七年後
「自由だーーーーーーっっ!!!」
王都学園に外部生として入学するこの日、ついにわたしはやり遂げたんだ!
長かった……、結局あれから伯爵領で、事務仕事どころか商業工業の管理もやって、侯爵家とのいざこざで王家から制限されてる易路の新しい開拓をして、なんやかんやで地方の幼学校も適当にスルーしちゃって、なんとかわたし無しでも伯爵領がまわるようにして、ようやっと、王都学園に下宿で通えるようになった。
アンネセサリー・フェアネスの名を捨ててから七年、15歳になったわたしは今、まさに、青春真っ只中に突入したんだ!
ここ卒業しなきゃ、貴族の子女としては立ち行かなくなるもんね。社交界にも出入り出来ないし、当然、貴公子と出会う機会も無くなる。
庶民として生きていく生活力なんて無い脆弱なわたしは、下級ででも、貴族としての道筋を踏み外せないんだ。
「お嬢様、本当にお一人で生活なされるおつもりなんですか?」
ここまで荷物持ちで付いてきた若い侍女が、心配そうに言った。
「当たり前じゃない。伯爵家の人間を王都に置きっぱなしなんて出来るわけないでしょ、もったいない」
「しかしこのまま帰っては、わたしがアビゲイル侍従長に叱られますよ……」
さも怖しい、とばかりに震えてみせる。
「だからあの子には、さっさと相手を決めろって言っときなさい。身を固めないうちは、わたしの侍女には絶対に戻さないからね」
「でも侍従長、結婚する気ありませんよ?生涯お嬢様の侍女だ!って言い張ってますから」
「わたしにはわたしで、家で預かってるご息女の将来も面倒見る責務があるのよ。あの子も腐っても中央の男爵家のご令嬢よ?あの年まで婚約者もない独身って、ご実家に顔向け出来ないわ」
「あれだけ言い寄られてても、にべもなく一蹴しちゃってますけどね……」
と、若い侍女は腕を組んでうんうんと唸ってる。
「あなたは誰に賭けてるの?」
「え、あたしですか?!あははっ、お嬢様もご存知でしたか…」
イタズラがバレたように笑った。わたしも苦笑する。
「そらね、伯爵家のことで知らない事は無いわよ」
「やっぱり、一応わたしは仕事仲間ですし、家令の彼がいいかなぁ、なんて」
前の老いた家令から引き継いだ、青年執事の事だ。生真面目で所作が良い。
「そうね、彼も地方男爵の出だし能力もあるし、悪くないわよね」
「でも衛士の人も、侍従長のために騎士の資格取ったっていうし、筋肉質で頼り甲斐あるしで悪くないんですよねぇ」
「あたしの命の恩人のひとりでもあるしね、彼には幸せになって欲しいのは確かだわ」
隣り町の衛士だった青年だ。衛兵の若手たちが揃って受けた資格試験で、狭き門の準騎士の叙任を勝ち取ったという。愛のなせる業だとかなんとか言ってて、笑ってしまった。
「一番アプローチしてる商人の青年は、正直あたしたちも結婚出来るならしたいですね。意外に誠実ですし」
「お金は確かに誠実ね(笑)彼にはこれからも、伯爵領はお世話になる事いっぱいだろね」
ラフネス領が小店の頃から懇意にしてる隊商で、何かと気が利いていて持ちつ持たれつで便利使いしてる。
「はーあ、侍従長はそりゃモテるだろけど、羨ましいったらありゃしませんわ」
「わたしとしては正直、化けの皮が剥がれないうちに近寄ってきてるどれかに嫁がせておきたいんだけどね。
まぁとにかく身を固めて将来を確定させてこいって言っといて」
「はーい」
と、この侍女や荷物持ちに付いてきてた使用人たちを伯爵領に返し、わたしの期待に満ち溢れた学園生活が始まったのだ。
寮に入り、ずっと昔、夢の中で見た懐かしの学園内を散歩する。
夢の中とは違い、外部生だから行けない場所、逆に行った事のない場所があって見るもの全て新しくてひたすら楽しい。
あたりにはちらほらと、数日後に入学式で一緒になるであろう子女たちが居る。順次、寮に入る手続きをして、荷物を運び入れて、をしている。
彼ら彼女らの中には、きっとわたしとお友達になってくれる子もいるだろう。
さぁ、憧れの青春を謳歌するぞ!




