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身バレ

 ?????


 状況はよく分からない。けど、



「えっと……、リヴァル侯爵令嬢……?」

「はい…っ、はいっ!!」

 なんでこんなとこに居んの?と不審がって声をかけたら、ギュッと力強く抱きしめられた。


「アンネセサリー様…。やっと…、やっとお会いできた……っ」


 感涙で咽び泣いてる。高位貴族にしてははしたないくらい、感情が顕わだ。綺麗なお化粧やドレスが台無しになっちゃうよ。




「本当に、アンネセサリー嬢なのか……?」

 げっ、王太子っ!


 舞踏会の主催であるはずのレグノ王太子殿下までが、会場外れのこんな部屋にまでやってきてる。




「その…、ずいぶんと変わられたな……」

「いいえ!全然変わってません!あの頃の素敵なお姉様のままですっ!」

 言葉を選ぶ王太子に対し、リヴァル侯爵令嬢は感情のまま言葉を発する。普段の侯爵令嬢にしてはあるまじき、だ。



「いや、あの……」

 事態が飲み込めない。急な事に戸惑いから抜け出せないわたしに、王太子殿下は自ら片膝をつき、


「会いたかった。ずっとあなたを探し求めてきた。あなたに相応しい自分であろうと、ずっと頑張ってきた」

 ゆっくりポツポツと語ってわたしの手を取って、額に掲げる。少し肩が震えてる。


「アンネセサリーフェアネス嬢。もう我々は、あなたを離さない……」

 目を潤ませ、ジッと見つめてくる。




「あの…、どなたかと間違われておられるのでは……?」

 とりあえず、なにやらよろしくない状況だと判断したわたしは、この場を誤魔化して逃げ出そうと考えた。


「間違えるわけございません!貴女様は、私たちが恋い焦がれ、ずっと追い続けてきた憧れです!」

「見間違おう、はずがない…っ!」


 絶対に逃がさないゾ、とばかりに、ケイトリン・ラドゥジエム伯爵令嬢とベロニカ・オポジション伯爵令嬢までが、リヴァル侯爵令嬢に捕まったままのわたしに抱きついてきた。


 その光景に、最初にわたしを制圧した衛士の男性たちが居心地悪そうにしてる。分かるよ、わたしも事態を飲み込めなくて座りが悪いし。




「しかしなぜ、侯爵家の名を捨てられたのだ?共に学び、成長出来るものと信じていたのに……」


 王太子殿下が少し詰るように言ってくる。まるでわたしが裏切った側みたいだ。

 言葉端に拗ねた感じが出てる。意味分からん。



「……というか、何で皆さんは、わたしをそのアンネセサリー?とかいう侯爵令嬢と信じて疑わないんですか?不可解ですよ。後から違ってたと分かって、騙された!処罰する!とか言われたら困りますし」

 わたしは嫌われ者ラフネス家のサリーだ。アンネセサリーなんちゃら、なんて知らない。



「件の男爵令嬢の指導をしているレディが誰か、皆で調べたのですよ」

(げっ、クソ宰相……っ!)

 辣腕と評された、若き執政官サボー・ディ・ネイトが、王太子の影から現れた。相変わらず、生理的に受け付けない顔してる。


「彼女は、当初からは見違えるように洗練されたレディになった。それは見上げたものだし、素晴らしい努力の表れと感服します。

 が、彼女は御目見得以下の男爵令嬢としては知り得るはずのない、王家でのしきたりやマナーまで精通し、卒なくこなして見せたのです。それこそ、王太子妃に相応しくあろうとするあまり、王太子妃が身につけるべき所作を身につけていた。

 一介の男爵令嬢が、だ。


 そして彼女に『誰の教えを受けてきたのか?』と問えば、嬉しそうに貴女の名前を挙げてくれましたよ。


 ━━━━しかも、曰く付きのラフネス家のご令嬢だとか」

 ギラリッとモノクルを光らせる。なんだその、胡散臭い芝居がかった仕草は。




「今の今まで、“あるいは”と警戒し、万一に備え、このような手荒な方法をとってしまいましたが……」

 少し落ち着きを取り戻したリヴァル侯爵令嬢が、わたしの手をさすりつつ、ジロッと衛士たちを睨みつける。衛士たちは身を強張らせてる。


(この前段階のやり取りに、なんか色々あったのね……)

 手荒な扱いには腹立ったけど、職務を頑張った結果であろう衛士さんたちに、ちょっとだけ同情した。


「もはやこの近くで貴女のお顔を拝見して、疑いようがありません。アンネセサリー様、よくぞご無事でお戻りくださいました……」

 熱のこもった瞳で見つめられた。



(いやいやいやいや、なんか温度差激しすぎね?確かに自分としても、幼少期親しくしてた友達たちは大切な思い出だけど、無邪気に仲良くしてて、こんな心酔するような関係ではなかったじゃん……)

 冷や汗出る。


「えっと…、わたしはサリーラフネスという、一地方貴族の娘で…、王太子殿下やその他お歴々の皆さま方とは身分の違う外部生ですので、ここは何卒穏便に……」

 あぁ、一刻も早く帰りたい。


「そうです!なぜフェアネス侯爵家ではないのですか?なぜ病気療養でお姿を見せていただけない間に、ラフネスの家に換わってしまっていたのですか!」

 ラドゥジエム伯爵令嬢が、頬をふくらまして抗議してきた。そりゃあ、意味不明で納得いかないでしょうけど……、


(そこはそれ、元々がわたしはラフネスの娘で、そもそも侯爵家だってのが間違いだっただけで……)

 困った。どう言ったものか、ウチの醜聞をわざわざ聞かせるハメになるのかな?




「王子、とりあえず場所を替えましょう」

 ディネイト執政官が王太子に耳打ちしてた。








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