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青春謳歌時代

 試験が終わったら遊びに行くのは、学生としての義務だ。



 清々しい開放感でいっぱいのわたしたちは、青春を謳歌するために放課後毎日王都の城下街へと繰り出した。特にアンバーとエルサがふたりとも部活休みの時は、大きく羽目を外して寮の門限時間ギリギリまで楽しむ。


 お気に入りの小物のお店をはしごして、オシャレな喫茶店でお茶をして、時にははしたなく買い食いし、たわいのない相槌を打ちながらケラケラ笑った。




 学園内では雰囲気が悪いせいで、ウチの教室以外だとなかなかハシャげない。まぁうるさいから教室でもあんま騒ぐな、とは言われるけど、もっと中庭裏庭屋上庭園で生徒たちの笑い声聞こえてもいいだろうに、と思う。



(トップオブザトップが厳格すぎて締め付けてくると、下々は息も出来ないんだよね……)


 実際には王太子殿下とその側近たちは、周囲に緊縮を強要しているわけじゃない。ただ本人たちが異常な求道精神を発揮して、自分たちを律してるせいなんだ。

 一番高貴な方々が、滅私で将来の国家を背負うために修練している。あれをやられると、とてもじゃないけど周りで怠けられる空気にはならない。



「私のところのクラスもそうなんだよ……」


 うんざりしたようにフィーユが言った。こっちに逃げてくればいいよ、とは言ったものの、クラスメイトたちとも仲良くなる努力はしてみたら?敵を作っても得ないよ?と自身のクラスで友人を作ってみるよう促した時に、嘆いてた。



 まだ学期当初のフィーユの奇行を嫌い、試験での有り得ない好成績を疑う同級生もいるらしいけど、そんなのよりももっと、学園のどんよりとした空気に呑まれ息を詰めてる暗い生徒たちが多いらしい。


「そこに居たくなくて…」と、昼休み放課後は、すぐさまウチに遊びに来るのだ。


 懸念してた理由とは違うけど、まぁ無視とかイジメをされてるよりよっぽどマシだわ。



「でもそれなら他の誰かもこっちに避難させてきてあげたら?」と言ったら、「ぐふ…っ!」と血を吐いてた。おいおい…。



(この子には学園全部の雰囲気ぶっ壊す役目があるけど……)


 キミの想い人だからね?この空気にしてるのは。さっさと甘い関係になってもらわなきゃ困る。夢の中でのフィーユは、いったいどういう手を使ったんだろうか。

 わたしだけでなく他のみんなのためにも、立派な淑女に仕立て上げるのを急がなきゃいけないな。




 で、市場調査も兼ねておすすめデートコースとかどんなのがあるのかな?なんて調べてたら、ドシップ商会子息のフレンくんが、劇場チケットあるけど買わないか?ともちかけてきた。

 実家がパトロンのひとつに名を連ねている劇団の公演があるらしい。親から言われて、何枚かノルマ分を捌かなきゃいけないんだとさ。


「普通、わたしらお友達には『チケットあるから招待するよ?』とか言うもんじゃないの?」

 むしろそれ口実にわたしをデートに誘えよ、と口を尖らせたら、「売った分だけ俺の小遣い増えるんだから定価で買わすに決まってるだろ」と笑いやがった。

 くぅっ、金の亡者め!とりあえずみんなと予定合う日だから四人分寄越しな!




 観劇なんて地方貴族だとなかなか出来ないからね。王都に来た思い出には良いチョイスだ。


 テーマも『エピファニーの夜の祝宴』という恋愛喜劇だ。女の子が生き別れた兄の身代わりに男装して良家のお嬢様に仕えるストーリーで、その周辺で繰り広げられる様々なドタバタと恋模様が描かれた人気作になる。


 いいね!分かりやすいやつだから友達と初めて観るのに丁度いいや。



 公演日は晴れたのもあってか、劇場は盛況だった。

 フレンがチケットをどれだけ売ったのかは知らないけど、見たところ特に知り合いとかはいなさそう。わたしたちは一階席なので、裕福な市民たちにまぎれての観劇になった。


 舞台は申し分なく、観劇初心者ながらその素晴らしさに感銘を受けた。意外にもアンバーが男優のカッコ良さにキャーキャーと興奮してたが、やはり一番感動してたっぽいのはエルサで、お話として知っていた作品が目の前で具現化した感動に歓びを隠せないようだった。

 そしてフィーユは、俳優たちの手足のしなやかな所作を、一切見逃がすまいとばかりに目を見開いて網膜に焼き付けていた。


(こないだちょっとダンスを教えたときの事を思い出してるんだな)

 向上心があるのはいい事だ。良いものを見たらそこから少しでも吸収出来そうな事を探す。その姿勢が成長に繋がるのだろう。

 集中したら入り込む性格はちょっとだけ危なっかしいけど。



 わたしは純粋に楽しむだけでいいや。将来的にはラフネス領に劇団招く機会作るのもいいかもしんないね。

 帰りは皆んなと物販で記念日を買って、るんるんで帰路についた。


 






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