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逃げるに如かず

 さて、逃げるにしても侯爵家からあからさまな家出をするわけにはいかない。


 たかだか娘っ子ひとり、ないがしろにされてるとはいえ、貴族身分のぬるま湯に浸かってた子供だ。そこからドロップアウトして、生きていけるわけがないんだから。



 夢の中でも侯爵家は体裁のためか、わたしの衣食住や進学に関して最低限の支援はきっちりとしてくれてた。そのへんは流石、評判のフェアネス家だ。

 だからまぁ、それを失ったら、普通に詰む。


 侯爵家の金を確保しながら、王太子妃候補から外れる方法……。



(そんな都合いい事、あるわけないわなぁ……)

 わたしの頭じゃ思いつかない。


 ここに居る限りは、王太子側からも王弟側からも色々と要求を突きつけられるだろう。

 どちらの派閥につくにせよ、フェアネス侯爵家令嬢として骨の髄まで利用しようとされる。だが、その利用価値を示せるほどの能力は馬鹿なわたしには無いし、ましてや逆手に取ってフェアネス家の栄華に寄与するなんて芸当も、出来るわけない。


(どこかで確実に見限られて切られる…)


 その捨てられ方が問題だ。夢で見たような展開なんて最悪。他にも王都追放や島流し、炭坑送りくらいあるだろう。どれも生きていける気がしない。

 権力を剥奪されての隠居飼い殺しとかになってくれりゃいいけど、フェアネス侯から捨て扶持を貰えるとは思えない。


(ヤバくない?!よっぽど上手く渡り歩いて行かなきゃ詰むんじゃないの、これ?)

 そしてそこを上手く世渡りする自信は、わたしには全く無いのだ。



 侯爵家の資本というぬるま湯で暮らしてきたわたしが貴族社会以外で生きていけるわけ無いし、かといってフェアネス侯爵家令嬢の肩書きで食っていけば、早晩にっちもさっちもいかなくなる。


 侯爵家の権威から離れつつ、侯爵家の資産をキープし貴族社会に残る方法…



(いや、いっそそこは別に、侯爵家ではなくとも……)

 ふと、ちょっとだけ、一応調べないといけないけど、思いつく事があった。

 そこに賭けるのも、一考に値するかな?

 自分の血筋に感謝する事になるかもしれない。


 ただそうなると、

(仮病な~…、それしか無いけど、それはそれで難しいんだよなぁ~……)

 だけれど手っ取り早くドロップアウトした上で目的を完遂するには、この侯爵家から離れるのは必要な事だった。

 残ったら残っただけ、権力の綱引きの沼に足を取られる。



 準備は、しておくものだ。





 フェアネス家の人間は、父から使用人に至るまで基本、わたしに興味ない。関心も無い。


 変なことしでかさないか?という猜疑の目だけはあるが、わたしはわがままを言うわけでもないから無視するのがほとんどだ。



 一方、出入りの業者は普通に相手してくれる。わたしが少しばかり何か欲しいな、と思ってお願いすると、支払い代金をフェアネス家への請求に回して売ってくれる。

 まさか王国に名高いフェアネス侯爵家が、建前上長女にあたる娘をハブって蔑ろにしてるなんて、フェアネスを尊敬してる業者たちも思うわけがないからね。


 よっぽど高額になれば侯爵にお伺いがいくだろけど、あいにくとわたしはそんな高い買い物しないから、侯爵や長兄は知らないままだ。実際、実用品くらいしかお願いしてないし。



 その業者に、近いうちにキャラバンの馬車への同乗を依頼する。別に無理なお願いをするわけじゃない。ただ、支払い請求は馬車を利用した後にしてね。




 あれこれ思案しながらとりあえず荷物をまとめていたら、侍女のアビゲイルが何事かと不思議がった。

「あぁ、役に立つかどうかわからないけど一応推薦文書いてあげるから、配置換えの準備しときなさいね」

 どういう事かと問われ、侯爵領に病気療養に行くと告げる。良かったね、わたし付きの侍女の仕事はお払い箱よ。


 驚いて説明を求めてくるアビゲイルに、体調崩したから侯爵家から身を引く、侯爵家も平和になるし家人のあなたたちも邪魔者いなくなるから嬉しいでしょ?と笑ったら、怒ったような顔になってわたしに付いてくると言い出した。

(はぁ?何言ってんだ?)

 迷惑だ、とうんざりと言うと、今度は執事に家出計画してると告げ口するぞ、と喚き出した。


「……それに何の意味があんの?馬鹿馬鹿しい」

 療養といっても、あんたが想像してるようなバカンスじゃないから諦めなさい。

 ふざけないで!と叫ぶ侍女を無視して、旅行鞄を片付ける。



 さて、明日に備えて寝るか。








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