生活指導
それが、風紀に咎められた。
わたしたちが観劇し、帰りに屋台で買い食いして寮の門限ギリギリに帰寮したのを、目撃されていたらしい。学園の掲示板に指導要綱が貼り出されて、以後の外出が制限されてしまった。
学園生徒、とりわけ寮生は節度を持って行動するように、だとさ。
「は?意味分かんないんですけど!?」
終わりのホームルームの時間に、担任の先生にまで寮生は下校後すみやかに寮へ帰るように、なんて事を言われた。
んな馬鹿な、悪いことしてるわけでもなし、放課後門限まで何しててもいいじゃないのさ!
「クラブ活動の時間にクラブ加入せず街に繰り出してたら、そりゃ、ねぇ…?」
アンバーが仕方ないよ、とわたしを宥めてきてくれたけど、やっぱり腹の虫が治らない。名指しではなくとも、わたしの行為で他の生徒たちに迷惑かけた事になる。
自分で始末がつけられるなら、着けに行かなければ。
「先生、風紀の責任者ってどなたなのですか?」
「あ?あぁ、上級のホスタイル先生が生徒指導の担当だが……」
「ありがとうございます!」
行き慣れた、それでいて初めて足を踏み入れる内部生学棟で、件の教師を探す。近くの生徒に声をかけて訊くと、ギョッとした顔で眉をしかめられた。
外部生と内部生ってこんなに溝?があったのね。溝ってより生きる世界が別って感じか。
気にせずどんどん歩いていたら、「俺もついて行くよ」と同行を申し出てくれていたフレンくんがビビりまくってた。誰も取って食おうなんてしないから大丈夫だって。
「……サリー嬢、申し訳なかったな」
なんだか神妙に謝ってくる。
「俺が観劇チケットなんてもの売ったばっかりに、怒られちまってさ…」
「いや、関係ないでしょ?放課後に観劇するな、なんて規則無いし、そもそも劇場には貴賓席もあるんだよ?観に行って悪いわけないじゃん」
「でもさぁ…」
なおも小さくなる。まぁ商売人の子としては家の看板に傷がつくのは望ましくないだろう。
「この学園の周りって、雑貨屋とか軽食屋多いよね?あれってわたしたち生徒向けにお店してると思うんだ」
大昔に見た夢の中では、学園に通う若者たちが各お店に入っては楽しんでる姿を、公務のため急ぎ王城に向かう道すがらで幾度も目にしたのだ。
羨ましくなかったなんて、口が裂けても言えない。だからこそ、現世ではそれらを謳歌したいんだ。
「あれだけのお店が並んでるって事は、これまで歴代の学園生たちが利用してたって事でしょ?じゃなきゃ潰れてるわけだし。だから放課後遊びに行くのが禁止だったわけないんだよ」
わたしたちとその少し前の学齢から、風紀の乱れを是正するとか何とか言い出しただけなんだ。それもこれも、王太子一派入学の影響によって。
マジ、王太子一派許すまじ!さっさと男爵令嬢の魅力でメロメロにして、偉そうな綱紀を緩めまくってやるぞ!
「だから歌劇のチケット売ってくれたのも悪くない。いきなり規則でもなんでもない規律を言い出した学園側が横暴なだけなんだから」
責任なんて感じる必要ないんだよ。
でもこの今の重苦しく暗い空気を、学園側が歓迎してる風でもある。
そりゃ王国の小太陽レグノ・ロワイヨーム殿下のご意向なら従って当然ではあるけれど、雰囲気に乗っかって生徒を抑えつけようとする勢力があるように感じる。
その最たる男と、わたしは対峙する事になった。




