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6話

 薄暗い階段、ずっと続く階段には魔法具の灯がつけられてはいるものの、それは明るい物ではなく怪しい雰囲気を醸しだしていた。


 私は少し怖いな、なんてことを考えながら歩いていると、横から声がかかる。


「大丈夫だ。騎士団団員が君の安全は必ず守る」


 不安なことが表情に出ていたのであろうか。


 私の横を一緒に階段を下りてくれているオスカー様にそう言われ、私はちらりとそちらへと視線を向けて言った。


「は、はい。ありがとうございます」


「お礼を言われることじゃない。こちらこそ、こんな場所まで来てもらい、ありがたいのだ」


 魔法陣射影師として今回は古代魔法信者が描いた魔法陣を見に行くことには了承したが、どうやってここに魔法陣が描かれていると気づいたのだろうかと不思議に思った。


 それを尋ねると、アルベリオン王国には幾重にも国を守る仕組みがあり、その一つが反応したのだと言う。


 詳しくは教えてもらえなかったけれど、例として挙げられたのが王城を守護する古代魔法陣についてだった。


 遥か昔、王国の成り立ちの際に王城には古代魔法陣による守護が刻まれ、年に一度建国祭の日に魔法使いがそこに魔力を流すことが習わしが今も続いていた。


 私は国を守る仕組みが、古代魔法陣以外にもあったのかと内心驚く。


 今回感知した場所は三つあり、場所を確認するとそこには古代魔法信者が書いたと思われる魔法陣があったのだという。


 古代魔法信者の文様である蛇のマークが描かれていたことから、何か怪しげな儀式をしていた可能性が高いと考えられている。


 一瞬その蛇のマークをどこかで見たことがある気がしたけれど、本の中で見たのであろうと私は頭の中で片づける。


 地下で活動する古代魔法信者の存在に、私は気づかれなかったら何が起こったか分からないなと気づけて良かったと思った。


 気づくことが出来たから対策を取ることが出来る。


 ただし、場所が遠い。坑道をすでに一時間ほど歩いており、いつも運動をしない私は大きく息を吐いた。


 オスカー様はくすっと笑い声を漏らすと言った。


「緊急事態が起こった場合、両手が塞がっていると危ないので抱き上げえることは出来ないが背負うことはできる。なので、いつでも疲れたら言ってくれ」


 冗談のつもりだろうか。


 それとも本気なのであろうか。


 私はどう答えるのが正解なのか分からず笑みを浮かべて曖昧な返事を変えした。


 オスカー様は、私に依頼しているということもあってか、とても優しく接してくれるのだけれど、いいのだろうかとたまに思う。


 オスカー様ほどの人であれば、美しい美女をいつでも相手できるだろう。それなのに、私のような女を相手に笑顔を振り撒いて……しかもその笑顔が愛想笑いの類ではないのが感じられるのだから困る。


 元々この人はいい人なのだろう。


 私のような底辺にいるような人間にさえも、女として丁寧に扱ってくれる。


 ただこれだけの人がここまで親切だといらぬお節介かもしれないけれど、その優しさを勘違いしてしまう女性も現れるのではないだろうか。


 罪な人である。


 変な妄想を繰り広げながら永遠とも思えた階段が終わり、私達はそのまま薄暗い道を進んでいく。


 すると、かなり広い空間に出でた。


「広いですね」


「あぁ。こっちだ」


 声が反響して響いて聞こえる。どこからか、水滴の落ちる音も聞こえ、肌寒い。


 怖さが倍増したような気がして、私は身震いしながらオスカー様の案内の下進んでいくと、騎士達が明かりをともす。


 すると、暗かった空間がどのような場所なのかがはっきりと輪郭を見せた。


「わぁぁ。これは!」


 床一面に綿密な魔法陣が描かれており、私はそれを見て息を呑んだ。


「古代、魔法陣……これは、古代魔法陣です……すごい」


 私はそれを見つめながら、ところどころに不可思議な部分があることに気が付いた。


「これは……」


 私は一体どういうことだろうかと、私は上着の内側にお手製で縫い付けてある大きなポケットから、魔法陣射影綴りを取り出すと、それをぺらぺらとめくっていく。


 そしてその一番後ろには古代魔法についての記述をメモしたものがいくつか入れられているのでそれを見ながら、魔法陣を見つめていく。


 何かがおかしいのに、どこの配列がおかしいのかが分からない。


 私はじっと魔法陣の線を目で追っていきながら、指でなぞり、そして頭の中で魔法陣を組み替えていく。


 魔法陣は美しく描かれており、それは繊細なものだ。


 一つのミスで魔法陣は発動をしなくなったり、作用を変えたりする。


 けれどこれはミスではない。


「おいおいおい。お前、まだ時間がかかるのか? 相変わらずぐずだなぁ」


 ロドリゴ様もここまで一緒についてきており、降りてくるだけで私同様にかなり体力を消耗した様子である。


 疲れてイライラもしているのであろう。


 だけれど、私はそんなことは関係ないとロドリゴ様に言った。


「ロドリゴ様、これはおかしいです。一度退避した方がいいです。オスカー様!」


 近くにいたオスカー様に私がそう声をかけると、ロドリゴ様に腕を掴まれる。


「お前、オスカー殿に色目をつかいだけじゃないのか?」


「は? え? 違います。これはおかしいのです」


「おかしくないだろう。はぁぁぁ。こんな魔法陣ただのいたずらだろう? ほら」


 そう言うと、ロドリゴ様は魔法陣の中にはいり、足をどんどんと踏み鳴らして見せる。それを止めようと、数人の騎士達も魔法陣の中へと入った。


 私はその瞬間に、わずかに魔法陣が反応したのを見た。


「ダメ……退避! 退避をお願いします!」


 私は声をかけるけれど、ロドリゴ様は笑い声をあげた。


「大丈夫だろう? ハハハ!」


 バカにするような言葉を発するロドリゴ様に、私はらちが明かないと背を向けるとオスカー様に向かって言った。


「オスカー様! 一度退避をお願いします! 何かがおかしいです!」


「おかしい?」


「はい……」


 次の瞬間、床に描かれていた魔法陣とは別の魔法陣が浮かび上がり始め、青白く輝き始める。


 それは連鎖するように広がっていき、青白い魔法陣が薄暗い中に不気味に輝きだした。


「だめだ……これは……」


 背筋に嫌な汗が伝って落ちていくのを私は感じた。


今回の小説の悪役は誰なのか、物語が進むにあたり、少し予想しながら読むと、それはそれでまた面白いと思います(●´ω`●)


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