本家からインスピレーション受けた演出がかなり良かったみたい。


 ありがとー!人気投票よろしくねー!と、出演組みんなで愛想振り撒きながら帰った。







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