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王城宮殿に呼び出し

 仕方がない、じゃあやっぱり仮病使うしかないか……。



 そう決心したのは、冬を越して八歳の誕生日を迎えた時だった。


 侯爵家ではほぼ無視されていたわたしの生誕祝いを、王家でやるとパーティーに招かれた。

 あまり接触はしたくないものの、にべもなく断るにはカドが立つ。誰の画策かは知らないが、やむなく招待に応じた。

 そしたら、まだあくまで王太子妃候補のひとりに過ぎず、子供でもあるためささやかなお茶会のはずだったのに、現国王や件の王弟までもが顔を出してきた。

(居心地悪いなぁ…)

 国王陛下はともかく、王弟殿下は夢の中含めても初対面だ。これがフェアネス侯爵の盟友かぁ…


 なんとなく、合わない気がした。



 とにかく陰謀に巻き込まれたくないなぁ…と思っていたら、次期宰相から王太子名義の贈り物をされた。


(げ…っ)


 忌々しい、豪奢な羅紗生地。

(喧嘩売ってんのか、コイツ?)


 あぁ、まぁ、でも、まだ大損害を出す前か…。

 夢の中で、王国が東亜國に売り込み蹴られ、莫大な在庫の山を築いた輸出品だ。



 最初の頃は希少な生地だと特権階級の衣装に使われ高額で重宝されたが、需要はすぐに底をつき、不良在庫になった。ラメの入った分厚い生地は、高温多湿の東亜國では敬遠される風土を読み違えた。


 わたしは赤字を埋めるために、東亜の求める新しい輸出品を開拓し準備し、羅紗も切り刻んで建材などに利用出来ると売り込み方を色々変えて、苦心の末にようやっと収支トントンまでもっていった苦労の象徴みたいなものだ。



 王国では、需要はある。


 マントや帷子の生地にしたり、鞍の座面や装飾にしたり、一種騎士達のステータスにもなっている。

 その、自分たちに人気の商品なら奴らも喜ぶだろうという傲慢さで、大損失を叩き出した。



 そんなものをわたしにも贈るなんて……。



 しかも貴族であるなら、確かに叙勲や陞爵で羽織るマントに見栄を張ることもあるだろう。

 しかし女性の場合、重く分厚い羅紗のマントを羽織るのは王妃、王太子妃の戴冠、つまり王家へ輿入れする儀式の時にしか、無い。


 王太子が婚約者候補にそんな生地を贈るというのは、そういう意図を暗じている。



 お茶会に招かれていたお友達のリヴァル侯爵令嬢やドゥジエム伯爵令嬢たちも、夢見るような憧れの目でわたしに祝福の言葉を送り、褒め称えてくる。この子たちに祝ってもらえるのはホント嬉しいんだけど…

(キミたちも婚約者候補のひとりだよね…?)


 うわ~…、外堀埋めまくってくるわぁ~……。


 いくらわたしを取り込もうとしても、ウチの侯爵家は王太子派にはならんのよねぇ…。

 と、どうしたもんかと考えてたら、王弟殿下が物凄く気持ち悪いほくそ笑み顔で、わたしを見てた。うへ…


 一時は自分の後ろ盾を頼もうかとも思ってた相手だけど、どうもあまりお近づきになりたくないタイプの人物のようだ。向こうからすれば、今まさに王太子派に取り込まれそうになってるわたしに対して不快感ありありなんだろうけども。




 晩餐会のあと、宮殿の一室に案内されてお泊まりする。客室でもかなり上等の部屋みたいで、同行してるアビゲイルにも豪華な部屋があてがわれた。

 う~ん、わたしにこのもてなしする価値は無いんだけどなぁ…


 ま、さっさと寝て明日早めにお城を辞そう。長居してもいい事ないからね。




 なのにこの夜中に、王弟殿下さまからのありがたりお呼び出しを食らわされてしまった。


 最悪だ。

 わたし夜更かしするような悪い子じゃないんだけど、断っちゃダメ?









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