学園の雰囲気
学園生活一週間くらいして、どうにも全体の雰囲気がおかしいんじゃないか?と外部生たちにも分かってきた。
「なんでこんなに陰鬱として暗いんだ???」
わたしの思い描いてた貴族らしい華やかさなんて無くて、内部の上級生たちも悲壮な顔で黙々と勉学に励んでいる。
(そんな学校だっけ?むしろ勉学より社交に力入れてるとこじゃなかった?)
まぁ確かに、それらはあくまでわたしが大昔に見た夢の中での印象だけども。
でも現実は違うよと言われても、ここまで暗いってのはおかしくね?
「それはそれとして、わたしらはわたしらで学園生活楽しむだけだもんね」
と気にせず遊ぼうと思ってたけど、どうもそれすら上手くいかないらしい。
数週間後には、外部生の4クラスとも内部生や先輩たちと同様、陰鬱とした悲壮感に覆われて必死に勉学に励まざるを得ない雰囲気になってた。
なんでやねん!と腹を立てていたら、事情通の子が教えてくれた。
どうも、同級の王太子一派のせいらしい。
わたしたちの学園入学のはるか前、王都華族幼学校に入学した瞬間から、彼らは綱紀粛正に乗り出したという。
「幼学校入学の時って、9歳の子供じゃないの?!」
信じられなくて否定から入ったけど、その情報通のブリュイヤン・バヴァルダージュ嬢(イイトコのお嬢様っぽい)は、確たる証言を元に色々と教えてくれた。
その上で王太子殿下とその側近の子供たちは、「貴族たるもの高潔な施政者であらねばならない」と、幼学校在学中から自らに不断の努力を課し、一種悲壮感すらある近寄り難さを纏うようになったとか。
幼少の、しかも王太子殿下や侯爵令嬢、大臣将軍の子息たちという有力者の子弟たちが、率先して自分を追い込むような勉学修練を続けていく。
その影響が同級生上級生だけでなく教師たちにまで伝播して、本人たちが当然目指すであろう清廉潔白眉目秀麗文武両道で完全無欠を成すまで、重苦しい空気に支配され続けているのだ、という。
「なにそれ迷惑ぅ……」
そんな修行僧みたいな貴族の子ども連中なんて聞いたこと無いぞ?
そのおかげで一般の貴族の子たちも、遊ぶ猶予無く勉学に励まざるを得なくなっていた。王太子殿下が率先して研鑽に努めているのに、自分たちが怠けている姿を見せるわけにはいかないのだ。
とてもじゃないけど、放課後街に繰り出して道草を楽しむなんて、許されそうにない。
(いやいやいや、そんなキャラちゃうやんっ!!)
そりゃあ、わたしの中の王太子のイメージはあくまで夢の中での事で、己の容姿の美麗さを笠に着てのらりくらりと適当に面倒事から逃げ回ってたクソ野郎ってのは思い込みにすぎないわけで、現実が全然違ってても不思議じゃないし当然でもあるけど……、
(それでも7、8歳の時に会った王太子やその周りの子たちって別に普通で、絶対そんな『貴族たろう』とか自分を追い込むようなストイックな子たちじゃなかったじゃんっ!!)
何があったのかは知らないけれど、心底いい迷惑だ。
それに輪をかけて事態を悪化させているのは……。




