コミック2巻完結!2026年1月17日発売!記念SS
緒方しろ先生によるコミック2巻が本日発売です!それをお祝いして、ずっと書きたかったその後を書きたいと思います。
「あれ? オスカー様?」
私は仕事の帰り道、オスカー様の後姿を見つけた。
もしかしたら同じタイミングで仕事終わりだろうか。
それならば一緒にご飯でも。そう思い、私はオスカー様の背中を追いかけて、王城の建物の角を曲がった。
「あれ?」
先ほどまでいたはずのオスカー様の背中が見えない。
どこへ行ったのだろうか。
「みゃーん」
「ん? あれ、もふちゃん」
「みゃん」
私はもふちゃんを抱き上げて、ぎゅっと抱きしめる。
「もふちゃん。可愛い。お散歩していたの? 自由だねぇ」
そう呟きながら、ふと、私は気づいてしまった。
オスカー様がいたところに、もふちゃんの出現率、高くない?
そう言えばと私の脳内では、オスカー様の姿ともふちゃんの姿が行き来する。
同時にもふちゃんとオスカー様との類似点も、頭の中で行き来していく。
「あれ……あれれー」
一時になってしまうと、どんどんと気になっていく。
私はそれから、何度も、何度も、オスカー様を追いかけてもふちゃんに遭遇するという偶然を味わい、そして、とある仮説に行きつく。
私はティリーの店に一人でかけ、食事を食べながら、ティリーに相談した。
「オスカー様と、もふちゃんが、同一人物なんてこと、ないわよね?」
突拍子もないことだ。突拍子もないことなのだけれど、私は、ハッとしてしまったのだ。
いやいや。まさか、そんなわけないじゃない。
ティリーにそう言ってほしかった。
けれど、ティリーは笑みを浮かべると、私の前にデザートを置きながら言った。
「あーら、ふーん。そう思うの」
その言葉に、私は、目を丸くした。
ティリーが、否定しなかった。
私にとってそれはかなりの衝撃で、私は、混乱した。
「え? ティリー、否定しないの?」
「うーん。否定ねぇ。私に否定してほしいの? そんなのあるわけないって。でもねぇ。この世界、ありえない何てこと、ありえないことばかりだから」
ふふふと可愛らしく笑うティリー。
私は、そのティリーの言葉に呆然としながら、どうやって家に帰ったのか覚えていない。
そしてその日の晩、部屋に訪れたもふちゃんを前に、私は正座して座り、それから、意を決して、口を開いた。
「もふちゃん」
「みゃん」
「……単刀直入に、お尋ねします」
「みゃ……」
「オスカー様、ですか?」
もふちゃんの毛がぶわっと逆立って、私の方を、驚いた顔で見ている。
あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。
その顔を見た瞬間、私は、察した。
もふちゃんは、もふちゃんは! オスカー様である!!!!
「きゃぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁ! オスカー様! 本当にオスカー様なんですね!」
「みゃ……みゃまやみゃみゃみゃまままま」
「……オスカー様は、もふちゃん……もふ」
そこで私は気絶してしまった。
意識が飛んだ。
だめだった。信じられなかった。あの可愛いもふちゃんと、かっこよくて素敵で私の、私の大好きなオスカー様が同一人物だなんて!
これは、夢。夢だわ!
そう思って目が覚めた私の目の前に、青い顔をして、うつむく、オスカー様の姿があった。
「お、オスカー様?」
太陽が昇り始めたころだろう。
オスカー様はハッとして顔を上げると、私のことを見て、言った。
「メリル嬢……すみません。ずっと、秘密にしていて……」
その顔を見て、オスカー様も思い悩んでいたのだと言うことを私は気づいた。
それはそうだ。自分が動物になれるなんて人に言えることではない。
今だって勇気を出して話をしてくれているに決まっている。
「オスカー様は、もふちゃん、なんですね?」
私がそう尋ねると、オスカー様がうなずく。
それから、ぽつりぽつりとオスカー様は動物になってしまった経緯などを教えてくれた。
最初は驚いていた私だったけれど、オスカー様の事情が事情なだけに怒ることは出来ないし、怒るような怒りの気持ちもなかった。
ただ、ただ……恥ずかしい。
「わわわわわ私、ご迷惑ばかりおかけして、すみません。恥ずかしいです」
「怒らないのか?」
「オスカー様こそ、怒らないんですか? 私、オスカー様のこと、も……もふもふしまくってしまって」
「そ、それは心地よかったからいいんだ」
「え?」
「あ……」
オスカー様は静かに言った。
「許してくれるか?」
「え? いえ、えっと。もちろんです。オスカー様も、許してくれますか?」
「もちろんだ。許す許さないということでも、ないし」
「私もです」
私達はもじもじとしばらくし合っていたのだけれど、オスカー様が言った。
「こ、これからも変わらず接してもらえるだろうか」
「え? いいんですか?」
「もちろんだ。私は、君と一緒にいられるのが、幸せなのだ」
オスカー様をこれからももふもふしてもいいのか。
そう思うと、なんだか嬉しい。
「ありがとうございます。では、これからも、末永くよろしくお願いいたします」
私がそう言うと、オスカー様が少し表情を赤らめた。
「なんだか、結婚の挨拶みたいだな」
「ふぇ!?」
オスカー様が、私の手を取り、ぎゅっと握る。
そして真っすぐに私を見つめながら言った。
「隠し事をしてすまない。もう、私に隠し事はない」
「ひゃ……ひゃい」
「メリル嬢。これからもずっと一緒にいたい」
「ひゃい……」
「出来れば……結婚もしてもらいたい」
「ひゃ……え!?」
私が驚いて固まると、オスカー様が言った。
「好きなんだ。君には、傍にずっといてほしい」
突然の告白に、私は驚きと同時に、顔を真っ赤に染め上げた。
けれど、嬉しくて、嬉しくて、たまらない。
だから、私は、勇気を振り絞っていった。
「はい。私も、ずっと、お傍にいたいです」
「メリル嬢……」
ぎゅっと抱きしめられる。そして、そっとオスカー様の手が私の頬に触れ、真っすぐな瞳と視線があった。
そっと瞳を閉じると、オスカー様が私に触れるだけのキスをした。
心臓が、ドキドキとして、胸が痛い。
「……大好きです」
「私もだ」
私達は、何度もキスを交し合う。
あぁ、幸せだな。
私はずっとこの人と一緒にいたい。
私達は、笑い合い、そしてこれからも共に歩いていく。
いつか訪れる結婚式を、私は、そっと夢に描いたのであった。
楽しんでいただけたら幸いでした。
コミック2巻が完結巻となっております。
沢山の方が手に取ってくださいますように。
緒方しろ先生の漫画とても素敵なので、ぜひよろしくお願いいたします。
かのん






