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極上のモフモフ愛をどうぞ  作者: 蘇 陶華
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紙一重の命

僕は、兄弟達を連れて裏山に逃げ込んだ。昼間は、遊んだ事があるけど、夜となると、四つ足の僕らも、とても怖い。自然と尻尾が垂れてくる。僕は、僕より小さな弟や妹を連れて、茂みの中に飛び込んだ。裏山は、飼い主さん達がいた時とは、異なり、たくさんの恐ろしい目が、僕らの事を見つめているようで、足の先から、震えてしまう。こんな時こそ、母にいて欲しいが、母の姿はない。僕らh、昼間に飼い主さん達と来た事のあるキノコ小屋にたどり着いた。食べ物がないせいか、他には、誰もいなかった。とりあえず、僕らは、たくさん積み重ねてある丸太の影に、隠れるように入り込んだ。

「明日になったら、ご近所を見て回ろう」

どこかに、知っている人がいるかも知れない。僕らは、そう話し合って、眠りについた。次の朝は、思ったより早く目が覚めた。

「どこからか、声が聞こえる」

それは、僕が母に言っていた声の主だった。前より、幾分、力が無くなったような気がする。母は、大丈夫と言ったけど、僕らは、気になって、山を降りる事にした。声の主を探して。僕らの家のあたりは、まだ、野犬達が何かないかとウロウロしていた。僕らは、見つからないように、走り抜けたが、やはり、何匹かは、気がついて、追ってこようとした。が、すぐ、諦めて引き返していった。皆、動くと余計にお腹が、空く事に気づいていた。僕らは、少し、走ると声の主が誰か、すぐわかった。僕らの家から、ずっと降っていくと、大きなラブラドールの家があった。そこのおじいちゃん犬だった。

「助けてほしい」

おじいちゃんは、ボスという名だった。精悍で、ボスという名がふさわしかったが、他の犬同様、痩せていた。僕らは、門の隙間から、中に入った。

「君らは、ルナの子供達かい?」

ボスは、母の事を知っていた。体を横たえ、その首からは、長いリードが玄関に繋がったままだった。

「すぐ、帰ってくると言って、家の人がいなくなった」

ボスの家にも、飼い主さん達はいなかった。ボスは、なんとか、脱出を試みた様だが、しっかりとしたリードは、弱っていくボスの体を玄関に繋ぎ止めていた。ボスの横たわる周りには、食べ尽くしてしまったのか、雑草の一本も残っていなかった。

「ルナは、元気かい?」

母は、わずかであるが、ボスに食料や水を届けていたらしい。壊れかけたフリスビーのディスクを咥えて、フードた一口程度の水を届けていた様だった。

「なかなか、ここから離れられない」

ハーネスが外れるには、まだ、隙間ができていなかった。

「何か、口に入るものはないかい?」

そう言われて、僕らも、空腹である事に気づいた。

「食べるものなら、まだ、あるかもしれない」

家に戻れば、少しばかりの食料があるかもしれない。僕は、弟達に、ボスと一緒にいるように告げた。

「すぐ、戻ってくるから待ってて!」

「どこ行くの?」

「何か、ないか見てくる」

「にいちゃん、危ないよ」

「大丈夫」

僕は、母と同じく答えた。だって、ボーダーコリーなんだから、走るのだって、考えるのだって、得意なんだから。僕は、ボスの家の門の隙間から、道路に飛び出した。その時、珍しく、人の気配を感じた。振り向くと誰も、見えなかったので、僕は、ボスの為に、必死に走り去っていった。これが、ボスや兄弟達と別れることになるとは、思わなかった。後から、知った事だが、この地にも、ようやく動物の保護ボランティアの救いの手が、差し伸べられていた。ボスや兄弟達は、保護されたのだった。そして・・・僕は。

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