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働き者のふりしてみる

 アビーの失踪は、朝礼で少し問題になった。


 同室のくせに気づかなかったのか、とわたしは上役から散々罵声を浴びせられたけど、調べたら特に盗み出された物などは無さそうだし、もし外出時に誘拐でもされてた場合でも知ったこっちゃないわ、ということで放置される事になった。

 このあたりの無関心っぷり、正直助かる。

 まぁわたしとアビーの二人分だった仕事を一人でやる事になったのはなかなか辛かったけど。



 助ける仲間も無いまま、黙々と雑役仕事をこなす。8歳女児が大人二人分の仕事をやるには本当に骨が折れる。常識的に考えて、普通に終わるはずがない。


(でもまぁ、そこはそれ。適当に手を抜き誤魔化すようにしなきゃね♪)

 要領よく効率良く片付けていく。


 むしろ手伝いと称して仕事を増やし、わたし以外の他の侍女連中が触らない箇所を増やしてしまえば、

(掃除も片付けもやらなくても気づかれなくなるよね)

 仕事を独占した領域は、仕事の労力をガッツリ減らしてもバレなくて快適だわ。



 それでも女中生活数週間、手指も髪も肌もボロボロになって、すっかり最下層の下女らしい姿になった。

 そんな、前侯爵夫妻や執事、侍従長らのイビリもエスカレートしきったある日の早朝に、今日の分の納品を運び入れてる裏口で、仕入れの商人から呼び止められ耳打ちをされた。


 うずっと、期待していた歓びに頬が弾んだ。

 調理の下拵えをひとりでさせられていたからこそ、狙い通り密謀にはうってつけの状況を作れていた。


 ここからは賭けだ。夢の中では得られていた侯爵家からの支援を失い、それに代わる身分を奪い取らなければならない。



 その日、いつもの周りからの嫌味や罵声を少し愛おしく感じながら、清々しい気持ちで夜遅くまで力仕事に精を出した。


 夜に、出奔した━━━━。






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