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サリー先生の放課後課外授業

「え?え?」と呆けるその男子を放置し、


「あんたらその時代に生まれてないんだから年号の数字なんて覚えきれないんだ、だったら順番丸覚えするしかないでしょ!どうせ選択問題になるパターンなんだから東側のだけでも覚えなさい!んで、そうじゃなければ西側だとやればいいわ!」

「力点の位置が分かんないんだから自分で補助線引きなさいよ!なんだったらテスト用紙をこうやって扇に折って三等分して、起点から直線引いてから開いたら最短距離のラインなるでしょ!そこから流れの滞留ポイント算出すれば答えわかるでしょうが!」



 あまりにつまらない嫌がらせのためだけの質問ばっかだったから、つい全部を切り捨ててしまった。

 わたしらはフィーユと学園のために学業をちゃんとやらなきゃならないんだ。邪魔するならあっち行け馬鹿!



 ……と啖呵を切ると、男子連中だけでなくフィーユやアンバー、エルサ、それから女の子たちまでもが、ポカーンと呆気にとられた顔をしてた。

 う、しまった…。わたし、『ラフネス』の地が出ちゃってた?


 アハハッと誤魔化し笑いしたけど、ヤバい、引かれてる…?わたしの『良さげな男子を故郷にお持ち帰り計画』がーがーがーがー……。




「サリー…、もしかして、勉強得意…?」


 アンバーが恐る恐ると聞いてきた。

「いいや?ひと通りやってきただけだよ?」


 元々の頭の出来が良くないわたしは、勉強の要領も良くないから夢でのテストはボロボロだった。なのでどうせ点は取れないのだから、採点終了後のテスト用紙でひたすら復習するやり方を取っていた。


 王妃教育と公務に時間の大部分を割き、学業は答えや解き方を示されてから徹底的に脳に叩き込む。あの膨大なカリキュラムでは落ちこぼれるけど、重要なところがピックアップされたであろうテストの問題に絞って頭に入れる事で、追いつけない分の勉学をカバーしてた。

 もちろん成績はガタガタだ。勉強なんて得意なわけない。



「でもこのへんちゃんと理解出来てるどころか、わたしたちがまだ習ってない知らない解き方まで知ってるみたいだし……」

 エルサも不思議そうにしてる。

「単に知ってただけ。無理矢理覚えただけで、応用とか全然利かないもん」

 だからさっさと王太子たちがやってる学業鍛練奨励事業は終わって欲しいのよね。やってらんないから。




 その後もなんだか半信半疑な男子とかから質問責めにあった。勉強が得意だと自負してる子や数字に強いつもりの商人の子たちが、あれこれ訊いてくる。

 さっきまでの冷やかし質問と違って、普通に学問を挑んでくる問題ばっかだ。


「だからわたしは勉強得意なわけじゃないって言ってんでしょ!」

 まぁさすがに、一年生時の基礎メインな範疇なら苦にならず答えれる。でもそうじゃないだろ。


「わたしらは自分らの勉強やってんの!フィーユちゃんの応援やってんの!あんたら邪魔しないの!」

 もう地がなんだとか言ってらんない。コイツら全員ぶっ飛ばしたくなる。



 あまりに勉強会が途切れ途切れになるため、翌日からフィーユたちの邪魔にならないように別枠でクラスメイトたち対象の講義形式に替えた。大昔の記憶を引っ張り出してきて、各テストのピンポイントの対策を直接伝授していく。

 わたしが黒板使って一方的に出題と解説と解答をやっていき、質問には答えない。全部憶えろ、詰め込みだ。


「こっちは覚えなくていい。余力あれば見といて。それよりこっち、振動の波長変化はEADBGEからBF♯BEG♯C♯とCGCFAD。これはそれぞれ一個ずつズレてるだけだから丸覚えしなさい!」


 やりたくなきゃ帰っていいよ。わたしもさっさと皆んなとの楽しい女子会に戻りたいし。



 でも優しいお友達たちは、わたしが男子相手に大立ち回りしてるのを気にしてくれたのか、自主勉強の合間にわたしの講義も見てくれたりする。なに?気になるとこある?納得いかないとこあったらどんどん聞いてよ、分かる範囲なら全部答えちゃうからさ♪


 と、アンバー、エルサ、フィーユからの質問のみ特例で受け付けて丁寧に答えるから、ズルい男子は皆んなこの三人を通して質問してくるようになった。

 おいコラ、ルール違反するなよ怒るぞ!


 ……でもお友達の三人から「教えてあげて?」と頼まれると、断れない。だってわたしのお友達だから~。お友達と教え合いっこするのも憧れのひとつだったから~。

 なんだかんだで、わたしも学園生活の楽しみを謳歌してるのだ。




 こうして図らずも、クラス内で疑問の共有化と言語化が進んだのだった。









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