ラストダンス
「くそっ!離せ!何者だっっ!!!」
赤の絨毯に顔を押し付けられながら、悪態をつく。
暴れても、男性数人がかりでは抗いようがない。頭の上で、続々と部屋に入ってきた何人もの気配が、わたしを取り囲む。
髪を掴まれ、うつ伏せで床に抑えつけられる。数人がかりでのしかかられて、ゲホッと肺から空気を吐いた。
(ヤバいヤバいヤバいヤバい……っ!!)
何が何だかさっぱり分からないが、生命の危機だ。必死に脳みそフル回転させて、この状況からどう脱するか考える。冷静さなんて吹き飛んで、もうパニック寸前。
「お前は誰だっ?!」
のしかかってきてる男から、ドスの効いた声で脅される。背中側なので、そいつの顔すら見えない。
「だ…っ、誰だも何も、ただの学園の生徒よっ!」
重いし痛いし苦しいし、腹が立った。むしろお前らこそ誰だよっ!!
「確かにわたしはっ!外部生だからっ!サロンの近くに居るのはっ!おかしいでしょうけどっ!!招待された友達のっ!付き添いでっ!!来ただけよっっ!!!」
声を振り絞って叫ぶように、自分の立場を明示する。
確かにわたしは社交界で疎まれてるラフネスだ。けど、いきなり制圧されるような扱いを受けるいわれはない。
「その友人とやらに、嫌疑がかかっている!入れ知恵していたのはお前か?!」
「嫌疑って何よ!入れ知恵もなにも、ただ彼女の恋路の応援しただけじゃない!」
それのどこが悪いっていうのよっ!こんな不当な扱いをいきなりしてくるような見当違いな容疑、どこから出してきた!?まさかフィーユたちにも同じような事してないだろうな?!やってたら殺すゾっ!!?
怒りが爆発しそうになった。
男どもは体格や声の低さからして成人衛士だ。王国貴族令嬢を確保するのに使うような隊ではない。
もし王家の兵の差し金だというなら、厳重に抗議してやる!
と、
「じゃあ、やっぱり…っ!!」
女性の、息を呑む声。
同時に、わたしを取り押さえていた男たちは体当たりに突き飛ばされ、武骨な男どもの手に代わって、華奢で柔らかな腕が、わたしの身体を抱き締める。
「アンネセサリー様…っ!!」
ボロボロに泣き崩れた顔のご令嬢がいた。




