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リーヴル  作者: 西埜水彩
第四章 梅屋敷さんと水布さん
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『黒の世界』

 絵の具で塗りつぶされたような黒。


 その一色しかない空は不自然だ。やっぱり空は月や星が見えないとね。いやそうじゃない。私にとって身近なのは月や星じゃなくて、人工的な明かりだ。


 昔ながらの蛍光灯。最近は見かけないかもしれない白熱灯。そして普通になってきたLED。そんな感じの町を照らしてくれる明かり達。


 それらがない空は暗い。まるで夜の絶望に潰されてしまったみたいだ。


「ここはどこだろう?」


 真っ暗だから、周りに何があるか分からない。


 足で地面を探る。コンクリートのような堅さはなく、地面のような少し柔らかい感じがする。


「土の上に何かかさかさした物がある。これは草かな?」


 かがんで、地面を触ってみる。芝生のような短い草の感触が手に伝わり、私の考えていることが嘘ではないと証明してくれた。


「それにしてもいつ草原へ来たのかな?」


 覚えていない。


 黒でくっきりとした空とは対照的に、私の記憶はあやふやでもやもやしている。


 いつここへ来たかなんて、何一つ思い出せない。


「とりあえず座ってみよう」


 草が生えているから、お尻が痛くならない。


 草のみずみずしさと、地面のやわらかさ。それら二つが心地良い。そのうち眠くもなってきた。



「じりじりじりじり」


 目覚まし時計の音が聞こえる。


 私は布団を跳ね飛ばし、時計を止める。今は6時、もう起きなきゃまずい。そう分かっているのに、一瞬止まってしまう。


 さっきまでと違う。真っ黒に潰れた草原はどこにもなく、見慣れた部屋の中。朝の光がカーテン越しにうっすら入って、チープな目覚まし時計がいつも通り動いている。


 服が散らばった床の上は、昨日から何も変わっていない。


「あっ今まで見ていたのは夢か」


 夢にしてはリアリティがあった。闇の絶望的な暗さ、草原の感触。全てを夢で片付けたくないほどのリアリティだった。


「わびしい幻のような夢だったな」


 何も得るものがな、幸せもない夢だった。


 そんな夢のこと、いつまでも覚えていてもしゃーない。


 そう考えた私は、現実のために、ベッドから降りることにした。






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